2022.6.24
天気:曇り☁ → 晴れ☀
気温:20℃前後、湿原23℃前後
風:6〜8m/s
歩き人たかちです。
小屋番生活2回目のお休み。
気温の高い日が続き、そろそろアヤメ平周辺の厄介な残雪も消えただろうということで、鳩待峠経由で周回しました。
お昼近くから晴れる予報で、先に湿原を歩き鳩待峠へ。至仏山と燧ヶ岳に挟まれ、目線の先には新潟の山々。池塘に映る空に小さな花の楽園。尾瀬ヶ原とは違う空気の流れるアヤメ平はまさに、空に浮かぶ湿原でした。
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見晴-竜宮-牛首分岐-山の鼻-鳩待峠-中ノ原-横田代-アヤメ平-富士見田代-竜宮-見晴
▲コースタイム:7時間55分
▲歩行距離:21.4km
▲累積標高差:登り下り約650m
アヤメ平について
アヤメ平は標高1968mにある高層湿原で、「天上の楽園」と呼ばれています。東に燧ヶ岳、西に至仏山を望める展望抜群のコースです。
かつては湿原全体に立ち入ることができ、ボール遊びをする人たちの姿もあったとか。今では想像もできませんが、人が立ち入ったことで湿原は踏み荒らされ、現在は木道が敷かれて植生の復元作業中。50年以上経ちましたが、本来のアヤメ平にはまだ戻っていないとのこと。
アヤメ平への登山口は鳩待峠と富士見下。山頂からは竜宮、見晴、尾瀬沼に通じる登山道があり、全部で5コース。
今回は鳩待峠から登り、長沢新道を下山に利用しました。鳩待峠からは標高差400m弱、距離は6.3km、木道を中心に樹林帯を緩やかに登っていきます。中ノ原を過ぎ、横田代〜アヤメ平はとても気持ちのいい道で、時折眼下に尾瀬ヶ原。
長沢新道は竜宮へと通じ、富士見田代〜長沢頭までが木道、長沢頭〜長沢が岩場の急登、階段となっている4.2kmのコース。長沢頭までの木道は2021年に取り替え作業が行われ、スリップ防止のゴムが敷かれているため、残雪で濡れている下山利用でも問題ありませんでした。八木沢新道よりも整備されています。
八木沢新道は木道がほとんどない山道コースで、傾斜のある斜面は九十九折りに下ります。そのため、長沢新道よりも距離は長く5.7km。利用者も少なめでぬかるみあり。より山道を、より静かな登山を、という方はこちらを歩くようです。
尾瀬ヶ原よりも雪解けが遅く、今年は雪が多かったため6月中旬過ぎまでちょっと厄介な道となっていました。残雪期はピンクテープを頼りに歩きますが、迷いやすい箇所もところどころあるとのこと。また、残雪が消えても樹林帯の木道は湿気り気味なのでスリップ注意。鳩待峠〜横田代は滑りやすい箇所がところどころありました。
歩いた時季はチングルマ、イワカガミ、タテヤマリンドウが見頃で、ワタスゲはこれから。8月頃のキンコウカもおすすめとのこと。
曇り空の湿原。見晴-鳩待峠
*見晴-竜宮-牛首分岐-山の鼻-鳩待峠:CT3時間15分*
6時45分出発。今朝はどんより曇り空。アヤメ平は天気が良くないと、う〜ん・・・となってしまうので、先に鳩待峠へ向かいます。
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歩いているうちに頭上には青空がチラッチラッと。結果的に涼しいうちに湿原を歩けたので良かったか。日陰のない木道は溶けてしまいそうな暑さになり始めています。
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竜宮から先はまだワタスゲが少なく、ちょこちょこ揺れているのみ。
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ヒメシャクナゲが見頃。大きさも形も全く違いますが、小さくても葉っぱは立派にシャクナゲなところがなんとも可愛らしい。
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ズミ。バラ科リンゴ属の花で、ほんのり甘い香りが木道に漂います。
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雨が少なくて小さな池塘は干からびていたり。梅雨らしくない天気が続き、1日中雨が降っている日はほとんどありません。午後になるとゲリラ豪雨の梅雨の尾瀬。
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ツツジの存在感。
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逆さ燧には出逢えず。
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ヒツジグサも増えてきたかな。
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リュウキンカ。山の鼻近くには綺麗な白いミズバショウもまだ残っていたり。今年は霜にやられたものが少なく、例年よりも一週間ほど長く楽しめたようです。
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山の鼻に到着。一ヵ月ぶりの山の鼻。入山したときは残雪たっぷりでしたが、すっかり消えて緑が濃ゆい。
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ナツトウダイ
山小屋生活で、知らなかった花の名前をたくさん覚えました。詳しい人がそばにいるし、毎日観察するし。森があり、水があり、湿原がある尾瀬は、植生がとても豊かです。
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鳩待峠から出発した歩荷さんが続々と山の鼻へ下っていきます。本当にすごい仕事だなあ~と思うと同時に、歩荷さんのありがたさを肌で感じる日々。
入山したときは40~50kgくらいの荷物でしたが、身体が慣れてくると80〜120kg程の荷物を運んでくれるように・・・。スニーカーの人が多く、山用の靴を履いている人はほとんどいませんでした。そっちの方がいいのだろうか?コスパの問題?
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緑一色になった木道を登って登って、9時に鳩待峠に到着。大好きな鳩待峠の花豆アイスをいただきます。
尾瀬沼や大清水でも食べましたが、個人的には鳩待峠のが一番好き◎山の鼻の至仏山荘は系列が同じなので、アイスも同じです。
尾瀬学校の子たちがちょうど出発する頃で、わちゃわちゃしていました。金曜日にやっていることが多いようです。「こどもの来るところじゃないよ〜」とか「風邪引けばよかったー」と言いながら歩いていましたが、いつの日か尾瀬の美しさを思い出す日が来るといいですね。
尾瀬ヶ原だけだと思っていましたが、アヤメ平組もいるようで。また、ベンチに座っていると幼稚園児も到着。幼稚園児も尾瀬に来るのか〜と思いましたが、この時点で「もれちゃう!もれちゃう!」となっていて、先生もてんやわんや。トイレの少ない山は大変そうだ。
40分程ゆっくりして、鳩待峠が静かになった頃に出発。青空が見えつつもまだ雲は多め。アヤメ平どうかなー。
池塘、展望、お花畑。アヤメ平
*鳩待峠-中ノ原-横田代-アヤメ平:CT 2時間10分*
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鳩待峠の公衆トイレ前から登山道へ。広葉樹林の森を登っていきます。
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気持ちのいいブナ林。
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初めにぐっと上がったあとはほぼはぼ木道になり、ゆるゆると。ちょっと登って平坦、ちょっと登って平坦・・・といった感じ。
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土も乾き気味でぬかるもほぼなし。
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残雪が木道に被っている箇所はありませんでしたが、雪解けの木道はとても滑りやすくなっていました。平坦でも、ズルっといく。下り利用は結構滑りやすいかも。
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クマザサの繁る木道を進み、尾瀬学校の子たちを4グループほど抜かし"横田代"に到着。水芭蕉がチョロッと残っていました。
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お花もちらほら出てきます。
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振り返ると至仏山がどっしり構えていました。尾瀬ヶ原から見るのとはまた違う迫力がありますね。
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ちょっと樹林帯に入りつつ進む。
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チングルマが風にゆらゆら。蕾もまだありますが、早いものは花びらが落ちて綿毛の準備。チングルマは早いですね〜。
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すごい見られている・・・。映画泥棒みたいなイワカガミ。下を向いて咲くイワカガミですが、愉快な姿を発見。
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中原山を過ぎ、そろそろか。
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お、開けた。
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おお!!
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おおお!!!
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アヤメ平〜 ♪
雲を被りがちだった燧ヶ岳も顔を出し、新潟方面の山々も綺麗に見えました。大きめの池塘が美しく、広々とした高層湿原。
至仏山と燧ヶ岳をいつもよりも高い位置から眺めてなんか不思議。尾瀬だけど尾瀬ではない、そんな気分。
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ワタスゲはこれからで、このときはチングルマ、イワカガミ、タテヤマリンドウが咲き乱れていました。
青空も範囲を広げて眺めよし。最高に爽やかで、最高に気持ちが良くて、テラスで1時間以上のんびり。
尾瀬学校の子たちは富士見小屋の方で昼食らしく、ゾロゾロと通り過ぎていきました。富士見小屋は廃墟ですが、トイレがあります。
風が少し強いけど羽織るほどではなく、太陽をたっぷり浴びる。いや〜、気持ちがいい!
長沢新道。アヤメ平ー見晴
*アヤメ平-富士見田代-竜宮-見晴:CT 2時間30分*
風がさらに強くなってきたところでアヤメ平にさよなら。
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燧ヶ岳を見ながら富士見田代へ。
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新緑の斜面が美しい。
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木道を下って"富士見田代"に到着。小屋(トイレ)までは200m。
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ここの池塘も◎
ベンチがあり、燧ヶ岳を静かに鑑賞できます。こんな温泉があったらいいなあという眺め。
長沢新道を下ります。最後まで悩んでいましたが、八木沢新道に比べて1.5km短いのでこちらへ。
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下り始めると早速残雪。雪で倒れている枝を跨ぎながら進みます。残雪は数ヶ所木道に被っているくらいで特に支障なし。
長沢新道の木道は2021年に取り替えられている上に、滑り止めのゴムが敷かれていたので、下りの利用でも全く問題ありませんでした。
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はじめはクマザサ、そのうちダケカンバが多くなり、最後はブナ林という森歩き。
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土場
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下りはサクサクですが、登りだとちょっと単調かな。すれ違いは1人でした。
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長沢頭。ゴム敷きピカピカの木道はここまで。ここから傾斜が徐々に増していき、岩場の急登になります。
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コロコロ
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ゴロゴロ
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ゴツゴツ。見上げた写真。この辺りが一番急でした。
確かに急ではありますが、個人的にはそこまで下りづらいとも思わず。ドロドロよりはいい。晴れて全体的に乾いていたので滑ることもありませんでしたが、雨の日は要注意。
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階段もあり。夏の登り利用は暑いだろうな。
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再び傾斜は緩やかになっていき、ブナ林に突入。とても綺麗な森で、この先はミズバショウの群生地もあるので、熊の目撃情報もちょこちょこある場所。
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日陰のない尾瀬ヶ原は暑いですが、樹林帯はとても爽やかです。
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長沢
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ほぼ平坦になりミズバショウの群生地。ピーク時に見に来ましたが、とっても綺麗でおすすめ。至仏山をバックにミズバショウが咲き乱れます。
クマはミズバショウの実が小さい頃は山菜を食べ、大きくなると食べに下りてきます。6月下旬〜7月頃は湿原での目撃情報が増える時期。
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尾瀬ヶ原の木道と合流し、竜宮に到着。アヤメ平方面の木道の取り替え作業をしていました。群馬県は木道に力を入れています。
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暑い木道を歩いて見晴へ帰ります。福島県に入り木道はガッタガタに。いつもの道。
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いつもの景色。2回目の休みもなんとか晴れてくれて、念願のアヤメ平を無事に歩くことができました。
アヤメ平も時季によっていろいろなお花を見ることができ、なんといっても展望抜群の高層湿原が気持ちよい!個人的には尾瀬で歩きたい道ランキング上位だと感じました。
展望があってこその楽園という感じなので、天気のいい日を狙ってぜひ◎
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お休みをたっぷり満喫した締めくくりは綺麗な夕日。寝ても覚めてもこの自然の中にいることが、とても贅沢です。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
よろしければ、応援よろしくお願い致します。
コメント
これは質問と言っていいのかもしれません。私も山上にある田代を高層湿原と良く言ってしまうのですが、この用語は本来、下田代に見るように、ミズゴケの遺体が泥炭化して垂直方向に蓄積し、地下水位より高くなり、乾燥化してきた湿原を指すようで、尾瀬ヶ原は上田代に低層湿原、中田代に中間湿原、下田代に高層湿原が典型的に見られる、とか教えられた気がします。泥炭の堆積や乾燥化に伴いミズゴケも種類が順次交替しながら高くなっていき、最終的には樹木が生育して陸化する。そんなシナリオだったように思います。今の尾瀬ヶ原の姿が永遠に続くわけではないのですね。対してアヤメ平や苗場山、鬼怒沼山などを典型とする山上の緩傾斜地に発達する湿原は「傾斜湿原」と呼ぶ。個人的には「傾斜田代」がしっくり来るのですが。傾斜湿原は高層湿原のカテゴリーに入るのでしょうか? 学生時代、群馬大の堀先生などが尾瀬や野反池ほか県内の高層湿原にトレンチを掘って調査した結果を本にされていましたが、6から8mなどという数値だったように思います。ついでに花粉分析もしてみえたような? いかがなものでしょう。
アヤメ平は私が40数年前訪れた時、大変な労力をかけて復旧作業中でした。また試行錯誤の連続だったようで、種を播種したり、パッチ状に移植したりと、携わった方々は大変だったようです。回復には百年単位の時間がかかると言われましたが、現在はあの痛いたしい裸地は消えつつあるのでしょうか。
奥日光の戦場ヶ原が国道整備に伴い排水され、一気に乾燥化が進んで樹木が繁茂しているように、尾瀬ヶ原も鹿道による排水で乾燥化の進行が一気に加速、そんな心配を聞きました。