歩き人たかちです(@takachi_aiina)
登山を始めて丸10年経ちましたが、これまでレイングローブを買ったことがありませんでした。できる限り晴れの山域を狙い、雨でもなんだかんだレイングローブを使わず。ただ、必要だと思ったことはもちろんあります。
雨風の奥穂高、涸沢へザイテングラートを下ったときは「レイングローブ買わなきゃ」と思いました。しかし、いまいちしっくりくるものがなく結局何年も放置。
ニュージーランドでは必要かもなあ・・・と重い腰を上げ探した結果、自分でも意外なレイングローブを選びました。
山と道「UL Mittens」
ミトンを選ぶとは思っていなかったのですが、とてもいい形のミトン。ほとんどレイングローブを使わない自分には、軽量でシンプルな必要十分のレイングローブ。
今回は、同じように「ほとんど使わないけど」とレイングローブに悩んでいる方に向けてのおすすめアイテムです。
レイングローブの選び方
◾︎ 生地の柔軟性と縫製チェック
◾︎ インナー手袋の上から装着可能か
◾︎ フィット感の調整は容易か
「防水」と「防滴」
レイングローブには「防水」と「防滴」の2種類があります。違いは"完全防水かどうか"。
防水 | 縫い目のシーム処理あり |
防滴 | 縫い目のシーム処理なし |
「防水」は縫い目のシーム処理がされており、文字通り完全防水。対して、「防滴」は縫い目のシーム処理がされていないため完全防水ではありません。
防滴は、生地が防水でも縫い目から水がしみてくるため強雨や長時間の雨山行には向いていない。正直中途半端ですが、シーム処理がされていない分柔らかく、フィット感や操作性は高いメリットがあります。
完全に雨使用の目的なら防水、念のため持ち歩くけど防寒メインが多いかも?という場合は防滴でもいいと思います。
生地の柔軟性と縫製チェック
レインウェアの生地が薄くて軽くなっているため、レイングローブも薄くて柔らかいモデルが増えました。硬いとゴワゴワして操作性が悪くなるので、生地の柔らかさは大事。フィット感にも関係してきます。
5本指タイプの防水モデルは特に"指先"と"指の付け根"の縫製をチェック。縫製箇所でも特に細かい部分で厚みが出やすく、当たって痛くなることも少なくありません。
インナー手袋の上から装着可能か
素手で装着してもいいですが、レイングローブは薄めのインナー手袋と合わせた方が快適です。
レインウェアと同じく蒸れるので、素手ではめているとベタつきが気になることも。吸湿性の高いウール素材がおすすです。防寒の観点からも、中に1枚足しても窮屈ではないサイズ感がよいです。
アイスブレーカーやスマートウールの手袋が"緩い"と感じる方にはアウトドアリサーチ「メリノ150センサーライナー」がおすすめ。個人的にウール系の手袋は緩めのモデルが多い印象ですが、「メリノ150センサーライナー」はピッタリフィットのサイズ感で気に入っています。
フィット感の調整は容易か
レイングローブは袖口から水が侵入しないようにゴムで調整できるモデルがほとんど。
片手で"締める”と"緩める"が容易にできるか(操作しやすいか)どうかでストレス具合が変わります。特に"緩める"操作はやりづらいことも多いため、要チェック。パーツの位置、大きさ、調整幅なども忘れずに。
山と道「UL Mittens」
出典:山と道
レインウェアを生産する際に出る端切れでつくられている「UL Mittens」。カルフラなカラーバリエーションと手の甲にプリントされた「LEFT」「RIGHT」の文字はキュートでわかりやすい。
生地は「パーテックス・シールドエア」で、耐水圧10000mm以上、透湿性10000g/㎡/day。防水の生地ですが、極薄のため耐水圧を超えた場合は浸水します。
また、岩場などで使用する場合は擦れによる破れに要注意。極薄のデメリット。
出典:山と道
サイズ | S, M |
重量 | Sサイズ:19g Mサイズ:23g |
防水・防滴 | 防滴(耐水圧10,000 |
素材 | [ Pertex Shield Air ] ・素材:ナイロン100% ・表地:15D/5f + 40D/34f リップストップ ・裏地:7Dトリコット ・コーティング:C6 DWR(耐久性撥水) |
縫製箇所のシーム処理はされていないため「防滴」で、完全防水ではありません。自分でシーム処理を行い防水性を高めることは可能。山と道のHPにシーム処理の方法が記載されています。
シーム処理にはギアエイドがおすすめ
実際に使ってみて
テ・アラロアで実際に使ったのは雨の日1回、防寒で2回。時間で考えると半日も使っていません。夏〜秋の4ヶ月歩いてたったそれだけの使用でしたが、それしか使わなかったからこそ「UL Mittens」で正解でした。
◎ 親指の曖昧なサイズ感がよい
◎ インナー手袋とも合わせやすい
◎ レインウェアの袖口を十分覆える
◎ 片手でキュッと絞められる
△ 紛失にはご注意を
◎ 大して使わないからこそ必要十分
ニュージーランドを4ヶ月歩いても、雨の日の使用は1日、しかも数時間。しかし、その数時間はレイングローブが必要でした。
ロードや樹林帯で雨の場合は基本的に使いません。使用したのは吹き曝しの稜線。風がすごく強い日で、ウールのインナーグローブだけでは濡れと風による寒さに耐えられませんでした。
もし、その稜線を歩く日が1日前後していたら、レイングローブをレイングローブとして使わなかったかもしれません。しかし、天気は選べないし急に変わるもの。やっぱり必要だなと、確信できて良かったです。
雨以外では防寒で。朝の気温がマイナス〜0℃で、日が当たる・身体が温まるまで1〜2時間ほど使用した日が2日。"ほとんど使わなかったけど必要だった"ことを考えると「UL Mittens」の必要十分な機能性、軽さ、コンパクトさがとても良かった。これ以上は望みません!というレイングローブを望んでいましたが、まさにぴったり。
レイングローブが欲しいと思ったことの一つに"寒い季節の結露したテント、結露が凍結したテントを片付けるのが冷たいから"という理由もあります。そのためミトンは検討していなかったのですが、「UL Mittens」は極薄で指先の感覚を残してくれることもあり問題なく撤収できました(他のミトンで試してないので比較はできませんが)。
◎ 親指の曖昧なサイズ感がよい
「UL Mittens」一番のお気に入りポイント
購入前に悩んだのはサイズ感。ミトンなので5本指ほど神経質にならなくてもいいか?と思いましたが、見た目がゆとりたっぷりという感じなので悩みました。
しかし、実際手を通すと"この形だからこそ"細かいサイズ感を気にしなくていいのだと思いました。
出典:山と道 / SALOMON
一般的なミトングローブに比べ、「UL Mittens」の親指の形は良い意味で適当です。はっきりした長さも幅もない曖昧な親指。しかし、親指の形が決まっていないが故に親指に合わせる必要はない。
親指がはっきりしているミトングローブは"親指が合わない(特に長さ)から全体的に合わない"問題が発生します。ミトンを検討するときは親指が合うかどうかに注目していましたが、「UL Mittens」は長さを気にする部分がないので5本ともしっかり奥まで入れられるというか。見た目は大きくて緩そうですが、手が小さくても先端まで届くのです。
装着してグーパーした動画。音はカサカサ系。よろしければご確認ください
◎ インナー手袋とも合わせやすい
上記の通り、親指含め全体的にゆとりがあるためインナー手袋の上からでも問題なく装着できます。2枚とも5本指だと少しゴワつきや厚みを感じますが、ミトンだとそのあたりも気にしなくてよい。
薄手ウールのアウトドアリサーチ「メリノ150センサーライナー」(左)と、中厚手のモンベル「トレールアクショングローブ」(右)。
上記2つの手袋と合わせるのは全く問題なし。さらに厚い手袋でも大丈夫。いろいろなタイプの手袋と合わせやすいのがミトンのメリットで、オールシーズン使いやすい。
◎ 薄いけど温かい
ミトンは中に溜め込む空気の量が多いので、5本指よりも温かい。生地が極薄とはいえ防水であり、防風性もあるのでミトン特有の温かさをしっかり感じます。
使用したときの温度は-1,2〜5℃で、インナー手袋と重ねて。風や冷たい空気をシャットアウトするだけで指先の冷たさはだいぶ楽になります。19gの手袋は思っていた以上に偉大でした。
季節の変わり目などに手袋の厚さを迷って両方持って行く(予備としても)こともありますが、これからは「UL Mittens」を常に忍ばせておこうと思います。
◎ レインウェアの袖口を十分覆える
手首の広さと長さは十分で、レインウェアの袖口もすっぽりと覆えます。長すぎず、短すぎず、ちょうどよい。
レイングローブは基本的に覆える長さがありますが、もし短くてしっかり覆えない場合、隙間から水が侵入して濡れの原因に。トレッキングポールを使う場合は腕の上げ下げがあるため尚更で、動かしても問題ないものを。
◎ 片手でキュッと絞められる
調節のゴムはかなり細いタイプですが、伸びが良いので使いやすい。片手でゴムを引っ張ってキュッと締められます。
コードロックの操作性(緩めるとき)は大事
ゴムの伸びがいいので、自分サイズにキュッと締めた状態のままでも着脱可能。いちいち締めたり緩めたりしなくて済むので、スマホで写真を撮りたいときもその点が楽でした。使い終わって乾かすときや、しばらく使わないときは緩めておきます。
風の強い場所での紛失にはご注意を。少しの間使わないときなど、キュッと締めたゴムを腕に通しておくことも可能。ポケットとかサコッシュに入れるといつの間にか紛失していることもあるので、これはこれで使えるかもしれません。
他検討したモデル
サロモン「BONATTI WATERPROOF MITTEN」
サイズが合えば選びたかったモデル。ユニセックスでXS/Sの一番小さいサイズでも指先が結構余りました。
サイズ | XS/S, M/L,L/2XL |
重量 | 平均33g |
防水・防滴 | 防水? |
素材 | Pertex® Shield |
シーム処理の有無の確認を怠ってしまいました。商品ページでは"防水"となっています。指が出せるタイプで切れ目が入っているため、その部分からの水の侵入はゼロではないかと。
手首に調節のゴムはないためキュッと締めることはできません。また、「UL Mittens」のように覆える感じでもないため、そのあたりが本格的な雨使用にはどうかなとは思います(一応防水性は豪雨対応)。
出典:SALOMON
これいいな!と思ったポイントは"指をガバッと出せる"ところ。
グローブを選ぶ際に重要視するポイントは"面倒にならないかどうか"です。スマホの操作は特に重視しており、タッチパネルに反応しない、手首が狭くて着脱がスムーズではないなど、ストレスが大きいと使わなくなります。
「BONATTI WATERPROOF」はレイングローブでありながら指が出せるデザイン。他を探しましたがなかなか、ほとんど?見つかりませんでした。今はGPSアプリで地図を見ている人も多いと思いますが、頻繁にスマホを操作する場合はとても便利です。指先が出ているフィンガーレスグローブとの相性も良さそうだし、操作性を考えると魅力的。
テ・アラロアは道があやふやで油断するとすぐ迷子になるので、頻繁にGPSを確認していました。タッチパネル対応のグローブが反応しないと本当にイラつきます(笑)。
AXESQUIN「W2P Light Shell Trigger Mitten」
出典:AXESQUIN
AXESQUIN「W2P Light Shell Trigger Mitten」
*「W2P」とは"Water Proof""Wind Proof”"のこと
サイズ | S,M,L,XL |
重量 | 平均21g |
防水・防滴 | 防水 |
素材 | PERTEX SHIELD 15Dナイロン /2.5層 |
3本指のミトンで操作性の良さが特徴。シーム処理がされており完全防水です。親指と人差し指はタッチパネル対応。これで21gは結構驚きですね。
最終的に、山と道かAXESQUINかの2択で迷いましたが、残念ながらこれもサイズ感でアウト。親指と人差し指がきっちり決まっているため、やはりその2本が合わず。手首部分は手のひら側にゴムが入っていますが、ドローコードでキュッと隙間をなくすことはできません。
出典:AXESQUIN
5本指の方も試しましたがしっくりきませんでした。親指と人差し指が独立していれば細かい作業も手袋をはめたままある程度できると思うので、合う人には使いやすいミトングローブだと思います。
モンベル「サンダーパスグローブ」
出典:モンベル
"女性用"があり、サイズ感も問題ないモンベルにはやはり頼ってしまう。
サイズ | S,M,L |
重量 | 女性用平均30g |
防水・防滴 | 防滴 |
素材 | ドライテック3レイヤー [50デニール・ナイロン・リップストップ] ( 手のひら:合成皮革 ) |
レイングローブ必要かな・・・と最初に思ったときに検討した「サンダーパスグローブ」。現在はモデルチェンジをしていろいろ変わっていますが、前のモデルも柔らかめで良いレイングローブが見つからなければと保留にしていました。
5本指で、手のひらは全面的に合成皮革で滑らない仕様。タッチパネルにも対応しています。縫い目のシーム処理はされていないため"防滴"。
出典:モンベル
完全防水がいい場合は「ドライテック グローブ」。旧モデルは結構硬めでゴワゴワ感が強かったですが、モデルチェンジをして柔らかめになりました。
急な雨への備えと防寒メインであれば「サンダーパスグローブ」、雨用メインであれば「ドライテックグローブ」。やはりモンベルはコスパがいいですね。
まとめ
今回は"あまり使わない"視点からのアイテム紹介でした。お荷物であることが多いからこそ、必要最低限の機能に抑えて軽く、シンプルに。129日間のテ・アラロアで使ったのはたった数時間ですが、その数時間は本当に必要なアイテムでした。そして、19gの「UL Mittens」で十分でした。
教科書的な正しい登山としてはレイングローブは必須ですが、10年登ってきた自分でもようやく買ったレベル。登山スタイルによってはほとんど使わないと思います。
細かいサイズ感をあまり気にしなくていいと思うので貸し借りも容易。オールシーズン使いやすいので、レイングローブに悩んでいる方はご検討ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
また御縁がありましたら、よろしくお願い致します。
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