2020.8.19
歩き人たかちです(@takachi_aiina)
2日目:薬師峠キャンプ場 ー 黒部五郎岳 -黒部五郎小舎
3日目:黒部五郎小舎 ー 双六岳 ー 槍ヶ岳
★4日目:槍ヶ岳 ー 大キレット ー 北穂高岳
5日目:北穂高岳 ー 奥穂高岳 ー 上高地
縦走4日目。昨日は、黒部五郎小舎から西鎌尾根を歩き、槍ヶ岳で仲間のKさんと合流。行動食が足りずシャリバテ状態で到着するわ、水も足りないわ、といろいろ失敗しましたが、西鎌尾根は素晴らしい稜線でした。
\ 3日目「双六岳・西鎌尾根」はこちら /
今日は、縦走の最大のイベント「大キレット」。憧れの岩陵帯に緊張しつつ、ワクワクしつつ・・・天気に恵まれた大キレット、脳裏に焼きつく山行となりました。
槍ヶ岳山荘テント場 ー 大喰岳 ー 中岳 ー 南岳 ー 南岳小屋 ー 長谷川(H)ピーク ー ナイフリッジ ー A沢のコル ー 飛騨泣き ー 北壁 ー 北穂高小屋
▲コースタイム:6時間30分
▲ 歩行距離:約5km
▲ 累積標高差:+700m/-685m
「大キレット」槍ヶ岳から北穂高岳へのコース概要
*大キレットは「北穂高岳 → 槍ヶ岳」の方が難易度が高いと言われますが、実際その通りだと感じました。特に、最初の"北壁の下り"は高度感があり、個人的には下り利用はしたくないと思いました。
槍ヶ岳 - 南岳小屋
槍ヶ岳山荘のテント場から続く道を歩き、大キレットの玄関口となる「南岳小屋」へ。岩陵帯の細かいアップダウンをクリアしながら、「大喰岳」「中岳」「南岳」を越えていきます。振り返ると、槍ヶ岳からの稜線がとても美しい。
中岳からの下りは大きなガレ場。ペンキマークを辿りますが、視界不良だと迷ってしまいそうな広さがあるので要注意。南岳まで登り返すと、「南岳小屋」はすぐ眼下にあります。
南岳小屋 - 北穂高小屋(大キレット)
\ 大キレットの危険ポイント /
② 長谷川ピーク(Hピーク)
③ ナイフリッジ
④ 飛騨泣き
⑤ 北壁
① 南岳小屋から、鎖とハシゴのガレ場の急斜面を下ります。浮石が多いので、落石や転落に要注意。パーティーの場合、間隔を空けて歩くとよいです。
② 南岳から"最低コル"まで下ったあとは、岩陵帯のやせ尾根を辿り「Hピーク」の取り付きへ。岩陵帯の急登でピークに到達しますが、ピークは狭く、休むような場所ではないため、前後に人がいる場合は速やかに先へ。
「Hピーク」の北穂側はスパーン!と切れ落ちており、踏み外すと文字通り"谷底"なので慎重に。鎖はありません。
③「ナイフリッジ」は鉄のステップがあり、それを頼りに壁を下ります。ステップに入るまでは鎖あり。下りた地点は細いので、バランスを崩さないように注意。
④「飛騨泣き」は、北穂高岳への北壁の途中にあります。鎖とステップを利用して登りますが、身長が低い自分には(147cm)、最初のステップが高めでした。
飛騨泣き通過後に再び鎖とステップがありますが、傾斜はそれほどでもなく、足元にハイマツがあり高度感はありませんでした。しかし、事故多発地帯でもあるので要注意。
⑤「飛騨泣き」を含めて「A沢のコル」から登る北壁は、個人的に一番高度感があり、下り利用は嫌だと感じたポイント。三点確保で"よじ登る"感じの壁です。身動きが取れないような狭い岩場も多く、落石に要注意。自分が落とすのも大変なことになります。
最後まで見上げるような岩壁が続き、登りきると「北穂高小屋」に到着。小屋からの大キレットは槍ヶ岳側からとは全然違い、見応え抜群です。
一般登山道最難関「大キレット」槍ヶ岳から北穂高岳へ!
槍ヶ岳テント場 ー 南岳小屋
槍ヶ岳テント場 ー 飛騨乗越 ー 大喰岳 ー 中岳 ー 南岳 ー 南岳小屋:CT3時間
3:40起床。今日は結露なし。大キレットなので、水分を持ち運ばなくていいことに感謝。

5時前に撤収し、朝日待ち。5時出発予定でしたが、日の出は5:08。天気が良いので、朝日をしっかり見てからスタートすることに。
多くの人がスタンバイ。槍の穂先でも、ヘッドランプが光っています。

グラデーションが半端ない

右端にひょっこり富士山

おはようございます ☀︎
太陽が生まれる瞬間は、温かい空気感が漂う。槍のシルエットとともに見る朝日は格別で、これは槍ヶ岳山荘の特権。

5時30分、テント場から続く道を歩き始めました。細かいアップダウンといくつかのピークを越え、まずは大キレットの入口にある「南岳小屋」を目指します。

近くで見る槍ヶ岳は結構丸みがありますが、離れれば離れるほどトンガリコーンになる。鋭い槍ヶ岳がやはりかっこいい。

最初は「大喰岳」ですが、いつの間にか通り過ぎていました。標識か看板あったかな?


左に少し進み「中岳」に到着

何度も振り返る


常念岳はわかりやすい山容をしています
常念岳から歩いてきたKさんも感慨深そう。毎年、少しずつ地図上の道が繋がっていくのが嬉しい。"足跡を残す楽しさ"を感じながら、新しい道を辿ったり、再び足跡を残したり。

最高の大キレット日和

中岳を下り、南岳まで登り返します。岩にペンキでマークがありますが、どこでも歩けてしまいそうなガレ場。ガスだと迷いそうな広さです。

直線距離だと北穂高小屋もそんなに遠くはないですが。奥穂高岳までくっきり。

下ってきたガレ場



「南岳」までもう少し


「南岳」登頂!

先着の方と「ベストコンディションですね〜」と喜び合う。狙いはしましたが、ここまで好天が続くとは思っていませんでした。しかも、今日が一番の好天!

山頂から「南岳小屋」はすぐ。小屋の屋根で小屋番の方が気持ち良さそうにお昼寝中。
テント場もゆったりしていて、ロケーション抜群。ファンが多いテント場なので泊まりたかったですが、今回は行程的に槍ヶ岳山荘になりました。

南岳小屋で休憩と準備。水は1L200円で購入可能。トイレがとても綺麗でした。

売店も充実。南岳小屋には大キレットのバッジがあるので、てぬぐいと一緒に購入。てぬぐいは窓から大キレットを望む素敵なデザインですが、南岳小屋がモデルかは不明とのこと(この景色が見える窓はないらしい)。
売店に牛乳があり、つい購入。稜線の小屋で牛乳の販売はあまり見かけないので。

南岳小屋のかわいい大キレット案内
ブログや本、YouTubeで予習をしてきましたが、動画は動画特有の歪みがあり、実際よりもかなり垂直に見えます。
「こんなに垂直ではありません」と註釈を出している方もいましたが、実際に歩いてみると動画ほどの斜度や高度感はなく、歪みが結構強いのだと思いました。
感じ方は人それぞれですが、やはり実際に歩いてみないとわからないですね。
30分くらいのつもりが、居心地が良くて1時間近く休憩していました。サコッシュをザックにしまい、ドローコード類を締め上げる。靴紐を結び直して、いざ大キレットへ!
南岳小屋 ー H(長谷川)ピーク
南岳小屋 ー 最低コル ー Hピーク:CT1時間20分



まずは、南岳小屋からの急斜面。落石、滑落、転落などに要注意。浮石が多いので、少し間隔を空けて進みます。
最近、上高地で地震が頻発していました。そのの影響で、岩陵帯では浮き石が多くなっているとの情報もありました。


石、岩がガラガラゴロゴロ。平日で人が少ないのが救い。人が多いと嫌ですね。

美しく、勇ましい大キレット
北穂高小屋までのコースタイムは6時間30分ほど。急ぐ必要はないですが、5時出発と言っていたのは"ランチが13時まで"だから。
北穂高小屋のスパゲティをどうしても食べたくて。気持ちはすでに、大キレットを越えてスパゲティですが油断禁物。

細い道を一歩一歩慎重に。家族との約束は、いつも通り"生きて帰る"こと。眼科の稜線までどんどん下ります。

鎖を下り

ハシゴを下る

高所恐怖症のKさん的には、槍ヶ岳山頂直下のハシゴの方が怖いそうです。高所恐怖症ではない私としては、どっちもどっち?

"最低コル"までもう少し

下りきって見上げる

最低コルに到着したら、「Hピーク」に向かって岩場の痩せ尾根を歩きます。

素晴らしい

自分も・・・

風がなく穏やかですが、今日も暑い。視界を少しでも広くしようと(落石を警戒して)キャップを脱いでヘルメットオンリーなので、直射日光が眩しい。

Hピークに人が立っています

南岳小屋方面

Hピークへの登りに取りかかる。マークを確認するために見上げると直射日光が目に刺さる。サングラスと目の隙間から太陽光が入ってきて、サングラスの意味なし。

「Hピーク」到着!

登ってきた岩場をパシャリ

反対側はスパーンと切れ落ちています
ピークは狭いので、登ってくる人がいる場合は速やかに進んだ方がいいです。ピークでの譲り合いにも要注意。
Hピーク - 北穂高小屋
Hピーク ー ナイフリッジ ー A沢のコル ー 飛騨泣き ー 北穂高小屋:CT2時間10分
行程の中で一番怖いのでは?と思っていたのが"Hピークからの下り(北穂側)"。
すれ違いはできないので、登山者がいる場合は譲り合い。先だと無意識に焦りが出るので、下りの場合は特に、一度戻って譲る方が良さそうです。

写真中央辺りに褐色のステップが1つ、岩の間にあります。ステップ上部にある○マークからステップへ足を下ろし、岩の隙間を通って奥の○マークへ移動。
写真だとステップを使わず岩陵帯を通過できそうに見えますが、それはできません。鎖がないため、ステップを踏み外さないように注意。
このステップの状況が写真や動画ではよくわからず、とんでもない所なのでは?と思っていました。動画では異様に垂直だし、鎖も無い。
実際は、想像していた程怖くはありませんでした(個人的に)。身長が低いのでステップに足がしっかり届くか心配でしたが、それは問題なし。鎖が無いので、岩を確実に掴みながら通過します。

振り返る
北穂側には「⇔」のマークがあり、奥にステップがあります。

北穂側から来た人を待つ

少し進んだ場所から「Hピーク」を見るとこんな感じ。すれ違った方が通過中。想像ほど垂直ではありませんでしたが、落ちたら終わり、は変わらない。

足下はこんな

「ヒューーーーー」って聞こえないけど、聞こえます。

振り返る

Hピークを越えたら「ナイフリッジ」。鉄のステップがあり、それを頼りに下ります。下り立つ地点も1分の道幅なので、安心してバランスを崩さないように。

下っていく

Kさん撮影

見上げる。ステップは上部のみ

ナイフリッジを通過したら、岩の間を通り「A沢のコル」へ下っていきます。


足元は相変わらずスパーンッ!


鎖がところどころある場所を通り、「A沢のコル」に到着。
ザックを下ろして一息つける広さがあるので、「北壁」に突入する前に水とエネルギーをしっかり補給。
ここから「飛騨泣き」を経て、北穂高小屋まで一気に登ります。

スパゲティを目指して、いざ!


Kさん撮影

振り返ると、あんな岩場をちょこまか歩いていのか、という感じ。通過中は目の前のことに集中しているので、谷底とか高度とか、気にせず歩いていました。


「A沢のコル」が真下にあり、登山者がいます。落石を起こしたら大変なことになる。

歩く幅はこんな感じが続く

北壁は"よじ登る"という言葉がしっくりくる

つい下を撮りたくなる。開けているので、高度感があります。北壁を下るのは嫌らしい感じなので、個人的には登りがおすすめ。

まだまだ続く

「飛騨泣き」に到着。鎖とステップを利用しながら、ペンキマークに従って進みます。

登り始めを踏み外さないようにすれば、足場はしっかりあります。身長が低い私には、最初のステップの間隔が少々広めでした。Kさんは160cm以上あるので問題なし。

「飛騨泣き」通過後の鎖とステップ
正直、「飛騨泣き」はこの部分だと思っていました。テレビでもよく映るポイント。
個人的には、ステップを使わずとも歩けないことはない、と感じました。足元にハイマツがあるので、高度感は特に感じず。ただ、事故多発ポイントでもあるので要注意。

通過後、振り返る。ハイマツがなければ結構な高度感な気もしますが、いい仕事をしていますね。

すべてのポイントをクリアし、北壁を最後まで登りきればスパゲティが待っている。もう、お腹が空いています。

Hピークやナイフリッジも、見下ろすまでになりました。


槍の穂先がちょこんと見えてきた

ひたすら登る



滝谷の絶壁。こんなところを登る人がいるなんて

スパゲティのことしか頭にない。そして・・・

「北穂高小屋」到着!
12時10分。ランチに間に合いました!
歩き終わった直後の感想は、「構えていたほどではなかった」でした。高所恐怖症ではないので、岩陵帯を純粋に楽しめた感覚。しかし、天候に恵まれたことは大きい。強風や視界不良だと、難易度は一気に上がります。
一歩間違えれば命を失う場所であることは確か。かなり予習をして、イメトレして、構えまくっていたので、そんな感想でした。でも、情報収集とイメトレは大事。
小屋の人がニコニコ迎えてくれて、無事歩ききったことにほっと一安心。家族にすぐ連絡をして、ランチ!!
北穂高小屋に宿泊!見応え抜群の大キレットと極上スパゲティ
「スパゲティありますか!?」と勢いよく聞くと、「ありますよ〜!」と天使の一言。
*ランチは11〜13時までの2時間です

うますぎるーーー!!!
スパゲティは"ミートソース"と"トマトソース"の2種類で、トマトにしました。スープも付いて、チーズとタバスコまで持って来てくれます。さらに水まで・・・3,000mのレストラン。

北アルプスの名だたる名峰から大キレット一望の中、達成感を胸に食べるランチは極上。今まで食べた山ごはんで一番美味しかった。


ドリップコーヒーも注文。北穂高小屋のお皿が本当にかわいい。欲しい。

涸沢ヒュッテも見えます

本日の宿泊者は25人。コロナ禍で、布団2枚敷きのスペースは1枚ずつになっており、ゲストハウスのようでした。

8月の好天に、こんなに広々くつろげるなんて。本や雑誌は不特定多数の人が触るということで、片付けられていました。

そして、宿泊者は充電、水、お湯、お茶が無料!お湯は本当にありがたい。
トレイの奥には乾燥室もあります。トイレが無臭で驚きました。

小屋の内装がすーごく素敵
重厚な木の机と椅子は年季が入っていて。ここまで上げるの大変だっただろうな。

各テーブルにはお花が飾られています。荷揚げのときに上げているのでしょうか?ただならぬ"こだわり"を感じます。

小屋の周りに咲いている高山植物には名前のプレートが置いてあり、小屋の中にも紹介が。自然への"愛"が半端ない。



山小屋の売店は財布の紐が緩む

夕飯は17時と17時半の2回でした。生姜焼きとペペロンチーノがメイン。重量を減らすために質素な食事だったので食欲爆発。めちゃくちゃ美味しかったです。

夕食後の大キレット鑑賞
なんと美しいことか。槍ヶ岳から見る大キレットとはまるで違います。槍ヶ岳が入るだけで景色がまとまる感じ。
テラスもいいですが、私としては、大キレットへの登山道が始まる場所からの景色がベストでした。

夕食後のコーヒー & チョコ = 至福


雲が多くて、太陽は早めにさよなら

山頂は小屋から1分もかかりません。後回しにしていましたが、「北穂高岳」登頂!

大キレットが雲に包まれていく

テント場は、小屋から10〜15分程度で離れています。水も、トイレも、大キレットの景色も小屋なので、北穂高岳は小屋泊がおすすめ。
テントにはテントの魅力がありますが、小屋には小屋の魅力がある。泊まりたい小屋には泊まって、テントと小屋、両方を楽しむのが自分流。
消灯は20:45。大満足の大キレットに素敵な北穂高小屋。これまでの疲れがどっと出たのか、爆睡でした。
明日の最終日は、「奥穂高岳」へ縦走して「重太郎新道」で上高地へ下山します。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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よろしければ、応援よろしくお願いいたします。
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