奥祖谷で感じる徳島県の「奥」。

人の気配が薄い「奥」が好き。

徳島県の秘境「奥祖谷」。2020年10月中旬、剣山〜三嶺縦走後に「名頃登山口」へ下山し、麓で遊ばせていただきました。

奥祖谷は電車の走る大歩危駅から40km前後のエリア。バスなら乗り継ぎをして、車なら途中から細い1本道を走って辿り着く、祖谷の奥。

ここまで来たら「奥」を知りたい。

足を運んで感じてもらいたい「奥祖谷」のご紹介。

天空の村・かかしの里「名頃」

急峻な山に囲まれ、祖谷川の流れる小さな村「名頃」。ここは「かかしの里」と呼ばれています。

「空にほど近い山奥にかかしと仲良く暮らす村があります……」

いただいたパンフレットの情報では、2018年3月時点での人口は29人。かかしの人口は200人。

バスの場合、阿波池田駅あるいは大歩危駅で乗車し、どちらも「久保」にて市営のマイクロバスに乗り換えます。

区間所要時間料金
阿波池田駅〜久保〜名頃2時間17分¥2,220
大歩危駅〜久保〜名頃1時間35分¥1,790

久保での乗り換え時間は2分。すぐに出発です。近くに簡易トイレがあり、乗り換え時、運転手さんが「お手洗いは大丈夫ですか?」と聞いていました。もしお手洗いに行く場合は、置いていかれないように一言告げてからの方がいいです。

久保のバス停には"バスに乗りましょう"というようなポスターも。市民の足でもありますし、観光地もあるので簡単に廃止にはならないと思いますが、バスの生き残りの現実は厳しいようです。

久保のバス停近くには「三嶺タクシー」。営業時間内でしたが、カーテンが閉まっていて営業していない様子でした。

名頃は「三嶺」の登山口なので、日帰りや縦走の登山人で賑わいます。登山口近くの名頃バス停より500mの場所に「かかしの里」、その少し手前に「かかし工房」があったので、下山後に時間があれば寄ろうと思っていたのですが、バスの時間ギリギリに下山したため、残念ながら行けず…。かかし工房は、日中は自由に見学ができます。

「かかしの里」の始まりのきっかけとなった人物は綾野月美さん。カラスの被害から畑を守るためにかかしを作って置いたところ、近所の人がかかしに挨拶をしているところを目撃。それ以来かかしを作り続け、今では世界で注目される「かかしの里」となっています。かかしの人口は増え続けているようです。

バスが「かかしの里」を通過するとき、運転手さんが優しく紹介してくれます。本当に笑いかけられているような、朗らかな気持ちに。昔は300人程が生活をしていた名頃、そのときの住民をモデルとして、綾野月美さんはかかしを作り続けています。

毎年10月の第1日曜日に「かかし祭り」が開催されていますが、今年はコロナで中止。多くのかかしが外に出られず残念だとお話されていました。毎月第4水曜日には「かかし作り講習会」も開かれています。

みんな表情が豊かで、とってもお洒落。細かいところまで丁寧に作り込まれています。村の至る所にかかしがいて、本当に生きているかのような佇まい。今回はバスの中から眺めていましたが、歩いてゆっくりと見るのが楽しそうです。

お話はできませんが、村にはたくさんの笑顔がありました。

自然たっぷり「いやしの温泉郷」

かかしの里から5km程の場所に、豪華な温泉宿泊施設「いやしの温泉郷」があります。

施設情報は簡単に以下の通り。

宿泊可。お高め。*12月〜3月冬季休業
テント泊¥2,200(予約不要、温泉代別)
日帰り入浴¥500 営業時間:10〜21時。水曜定休
お手洗い施設内とグラウンド手前。どちらも水洗。
炊事棟なし。施設内外に自動販売機あり。

最寄りのバス停は「菅生」。バス停から温泉までは1.6km。宿泊者は送迎してくれます。

バス停といっても何もないです。帰りは橋の付近で待機して、乗る方向のバスが来たら手をあげるという形式。

HPに記載はありませんが、温泉施設の敷地はテント場としても開放されていて、山屋には嬉しいテント泊スポットでもあります。テント民はもちろん送迎がないので、車道を緩やかに登って行きます。

工事のおじさんに「もうすぐだよ〜」と励まされながら。すすきの素敵な風景を抜けるとまもなく温泉。

受付でテント泊を申し込みます。テント泊についてはHPに記載がなく、ネットでは4年前の情報でストップしていたので、事前に電話で確認しました。予約は不要とのこと。

テントは1泊¥2,200。温泉代¥500は別です。テント泊用の施設が特別あるわけではないのでちょっとお高いですが、宿代やバスのことを考えるとテントを張れるだけでもありがたいです。近くで他にテントを張れる場所は「二重かずら橋キャンプ場」。近くと言っても温泉から8.6km。三嶺登山口から2.9km。名頃よりも更に奥のエリアです。キャンプ場は¥310と非常にリーズナブルですが、人気がなくなると少々不気味。私は温泉を選択しました。

受付前に売店があります。お土産やお菓子が中心ですが、菓子パンも置いてありました。食料を調達できるお店は周辺にないので、食料計画は入念に。

テントは敷地内のグラウンド、あるいは東家周辺ならどこでもOK。これだけ広いグラウンドがあれば、いっぱいになることは無いでしょう。

東屋とお手洗いはグラウンドの手前にあります。お手洗いは水洗でとても綺麗です。施設内にも利用できるお手洗いがあるので、寒い場合はそちらで。

炊事棟はありません。施設内外に自動販売機があるので、水は調達可能。お手洗いの水を飲用できるかは不明です。

テントは東家周辺の芝生に張りました。東屋の中はとても広々していて、誰もいないので中に張ろうと思いましたが、鳥の糞がすごかった…。写真だと写りませんが、結構大量の糞が。寝ている間にテントに落とされるのも嫌なので芝生の方で。

受付で温泉代を払い、向かいます。

営業時間は10〜21時、最終受付は20時半ですが、受付では17時半最終受付の18時までと言われました。テント泊の場合は少し早いのかもしれません。

施設の中にも人形が。

ジャグジーと露天風呂のある広々した温泉です。奥祖谷の大自然に囲まれた静かな温泉、山奥を満喫するにはとてもいい場所。

夜は鹿の鳴き声を聴きながら…。

外の照明と音楽は21時半に消灯でした。

宿は、平日でも1人で宿泊の場合¥20,000。気軽には泊まれませんが、テント泊もできるので登山前後の宿泊にはおすすめです。

すべて世界一「奥祖谷観光周遊モノレール」

いやしの温泉郷の敷地内に、ちょっとマイナーで、とっても楽しいモノレールが潜んでいます。

全長4600m、高低差590m、山頂標高1380m、所要時間70分。

何だ…これ。

とてつもなく楽しそう。

奥祖谷のとってもユニークな乗り物。なんと、距離、高低差、最高標高、所要時間、全てが観光用モノレールとしては世界一。これが中々の人気を誇り、休日は混雑で乗れないこともあるとか。

バスの便が少ないこともありますが、温泉にテント泊をしたのは朝一にこれに乗るため。システムの関係上、一日の運行台数が決まっているため、営業時間内でもチケットが完売してしまうと乗ることはできません。

4〜9月  8:30〜16:00 *水曜定休
10月〜11  8:30〜15:30 *水曜定休
12月〜3月冬季休業
料金  大人:¥2,000 小人:¥1,000
※水曜日が祝日の場合は運行

温泉施設とともに、12月〜3月は冬季休業です。

宿には「モノレール付き」というプランがあるほど人気。テントの受付時にモノレールの乗り方をお聞きすると、整理券をいただけました。「明日の朝、整理番号を8時15分までにモノレール乗り場に持って行き、チケットを購入して下さい。」とのこと。

モノレールのみの利用は、当日並びます。モノレールは8:30から営業開始ですが、休日や連休は整理券をゲットするために早くから人が並ぶそうです。

翌朝、7:45頃駅舎に向かいました。「8時半から始まるので」と言われテント場に戻ります。テントを乾かして、8時40分頃に再度駅舎へ。

駅舎には早速お客さんが。私のあとにもカップルがやってきました。とにかく距離が長いので、途中で何かあったときのために非常停止ボタンやトランシーバーの説明を詳しく聞きます。1組3〜5分くらい、説明の時間を設けていました。いろんな説明を受けて、咄嗟には出てきそうにありません。説明板は乗り物1台ずつにありますが、プチパニックになりそうですね。何も起こらないことを祈って出発。

1時間程ひたすら森の中を走ります。

森の中を1時間も?飽きない?と、思う方も多そうですが、これが飽きないのです。ジェットコースターのような登り下り、杉林や広葉樹の森、水の流れがひんやりと心地よく、紅葉期は特に綺麗です。ときおり鹿の鳴き声が聴こえ、運が良ければ姿を見ることもできます。

花粉症の方は、春は避けた方が良さそうです。花粉シャワーになりそうな杉林を何度も抜けていきます。モノレールは屋根付きなので雨の日でも乗れますが、木漏れ日がとっても素敵なので、できれば晴れの日をおすすめします。

モノレールは山頂を目指してぐんぐん登っていきます。

そろそろ?そろそろ?と、案内版を見ながら待ち侘びつつ、半分が終わってしまうのがちょっと惜しい。

山頂では少しひらけて、遠くの山並みを望めます。モノレールでのハイキングは初めてなので、子どものようにワクワクしっぱなし。ケーブルカーだと窓越しでスーッと早く過ぎてしまうし、リフトは好きですが木々の中は進まない。歩く目線で、乗り物に乗りながら山頂まで行けて、さらに下りも楽しめるのはモノレールだからこそ。

登りも下りも急な箇所がありますが、下りではところどころで椅子が動き、座っているのが辛くないように配慮されています。ジェットコースターをスローで体験しているようで、下りも非常に楽しめました。

三嶺からは温泉に下山することもできます。登山道はモノレールの場所を通過するので、モノレールからここが登山道かーと見ていました。今回は初めての縦走だったので一番メジャーな名頃へ下山しましたが、バスを降りてから車道を1.6km登ることを考えると、温泉に下山した方が良かったなと。バスの時間も気にせず歩けるので。

なんだかんだあっという間のモノレール散歩。森の奥に進むにつれ、標高が上がるにつれ、ひんやり寒くなるので、秋〜春は特に防寒着をお忘れなく。山は登らないけど、奥祖谷の森をちょっと見てみたいなーという方には本当におすすめです。

ところどころ木の種類のプレートがあるのでそれを見たり、鹿を探したり、小さい子も最後まで楽しめると思います。

世界一を誇りながらも、ひっそりと「奥」に潜んでいるところがいいですね。

さらに奥へ。「奥祖谷二重かずら橋」

祖谷といえば「かずら橋」

かずら橋には「祖谷のかずら橋」「奥祖谷二重かずら橋」があります。かずら橋の由来は諸説あるようですが、当時は7つ、あるいは13の橋が存在していたそう。現存しているのは上記の2つ。

祖谷のかずら橋は、大歩危駅よりバスで30分程。二重かずら橋はそこから30km奥へと入るので、一気に遠くなります。二重かずら橋へバスで行く場合は「久保」で市営のマイクロバスに乗り換えます。車道は「かずら橋」までは二車線ですが、奥へと入り込むにつれ細い林道になります。

区間所要時間料金
阿波池田駅〜かずら橋1時間10分¥1,290
大歩危駅〜かずら橋27分¥670
阿波池田駅〜久保〜二重かずら橋2時間24分¥2,220
大歩危駅〜久保〜二重かずら橋1時間42分¥1,670
※2020年10月時点

祖谷のかずら橋は大歩危駅からも比較的近く、車道も2車線、駐車場も300台近く停められる程大きいので大抵混んでいます。

静かに、雰囲気も存分に味わいたい方は「奥祖谷二重かずら橋」へお進みください。

奥祖谷二重かずら橋には「男橋」「女橋」「野猿」の3つがあります。野猿の奥には片道約1kmの遊歩道があり、ちょっとしたハイキングも。

季節営業時間
 4月〜6月  8:00〜17:00
7月〜9月 7:30〜18:00
10月〜11月 8:00〜17:00
12月〜3月 冬季休業

営業時間は日の出〜日没までという情報もありましたが、一応季節ごとに決まっているようです。

受付のおじさんが愉快で、いるときといないときがあるとか。いないときの入場料はどうするのか…。大きなザックを背負ってバスを降り、荷物を預かってもらえるか聞く前に「荷物置いていきな〜」と言ってくれました。

入口の左手に駐車場があります。こじんまりとした感じに見えましたが、30台駐車可能とのこと。

遊歩道を下って行きます。空気がすっきりと気持ちが良いです。訪れたのは10月16日。紅葉はまだまだこれから。例年、11月中旬〜下旬頃に見頃を迎えるそうです。

まず見えてきたのは「男橋」

長さ42m、幅2m、水面からの高さ12m。

祖谷のかずら橋より、長さと高さが2〜3m短いです。

渋かっこいい。

「シラクチカズラ」でがっちり組まれた橋。渋くて貫禄がありますが、3年に一度架け替えが行われているとのこと。また、現在は安全のためにワイヤーが使われています。ただ、奥祖谷二重かずら橋はワイヤー補強が最低限。祖谷のかずら橋は観光客が多いため、厳重に補強されているとのこと。元祖を楽しむなら奥祖谷が良さそうです。

歩く度にミシミシギシギシと橋が奏でる音が実に渋い。足元の板は絶妙な間隔。高所恐怖症の方は足踏みしてしまうでしょう。必ずスニーカーなど歩きやすい靴で。

両手でしっかり捕まりながら進みます。足元の間隔を写真に収めるのを忘れてしまいましたが、踏み外すのが怖いです。20cm近く空いているのではないでしょうか。自分は足が小さいのですぽーんといきそう。小さなお子さんは要注意。

ちなみに、祖谷のかずら橋は一方通行で一度しか渡れませんが、奥祖谷二重かずら橋は何度でも行き来できます。

渡った反対側から。何人まで同時に渡ることができるのでしょうか。人が渡っているのを見ると、結構揺れています。マイペースでゆっくり渡るには二重かずら橋が向いています。

しかしながら、人が少なくて非常に静かです。

ちなみに、剣山~三嶺縦走途中にある「丸石避難小屋」への登山道がここから延びています。ここに下山してきたら入場料はどうなるのか。受付のおじさんがいないとか、営業時間が日没までとか、なかなか自由な二重かずら橋です。

男橋を渡ると「女橋」「野猿」の案内板。女橋は男橋に比べて、長さ、高さ、幅が約半分。男橋はちょっと…という方は女橋をチャレンジしてみてください。

そして、キャンプ場。紅葉の時期は非常に綺麗だと思いますが、誰もいなければ少々怖そうです。管理人さんもおそらく帰るので、山奥に1人…根強いファンもいるようですが。平らでテントは張りやすそうです。東屋があるのもちょっと嬉しい。祖谷川がすぐそこなので、浄水器があれば水にも困りません。

綺麗な水とたっぷりのマイナスイオン。静かさを求めるキャンパーには非常によい空間かと。

こちらが「女橋」。男橋に比べてやはり小ぶりです。蔓の太さも細めの仕上がり。

野猿方面から見た女橋。

二重かずら橋の楽しいところは「野猿」があるところ。屋形という籠に乗り、手でロープを手繰り寄せながら進んで行く人力の乗り物です。

定員は1~2名。しかし、これ、1人で最初から最後まで到達するには非常に力がいります

誰も乗っていないときは川の真上、ロープの真ん中で屋形が停まっています。乗るために野猿を引き寄せるところから結構力がいります。乗りこんで、途中までは重力で進むのですが、真ん中辺りからは人力で。2人で乗ると半分くらいは自然に進みます。1人で乗ったら3分の1くらい静かに進んでストップ…。

ロープの手繰り寄せがなかなかの重労働。初めの方はいいのですが、乗り場に乗り上げるところで、ぐいっぐいっと屋形が戻らないように引きます。乗り上げたあとも、ロープを離すとピューっと戻ってしまうので、手繰り寄せた状態で乗り降りをします。

籠自体が重いので、女性は特に1人だと大変。私は1人で乗りましたが、その前に乗った方々がロープを手繰り寄せるのを手伝ってくれました。誰もいなかったら反対側に辿り着けず、川の上でポツン…としていたかもしれません。

1人観光のときは、念のため他に人がいることを確認して乗った方が安心です。

野猿から見る川景色がまたよい。

ロープの手繰り寄せを手伝ってくれた方が「写真撮りますかー?」と気を遣ってくださいました。

奥祖谷二重かずら橋は自然が豊かで雰囲気にも満足でしたが、バスの場合は1日に2便しかないので要注意。私はいやしの温泉郷から二重かずら橋10:40着に乗り、11:18発のバスで大歩危方面へ戻りました。30分程で見て回りましたが、もう少しゆっくりしたかったな…という感じ。野猿も混んでいたら諦めざるを得なかったでしょう。奥の遊歩道も行けませんでした。

橋と野猿だけなら40分程、遊歩道を含むなら1時間半弱くらい時間があるとゆっくりできると思います。

祖谷と奥祖谷のかずら橋、両方訪れると方もいるようです。

ディープさを求めるのであれば、奥の二重かずら橋へどうぞ。

このあとバスで久保に戻り、大歩危へ向かいました。大歩危へ向かうバスの乗り換えは30分程時間があるので、ちょっと周辺散策。

バス停前の坂を下ると、祖谷がの素敵な風景があります。

写真スポットではないところでときめくことはしばしば。お時間があれば水の色を見てみてください。

バス停前と坂の途中の廃墟。ポストには大量の新聞が入れられていました。一番最新のものは2018年。中はまだ生活感のあるような雰囲気でしたが、放置されています。興味本位でまじまじと見てしまいました。

次回は、大歩危についてご紹介します。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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