歩き人たかちです。
ダブルウォールに比べると寒さを感じるシングルウォールのテント。
朝晩の気温が0〜2℃くらいになる秋の北アルプスを縦走するにあたり、3シーズン用のシュラフの温かさを少し上げるためにSOLの「エスケープビビィ」を導入しました。今までは着込んで対応してきましたが、何枚も着込んで寝ると疲れるので、ちょっと使ってみようかなと。
そして、以前からちょい足しアイテムとして使用しているモンベルの「シルクシーツ」。こちらは、朝晩5℃くらいで「ちょっと寒いなあ」という春秋に。4月の1000mくらいのテント泊や、10月中旬の信越トレイルなどで。
3シーズン用のシュラフをできる限り長く使うために、ちょい足し防寒アイテムをご紹介します。
シュラフカバーではなく「ビビィ」
シングルウォールでもポタポタ滴るほど結露したことはないので、シュラフカバーは特に使用していませんでした。
[ ビビィにした理由 ]
◾︎ 重量
◾︎ 価格
◾︎ 万が一のときにも使える
使用目的は"保温性を上げる"ため。シュラフカバーでも保温性は上がりますが、アルミ蒸着による輻射熱のあるビビィを選びました。本来はエマージェンシーグッズであるため、体温保持に重きを置いています。万が一のときにも使用できて一石二鳥。
重量は「超軽量ではないけど重すぎない」程度。防水透湿性の素材を使用しているものは2レイヤー、2.5レイヤーで200g前後、3レイヤーで300〜500gほど。2レイヤーに比べると多少重いですが、許せる範囲という感じ。
シュラフカバーの価格はピンキリなので単純な比較はできませんが、スペックの高い防水透湿性のものは2万円前後なので、それに比べると安価かなと。安いものは透湿性が低く、結露が多くなります。
雨の日もガンガンテント泊をするという場合は防水性の高いものがいいですが、そもそも浸水するような雨が続く場合は中止にするので、そこまで重視しませんでした。
タイベックも検討しましたが、完全防水ではないand保温性はビビィより低いため中途半端だと思いやめました。ものによっては100g台と軽量ですが、タイベックは重量の割に嵩張ります。
[ 検討したタイベック ]
MURACO「Tyvek®︎ SLEEPING BAG PROTECTOR」
2016年からアウトドア用品の販売を開始したMURACO。テントは非常に高価で手が出ませんが、ロゴがかっこいい。
タイベックのスリーピングバッグはセンタージップ付き。その分265gとタイベックとしては少々重量がありますが、エスケープビビィと大して変わらない重さ。アルミ蒸着を施して保温性を上げた「Tyvek®︎ “THERMO” SLEEPING BAG PROTECTOR」もあります。
モンベル「タイベックスリーピングバッグカバー」
画像出典:モンベル
スタッフバッグなしで148gと軽量。ジッパーはなく、潜るタイプです。
多少保温力を上げることもできますが、ビビィほどではない。完全防水でもありません。今回の目的と照らし合わせると中途半端だったので、選択肢から外しました
エスケープシリーズ
SOLのエスケープシリーズは2種類あり、「エスケープビビィ」と「エスケープライトビビィ」。
*縫製箇所にシームテープ処理が施された完全防水の「エスケーププロビビィ」は取り扱い終了
[ エスケープビビィ ]
重量 | 実測243g (スタッフバッグ無し235g) |
サイズ | 縦横最大幅:約213×80cm 前面(頭部含まず):約180cm 足元の細い箇所:約53cm 足元のマチの高さ:約30cm ジッパーの長さ:約60cm *実測値。自己採寸のため 多少の誤差がございます。 |
体熱反射率 | 70% |
「エスケープビビィ」は寝袋の形をしており、短めですがジッパーありのタイプ。「エスケープライトビビィ」に比べると嵩張りますが、頭周りにはドローコードもあり保温性が高い仕様。
シュラフカバーとして積極的に使用するようであれば、こちらが使いやすいと思います。軽量重視であれば下記の「ライトビビィ」を。
[ エスケープライトビビィ ]
重量 | 156g |
サイズ | 208×81cm |
体熱反射率 | 70% |
「エスケープライトビビィ」は完全な封筒型ではなく、足元がちょっと細くなったマミー型。ジッパーはありません。
上記エスケープビビィよりも小さく軽いですが、隙間ありきの使用。足元にマチはないため、シュラフカバーとして使うにはちょっと窮屈に感じる可能性も。
タープやフロアレスのテントでのグランドシート、シュラフカバー、エマージェンシーとマルチに使う場合はいいと思います。軽量重視の場合はこちら。
SOL「エスケープビビィ」
[ 使用した感想 ]
◾︎ じんわり温かい
◾︎ 小さいサイズがあると嬉しい
◾︎ パックライナーとしては嵩張る
◾︎ 低山なら単体使用もあり?
嵩張ることは想定内でしたが、やはりちょっと大きいですね。スタッフバッグに入っていますが、いつも通りこれは使いません。ガサガサしていて滑りにくい素材なので、ピッタリサイズのスタッフバッグに戻すのは面倒です。
ジッパーは約60cmで、寝袋ほど長くはありません。頭周りにはドローコードがあり、ギュッと絞れる仕様。
ジッパーは表と裏、どちらからでも開けられるようになっています。
足元には高さ約30cmのマチがあり、窮屈感を軽減。
全長は頭部も含めて213cmあるので、実際余りまくり。ハーフサイズのシュラフを使用しており、自分の身長からしても40cmほど余ります。もう一段階小さいサイズがあると嬉しいですが、そもそもシュラフカバーではないので。
生地はしっかりめ。気になるようなガサガサ音は特にありません。いずれアルミ蒸着が剥がれるとは思いますが、夏場は使用せず、使用頻度が少ない前提なのであまり気にしませんでした。
SOLのエスケープシリーズには透湿性のあるポリエチレン製の不織布が使用されていますが、数値で公表されていないためどの程度の透湿性なのかは不明。水を弾く耐水性のある生地ですが、完全防水ではありません。
間口の幅も十分なので、寝袋を入れてもゆとりがあります。モンベルシュラフのストレッチ性も損なわれませんでした。
開封した日が30℃くらいあったので、中に入ると暑かったです。夏場は単体使用している人もいると思いますが、アルミの肌触りがちょっと気になりそう。
モンベルの「シルクシーツ」を入れてみました。この組み合わせなら気持ちよく寝られそうです。
ただ、これ一枚でどこまで耐えられるかは不明です。メーカーでは単体使用の限界温度を10℃、10〜25℃くらいでの使用を推奨しているようです。輻射熱の効果はありますが、生地が薄いことで熱も逃げやすい。できる限り空気の層(断熱層)をつくらないと輻射熱の恩恵は受けられないため、結局ダウンなどを着込まないとそれほど温かくはならないと。
また、寝ている間は体温が低下するため輻射熱の割合も下がります。単体で使用する場合は、夏の低山やキャンプ場などで試してからの方が良さそうです。体感は人それぞれですが、高山での使用はちょっと心配。
9月下旬~10月上旬の北アルプス、笠ヶ岳〜裏銀座の縦走で使用しました。寒い時期なので「結露する」前提でしたが、寝始めて1時間後に確認すると"しっかり結露"していました。
頭まで完全に覆うほど寒さを感じなかったので、ドローコードは締めず、ジッパーは半分くらい開けた状態で使用。(朝晩のテント内の気温は1〜2℃、シュラフの限界温度は2℃)。
起床して改めて確認すると、足元ほど結露で湿気っていました。しかし、中のダウンが濡れるほどではなく、結露によってダウンの保温力が失われるようなことはありませんでした。スペックの高い防水透湿素材のシュラフカバーでも結露はするので、微々たる差かなと。
テント場でシュラフを乾かせない場合はちょっと湿気った状態で寝ることになりますが、シュラフカバーを使わなくても結局湿気るので。2日目の三俣山荘では到着時日陰になっており、乾かすことはできず。湿気ったシュラフがさらに湿気りましたが、それでも中のダウンが濡れるほどではありませんでした。
肝心の防寒としての役割は、シュラフの縫い目部分のコールドスポットからじわじわくる寒さをシャットアウトしていた印象です。ビビィで劇的に温かくなるわけではないですが、足元がじんわり温かくて、それが個人的によかったなと。
ただ、その足元の温かさも体温が下がる前の状態での輻射熱効果がやはり一番高いと感じました。眠る前のじんわりした温かさも、途中目を覚ます頃には特になく。寒いわけでもないし、ビビィを使わないよりはマシなので不満ではないですが。
今回はくるまるほどの寒さではなかったので結露も最低限だったと思います。必要最低限でいいかなと思いビビィを選び、私自身はこれで十分だと感じました。しかし、雪山でもがっつりテント泊をするという場合は、スペックの高い防水透湿性のシュラフカバーの方がいいと思います。
ちなみに、「パックライナーになる」というレビューを見たので試してみましたが・・・
ビビィが大きすぎて、嵩張りすぎて、なんとも微妙でした。50とか60Lくらいのザックならもう少しマシだと思いますが、さすがに37Lのザックでは扱いづらかったです。パックライナーとしてはライトビビィの方が使いやすそうですね。
モンベル「シルクシーツ」
画像出典:モンベル
*現在廃盤となっています
コロナ禍で"インナーシーツ"の持参が求められるようになりました。現在も「持参してください」という山小屋はありますし、もはやないと寝られないという人もいると思います。
私自身、シュラフのちょい足し防寒として購入し、それがコロナ禍でも役立っています。基本的にテント泊なのであまり関係ないですが、テント場のない山小屋に泊まるときは使用しています。
[ 選んだ理由 ]
◾︎ シルク素材で肌触り◎
◾︎ 静電気が起こりにくい
◾︎ 天然素材ゆえの高機能
◾︎ 洗濯機で洗える
重量 | 実測152g(スタッフバッグ含まず) |
サイズ | 縦横最大幅:約211×75cm 足元のマチの高さ:約28cm 前面の長さ:約170cm *実測値。自己採寸、シルク素材のため 多少の誤差がございます。 |
Tシャツ1枚分ほどの重量で、薄くてとてもコンパクト。350mlのペットボトルよりもちょびっと大きいくらい。
パッキングのときはスタッフバッグは使わず、シュラフと一緒にザックの底へ。薄くて軽いのが何より◎
寝袋の形をしており、足元にはマチがあります。
素材はシルク100%。シルクは人の肌と同じタンパク質でできているため、皮膚との相性は抜群。サラサラ・スベスベした肌触りで汗をかいてもベタつかず、とても気持ちよく寝られます。頭までしっかり肌触りがいいところが◎
そんなシルクのメリットは、"静電気がおきにくい"こと。化繊だと静電気が起きやすく、特に化繊とウールの相性は✖️。ウール素材の上にダウンとかウィンドシェルを着ていると、脱ぐときバッチバチ。
寝るときはウール素材に着替えることも多いので、化繊は選択肢から外しました。静電気が起きたことは今のところありません。
天然素材のシルクは、ウールと同じように高機能。「吸湿性」「放湿性」「保温性」に優れた素材で、夏はサラサラ、冬は温かいという特徴があります。
他のインナーシーツを使用したことがないので比較はできませんが、これ1枚足すだけでも結構温かいです。使用するのは春と秋がメイン。3シーズン用のシュラフだけではちょっと寒いだろうな…というときにちょい足し。
寝ている間に下へ下へとズレないように、結べる紐が左右にあります。メインのシュラフはハーフサイズなので特に使用していませんが。頭までカバーできるので、朝になったら足元に…ということは特にありません。
そして、モンベルのシルクシーツのいいところは"洗濯機で洗える"こと。シルクは洗濯に気を遣う素材なので、これは大きなメリットです。
シルクのインナーシーツは化繊に比べると高価ですが、使用頻度が多いようであれば肌触り・寝心地優先で選ぶのはありだと思います。これに関しては、お金を出して正解だったと思えるお品。
モンベルのシルクシーツは残念ながら廃盤になってしまいましたが、他メーカーからもシルクのものは販売されています。
イスカの「シルクシーツ レクタ」。100%シルク素材で、130gの非常に軽量なインナーシーツ。封筒型。洗濯は手洗いを推奨しています(手洗いモードがあれば洗濯機可)。
他の天然素材としては、NANGA「メリノウール マミー型 シュラフシーツ」やSTATIC「YAK LINER」。
NANGAは2019年の秋に数量限定で発売され、現在は生産されていません。470gなので、登山用としてはちょっと重いですね。
STATICの「YAK LINER」は、標高4000m以上の高所に生息するヤクの産毛を使用した"ヤクウール"。メリノウールよりも上質で、羊毛に比べて保温性が30%高いとのこと。
非常に高機能な素材なので、お値段もなかなか。重量は325gなので軽量とは言えませんが、同じ重さの化繊やコットンのものと比べると恩恵がありすぎる。保温性と肌触りを最優先という方にはいいと思います。
STATIC「YAK LINER」
まとめ
ビビィやインナーシーツ一つで劇的に温度が上がるわけではないですが、「3シーズンのシュラフ単体ではちょっと寒い」という季節のちょい足しアイテムとしては必要十分の防寒。
どちらも軽視されがちですが、何気に使えるアイテムです。素材、重量、機能性とバラエティ豊かなので、山行スタイルや使用頻度に合ったものを。
「ちょっとだけ寒いんだよなあ」
「寝るときの肌触りを良くしたい」
このような方はぜひご検討ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
よろしければ、応援よろしくお願い致します。
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