2023.8.5-8.8
歩き人たかちです。
縦走最終日。昨日は、池ノ平小屋と仙人池で裏剱を見納めて雪渓のない仙人谷、なかなかハードな雲切新道を下って阿曽原温泉まで。"剱岳"から"黒部"へと雰囲気を変えていきました。
今日は、いよいよ黒部の歴史には欠かせない"水平歩道"歩き、最終地点の欅平を目指します。岩を掘り、断崖絶壁につくられた一本の道。黒部を感じるには十分な奥深さがありました。
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天気:晴れ ☀︎
気温:20〜25℃
阿曽原温泉-折尾ノ大滝-大太鼓展望台-志合谷-蜆谷-水平歩道始・終点-欅平駅
▲ コースタイム:5時間15分
▲ 歩行距離:9.3km
▲ 累積標高差:+962m
-1216m
「 水平歩道 」コース概要
欅平駅を始・終点とする"水平歩道"。標高1000m付近の断崖絶壁につくられた、幅70〜100cmの道が仙人谷まで約13km続いています。1人用テントの多くは幅90cm前後なので、それと同等と考えると感覚が掴みやすいかもしれません。
中でも有名なのは"大太鼓展望台"付近の景観。コース上道幅が一番狭く、落ちたら谷底まっしぐらの断崖絶壁。樹木がないため、水平歩道の中でも一番高度感のある場所です。"水平歩道といえばここ"というほど写真などでよくお目にかかる区間ですが、距離は短くすぐ終わります。
技術的なことよりも、10km以上景色が単調で水平な道が続くため、飽きることによる"集中力の欠如"が事故に繋がりやすいのかなと感じました。欅平〜阿曽原温泉までは全体的に歩きやすい道のため(個人的主観)、ちょっとした躓きや踏み外しに対する長時間の集中力が大事かなと。
大太鼓展望台以外の区間は人が十分通れる幅の道。断崖絶壁なのは変わりませんが、樹木があるため高度感は特にありません。万一落ちても何かに引っかかるかなという感じ。しかし、すれ違いや転倒、ザックの当たりによる突き出しなどには要注意。また、足元が崩れている箇所もあるため、そのような場所の通行にもご注意を。コース上にはワイヤーが張られており(樹林帯除く)、安全を確保できるようになっています。
欅平から歩くか室堂から歩くかについて、右利きの人は欅平から歩けばワイヤーが常に右になるため掴みやすいと思います(左利きの人は逆)。欅平〜阿曽原温泉は下ノ廊下ほど険しいわけではないため、好きな方向からでいいかと。下ノ廊下を歩く場合は、そのあたりを考えると安全性も向上すると思います(下ノ廊下を1泊2日で歩く場合、欅平からの方が日程的にも無理はない)。
水平歩道、下の廊下は"高熱隧道"を読んでから歩くのがおすすめです◎
水平移動[阿曽原温泉-折尾ノ大滝]
阿曽原温泉小屋-折尾ノ大滝:CT2時間5分
欅平駅から宇奈月駅への始発電車(10:01)に乗るため4:30出発・・・予定のところ4:40出発。いつも若干遅れる。夏至から約2ヶ月、日が短くなっていることを薄暗いテント場で感じます。次来るときは小屋に泊まってみたい。
台風6号が韓国の方へ進んでくれて、台風7号の影響もまだ受けていない立山エリアは今日も晴れ予報。昨日より雲は少なく、相変わらず南風。今年の剱岳は当たり年ですね。
標高を下げたことで気温は上がり、朝から20℃くらいあってムシっとしています。昨夜はシルクのペラペラインナーシーツのみで、寝袋はお腹のあたりになんとなく掛けていただけ。途中で起きることもなく、3時半まで爆睡していました。
阿曽原温泉から岩やハシゴを登りつめ、道は水平に。今日は黒部の歴史が詰まった道を10km以上、永遠に歩きます。
宇奈月駅からの始発電車は9:33に欅平駅に到着します。それまで阿曽原温泉方面に歩いてくる人はいないため、今日もおそらくすれ違いは0。北アルプスの登山道で2日間誰にもすれ違わないなんて・・・しかし、狭い登山道なので安心して歩けます。
常にワイヤー(たまにロープ)が張られています。登山道のあちこちに作業道具が置かれていました。整備に感謝。
樹木により高度感はほとんどないですが、実は断崖絶壁だったり、傾斜がだいぶ急だったり。下を見ると深い谷底になっていて、よろけたらアウトなところが多数。足元はガタガタしているので要注意。景色も特に変わらず単調なので、油断禁物です(この道はこれが一番大事かと)。
折尾ノ大滝
座り休憩しやすいポイントがあまりない中で、ここはとても良かった。水があるだけで涼しくなりますね。ザックと腰を下ろして一息ふーっと。
核心部[ 折尾ノ大滝-欅平駅 ]
折尾ノ大滝-大太鼓展望台-志合谷-欅平駅:CT3時間10分
折尾ノ大滝から再び同じような道を歩きつつ、短いトンネル的なところを抜けつつ・・・
ここでクマに遭遇したらどう逃げるか、ストックで闘うかなんて考えていると、このあたりはもしや・・・?という雰囲気に。
大太鼓展望台に到着!
おお!ここか!と、雑誌などで何度も何度も見てきた断崖絶壁区間が現れました。1人だけ通れる幅にこの高さ、この岩壁をくり抜こう思ったことがまずすごい。というか、やばい。
足元は、ヒュ〜という黒部の谷底(実際ザーーーという沢音)。踏み外したら一発アウト。水平歩道も、さらに奥の下ノ廊下も"生きるか死ぬか、0か100か"と言われますが納得。しかし、昔はここを資材を持って歩いていたわけで。下ノ廊下の方なんてさらに険しいわけで。こんなところ、死者が何百人も出るわけだよなあ・・・
ただ、これほどの高度感の道はほんの一部。結構長く続くと思っていたので「あ、終わりか」という感じで。岩壁に道をつくること自体途方もない作業なのに、そんなに長くつくれないか。
大太鼓区間が終わり、それまでと同じような道を歩き続けると"志合谷"に到着。150mのトンネル区間で、真っ暗なのでヘッドランプ必須です。中は水溜りになっており、ローカットは一発アウト。ミドルならギリギリセーフかな?という深さ。バシャバシャ歩いていたら中に水が入ると思うので、スパッツがあるといいと思います。
真っ暗なトンネルを3〜5分くらい歩くので、閉所恐怖症や暗いところが苦手、お化け屋敷嫌い・・・という人にはちょっと辛いかもしれません。ピチャ・・・ピチャ・・・と水が滴る音がトンネル内に響き、掘削のガタガタの壁もリアルで、死者の声が・・・なんて。
トンネル内は冷蔵庫のように寒く、汗をかいた身体は一瞬にしてひんやり。はじめは涼しい〜なんて思っていましたが、途中から外気温が恋しくなって縮こまっていました。何より、水が冷たすぎる。雪解け水のようで、非防水ローカットの自分は「ひぃ〜!つめて〜!」と・・・連日歩いた足には気持ちよくもありましたが。
トンネルを出た瞬間蒸し暑さが襲ってきましたが、子どもの頃の冒険のような気持ちで楽しめました。このあと、短いトンネルを抜けてひたすら欅平を目指します。
岩壁の一本道。もはやアート。
まじまじ見てしまいましたが、これを削るって、ほんと、ねえ。
無になる。サルが一匹横切る。アイス食べたい。
それにしても、景色がほとんど変わらないので結構長く感じます。誰もいないし。剱岳登ったり、展望を楽しんだり、雪渓や急登を歩いたりという日々だったので、この単調さがちょっと堪えました。鳥のBGMもあったりなかったり。
しかし、かっこよ。
鉄塔が多くなり始めたところで"欅平上部"に到着し、そのすぐ先に"水平歩道始・終点"という看板がありました。水平歩道が終わってしまった。欅平駅まで一気に下ります。
下っていくと"パノラマ展望台"があり、水平歩道方面に観光の人が入り込まないようにロープが張られていました。展望台は見下ろすのではなく、見上げる形で白馬方面の山々が見えるという感じ。特別展望がいいというわけではない・・・(個人的な感想。紅葉期とかは綺麗なのか?)
展望台からはほぼほぼ階段。
9時半頃、欅平駅に到着。もうちょっと余裕を持ってゴールするつもりでしたが、そうでもなかった。とりあえず汗だくのシャツだけ着替えて、炭酸を買って、切符を買う。欅平駅にはちょっとしたお土産も売っていました。
トロッコ電車ということだけ認識していましたが、これがものすごく面白かったです。1時間以上も風を浴びながら黒部を走り抜けるのがとっても爽やかで、炭酸買ってよかった。トンネルも多く、爽やと涼しいと寒いが交互にくる。夏休みなので家族連れが多く、半分を過ぎたあたりから人がドッと乗車。
後泊しようか悩んだ"黒薙温泉"。またいつか家族で来ようかな。
黒部のエメラルドグリーンの旅も終了。宇奈月温泉もすごく良さそうな温泉街でしたが、富山電鉄との乗り換えが割とタイトだったのでスルスル乗り換え。新黒部駅から新幹線に乗り、帰宅しました。
天気や雪溪の状態で毎年計画倒れになっていた"裏剱"。立山の、剱岳の深い部分に入り込んで、冒険心をくすぐられた山旅でした。今回は早月尾根を合わせてでしたが、剱岳などを入れなければ裏剱の縦走は特にピークを踏みません。だからこそ、道自体の面白さや黒部の歴史に思いを馳せられる縦走だと思います。人も少なく、落ち着いて歩けるのでぜひ◎
黒部峡谷トロッコ電車
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