歩き人たかちです。
ずっとずっと歩きたかった信越トレイル。なかなか休みが取れず、計画だけして月日が経つと苗場山まで延伸されることになりました。
それならば苗場山まで道が繋がったら歩こうと思い、ようやく。天気の関係で結局旧区間と延伸区間を分けて歩きましたが、日本初のロングトレイルはどこまでも日本を感じられる潤った山脈と長閑な道で、最後に関田山脈を見ながら苗場山に登るのはとても感慨深くて。
平日とはいえ苗場山以外人はとても少なく、静寂のロングトレイル。静かな森歩きもいいけれど、たくさんの人に歩いてほしいと心から思った魅力たっぷりのトレイル。
斑尾高原〜森宮野原駅4泊5日、森宮野原駅〜苗場山(下山)2泊3日までの記録を個人的な印象と感想を交えてご紹介していきます。まずは情報編。
2022.10.20-10.22
1日目:斑尾高原-赤池テントサイト
2日目:赤池-桂池テントサイト
3日目:桂池-光ヶ丘高原キャンプ場
4日目:光ヶ丘高原-野々海高キャンプ場
5日目:野々海-森宮野原駅
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6日目:森宮野原駅-かたくりの宿
7日目:かたくりの宿-苗場山頂ヒュッテ
8日目:祓川登山口へ下山
信越トレイルについて
長野県と新潟県の県境である関田山脈。信越トレイルは、標高1,000m級の豪雪地帯を歩く"日本初の本格的なロングトレイル"です。歩く道としては古くから熊野古道やお遍路がありますが、ロングトレイル発祥の地アメリカに習い国とNPOが協定を結んだのは全国でも初めてのこと。管理団体の「信越トレイルクラブ」を発足し、民間のボランティアや地域の方々と連携しながら道の整備・維持、ハイカーへの手助けがされています。
関田山脈の約80kmのトレイルは2021年の秋に苗場山まで延伸され、総距離は約110kmに。テントサイトは2012年にオープンし、テント泊でのスルーハイクが可能になりました。信越トレイルクラブ加盟の宿では最寄り駅やトレイルへの送迎のサービスがあるため、宿を繋いで歩くことも可能です。
日本には無数の"峠道"があり、信州と越後を結ぶ峠道も16ほどありました。あらゆる歴史が紡がれ、幾多の人が行き交った交通の要所。峠道は、人と自然の関わりのひとつでもあります。
雪国の山を歩く関田山脈のセクション。そして、その麓の暮らしを見て、感じて、味わいながら歩く里山のセクション。美しい自然と文化、そして豊かな食。信越トレイルは、それらがギュッと詰まった日本ならではの美しいトレイルです。
信越トレイルHP
信越トレイルの構想段階から関わっていた執筆家の加藤則芳さんのインタビュー記事。
信越トレイルMAP
信越トレイルのマップは下記のオンラインストアやアウトドアショップ、ビジターセンターなどの施設で入手可能です。
[ マップの入手先 ]
◾︎ 信越トレイル各ビジターセンター
◾︎ TRAILS WEBストア
◾︎ハイカーズデポ(東京・ネット販売あり)
◾︎ 地図の専門店ぶよお堂(東京)
◾︎ WEST 上越店・三条店・新潟店・長岡店
◾︎津南町観光協会
◾︎ カモシカスポーツ本店(東京)・横浜店・松本店
◾︎ 銀座NAGANO
◾︎ みちのく潮風トレイル名取トレイルセンター(福島)
◾︎ いいやま湯竜温泉
◾︎ 道の駅花の駅・千曲川
*2022年10月時点の入手先
私は信越トレイルを歩いた知人にマップ1〜3と公式ガイドブック(どちらも旧版)を頂いていたため、延伸区間のマップ4と整備協力金(トレイルタグ。年度によりカラーが異なる)を信越トレイルのWEBストアで購入しました。
公式サイトにはGPXデータもあるため、「スーパー地形」や「ジオグラフィカ」などの地図アプリに落とし込むことも可能です。私は普段「スーパー地形」を利用しているため、予めダウンロードして紙地図とともに使用しました。
マップには地図だけでなく、セクションの概要や動植物などに関しての記載もあります。少々大きいため、地図の部分だけ切り取って持ち歩いてもいいも思います。
公式ガイドブックは必須ではありませんが、信越トレイルの歴史や各セクションの詳しい内容が記載されています。
斑尾高原から?苗場山から?
ロングトレイルにおいて「どちらから歩くのがいいのか」というのはよくある話題ですが、アクセスや日程を考慮して好きな方からでいいと思います。
私自身、「ロングトレイルで苗場山に登頂したい」という理由で斑尾高原からスタートしました。結果的にそれで良かったと感じていますが、同じ日程でも苗場山からスタートした方が、秋山郷の食や温泉をより楽しめたかなとも思いました(お店の営業時間などの関係で)。
[ 斑尾高原からの特徴 ]
◾︎ 後半のアップダウンが多くなるセクションで荷物が軽い(関田山脈)
◾︎ 進むにつれて山が深くなる(入り込む感じはいいけれど、エスケープルートは少なくなる)
◾︎ ラストに苗場山は達成感で溢れる
2日目の桂池まではなだらかなハイキングコースが多めなので、重い食料を持っての歩き出しにはとてもいいと思います。関田峠〜天水山の間はアップダウンが無数にあるため、その時点で食料がある程度減ることは大きなメリットだと感じました。
ただ、進むにつれて山は深くなるため、前半に比べるとエスケープルートは少なくなります。とはいえ、定期的に県道あるいは国道に出るため、何かトラブルがあればタクシーを呼ぶことは可能だと思います。
何より、ラストが苗場山というのは個人的にとても素敵だなと。それまで歩いてきた関田山脈を背に大きな苗場山に取り付き、広大な湿原に出たときは感無量。山頂のヒュッテに泊まり、美しい夕日と天の川を見つめながら信越トレイルを終えたのは最高でした。
[ 苗場山からの特徴 ]
◾︎ 後半はエスケープルート多め
◾︎ アップダウン区間は荷物が重い
◾︎ 森宮野原駅〜天水山へのロードと林道、万坂峠〜斑尾山へのスキー場の登りはダラダラと長い
苗場山からスタートする場合の一番のメリットは、"苗場山に天気を合わせられる"ことではないでしょうか。
1,000m前後の関田山脈に比べて苗場山の標高は2,145m。森林限界を越えるため、気象条件は一番は悪くなります。今回スルーハイクを断念したのも苗場山の天候が悪かったため(延伸区間はすべて雨、苗場山は雪予報でした)。苗場山は全体的に滑りやすい箇所が多く、特に小赤沢ルートの上部は急なドロドロの岩場が続くため、天気が悪いと足場が結構悪くなります(下りは要注意)。
関田山脈のアップダウン多め区間は食料パンパンの状態で歩くことになるので、ここは体力勝負。その代わり、疲労が溜まってくる後半になるにつれて道は非常に歩きやすく、エスケープルートも多くなるため万一トラブルがあっても対処しやすいです。
ただ、個人的に登りにしたくないと思ったのは、「森宮野原駅〜林道終点」のロードと林道(5.3km)、「万坂峠〜斑尾山」へのスキー場区間。どちらもダラダラと長い登りが嫌だなと(特にスキー場)。斑尾高原からスタートしても延伸区間の牧場へのロードはダラダラ登るので、それらも含めて楽しむロングトレイルという受け止め方が一番いいかなとは思いますが。
信越トレイルへのアクセス
苗場山まで延伸されたことにより、トレイルの起点の最寄り駅はともに新幹線の発着駅となりました。旧区間のスルーハイクの場合は飯山駅と森宮野原駅が同じ路線のため、マイカーでのアクセスでも回収が容易です。
*森宮野原駅では、連絡先と回収日を伝えれば車を数日駐車しても可能とのこと。(問い合わせ先:栄村振興公社)
斑尾高原
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斑尾高原へは、飯山駅から出ている「コミュニティバス 斑尾線」を利用。GWや連休などの特定日には「長電バス」による急行も出ていますが、始発はコミュニティバスの方が早いです。飯山駅の観光案内所前に券売機があり、事前に購入可能。
東京からの場合、始発の新幹線で8時半前に飯山駅に到着。斑尾高原へのバスにも余裕を持って乗り継ぐことができ、9時半頃スタートできます。
コミュニティバス 斑尾線
天水山(旧区間の起点)
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天水山〜森宮野原駅間は歩く人も多いと思いますが(苗場山まで延伸されたため余計に)、天水山を起点に歩き出す場合は森宮野原駅からタクシー利用になります。「栄村口」か「松之山口」から登りますが、天水山に一番近いのは「松之山口」。
飯山線の本数はそれほど多くないため、東京の場合は始発でお昼頃の到着になります。越後湯沢駅からバスも出ていますが、7時台のバスに間に合わなければこちらも到着はお昼頃(間に合えば8時過ぎに到着)。
苗場山への延伸区間を歩いたときは、長野駅まで夜行バスに乗り森宮野原駅へ向かいました(7時頃到着)。
南越後観光バス
苗場山
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苗場山へのアクセス方法は2つ。
◾︎ 越後湯沢駅からタクシー(祓川コース)
◾︎ 南越後観光バスで「元橋」(赤湯温泉コース)
紅葉期はドラゴンドラと田代ロープウェイが運行されますが、そこから神楽ヶ峰に通じる「田代コース」は2020年に廃道となりました。今年までこの情報を知らなかったのですが、信越トレイルの地図上にコースとして載っておらず(登山道の点線のみ)調べると廃道とのこと。紅葉期はロープウェイを利用して登る登山者も多かったと思いますが、手段が一つ減ってしまいました。
湯沢町登山情報
祓川コース
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祓川登山口or和田小屋までのアクセスはタクシー。利用するなら「雪国観光舎」がおすすめです。
期間限定で登山者専用の乗合タクシーが運行されています(2022年度は9月1日〜11月13日)。同日、同時間に予約者がいれば乗合でどんどん安くなる仕組み。1人の場合でも通常の半額近くの値段で利用できます。下山時に利用しましたが、祓川登山口〜越後湯沢駅まで¥4,000(通常¥7,000ちょっと)。
「予算が上限に達したら終了する場合がある」というものですが、10月21日利用時はまだ大丈夫でした。乗合タクシーの場合は「祓川登山口」までで、「和田小屋」発着で利用する場合は通常のタクシーになります。
*毎年行っているサービスなのかは不明なので要確認。田代コースが廃道となり始まったのでしょうか?
雪国観光舎 YAMAタクシー
赤湯コース
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赤湯コースの最寄りのバス停は「元橋」。越後湯沢駅から南越後観光バスでアクセスします。
赤湯コースは祓川コースとは違い、歩く人は少なく道もそこまで整備されていないようです。赤湯温泉が気になって下山で利用しようと考えていましたが、"粘土質の滑りやすい急坂が続く道"とのことでやめました。苗場山への一般登山道では一番歩き難い道のため、利用するなら登りがいいと思います。
苗場観光協会
各セクションのハイカー数と印象
斑尾高原〜苗場山の間にはセクションごとに1つ、全部で10のカウンターボックスがありハイカーの数を調査しています(年間のハイカー数だと思います)。通るときはカチッと。
[ 通過時のハイカー数 ]
◾︎ 毛無山カウンター(section2):874
◾︎ 桂池カウンター(section3):608
◾︎ 関田峠カウンター(section4):1437
◾︎ 牧峠カウンター(section5):315
◾︎ 天水山カウンター(section6):356
◾︎里山出合カウンター(section7):383
◾︎上郷小学校カウンター(section8):243
◾︎ 大赤沢カウンター(section9):305
◾︎苗場山カウンター(section10):320
カウンターボックスの確認を楽しみにしていましたが、結果セクション4の"関田峠"が断トツでした。地図上にも「美しいブナ林」と記載があり、信越トレイル随一のブナ林の見どころコースとなっています。「なべくら高原・森の家」が近いこともあり、ツアーなどでハイカー数が多いのではないかと。
関田山脈自体ブナが非常に多く、基本的にはブナ林の中を歩きます。地図上記載のブナ林は"推し"のブナ林として紹介されていますが、セクションごとに雰囲気は違うため、どの森もとても綺麗でした。個人的には天水山のブナ林が推しです。
section1[8.5km]
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斑尾高原-万坂峠ー袴岳ー赤池
万坂峠まではスキー場メインの道。万坂峠からようやく山を歩いている気分になりました。袴田湿原〜袴岳は非常に登りやすく、ブナとダケカンバの森が素敵な山越え。赤池もピクニック気分で休憩したくなるような気持ちのいい場所です。
section2[10.7km]
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赤池ー沼の原湿原ー希望湖ー毛無山ー涌井
アップダウンが少なく非常に緩やかな道のり。山道というよりハイキングコースで、一番歩きやすいセクションでした。沼の原湿原と希望湖は遊歩道で楽しむことができ、おすすめの寄り道トレイル。特に希望湖は美しく、ゆっくりまったり休憩が◎
section3[12.7km]
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涌井ー富倉峠ー黒岩山ー桂池ー仏ヶ峰登山口
桂池までは歩きやすい道が続きます。富倉峠への山道は"THE峠道"というな印象で、古き良き日本を感じます。桂池から仏ヶ峰登山口までは信越トレイル上で一番鬱蒼とした道。徐々にぬかるみも増えていき、ハイキングコースから山道へと変わりました。
section4[8.2km]
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仏ヶ峰登山口ー小沢峠ー鍋倉山ー関田峠
ブナ林がとても綺麗で、"山脈を歩いている感"が一番あったセクション。道路に出ることもなく、関田峠までひたすら山を歩きます。自分が歩いたときはガスでしたが、ところどころ眺望はいいはず。
section5[12.4km]
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関田峠ー牧峠ー宇津ノ谷峠ー幻の池ー伏野峠
細かいアップダウンが無数にあるコース。テント泊の場合は深坂峠まで歩くことになるので、コースタイムが長く体力勝負のセクション。ぬかるみも定期的にあり、滑りやすい山道が続きます。道は細めでブナを跨ぎ潜り進んでいく、マイナー低山を縦走している感じ。トレイルを歩くことを純粋に楽しめるセクション。
section6[12.8km]
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伏野峠ー須川峠ー野々海峠ー深坂峠ー天水山
セクション5からの続きで、同じく細かいアップダウンが連続します。道の様子やぬかるみもさほど変わりませんが、後半になるにつれて背の高いブナ林が多くなり気持ちよく歩けます。特に、天水山周辺のブナ林が◎
section7[7.2km]
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天水山ー里山出合ー森宮野原駅
天水山から下山道を下っていくと、最後のご褒美ブナ林が待っていました。ふかふかの歩きやすいブナトレイルが一番長く続いた印象です。林道区間は幅広・砂利道のようなものではなく、山道の延長で細くて長い小径といったもの。里山出合からは田園風景の中を気持ちよく森宮野原駅へ。
section8[17.2km]
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森宮野原駅-中子-妙法育成牧場-結東
山と山を繋ぐロード歩きメインのセクション。集落や農道、牧場脇を緩やかに歩きます。日本一といわれる河岸段丘を一段、また一段と上がり、結東集落に向けて一段下がる。段ごとに景色が変わり、地形を肌で感じる面白いロードでした。"苗場山麓ジオパーク"と重なるトレイルもあり、こちらもブナの美林。夏場は苦しいロード歩きかもしれませんが、気候のいい時期はとても爽やかな里山歩き。
section9[9.7km]
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結東-見倉-大赤沢-小赤沢
結東と見倉の集落を繋ぐ、味のある見倉大橋からスタート。山道とロードの割合が半々で、各集落を繋ぎながら歩くロングトレイル感の強いセクション。歴史と文化に触れ、ブナの美林に牧之の道。苗場山麓の食と温泉を楽しみながら、故人と古道に思いを馳せてゆっくり歩くのが最適なセクション。
section10[8.5km]
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小赤沢-苗場山山頂
いよいよ感のあるラスボス苗場山。完全に麓から登る道のりはとても歩きごたえがあります。3合目まではバリエーション豊かですが、2合目と3合目の間に広がるブナ林が美しいこと。小赤沢ルートは3合目から登る人がほとんどなので、静かな美林を独り占め。3合目からは苗場山の登山者とともに。登るにつれて急登、ドロドロ。しかし、待ち受ける高層湿原は感動そのもの・・・
[ 目的ごとのおすすめセクション ]
◾︎ 見事なブナ林ウォーク→ section3,4
◾︎ 関田山脈を感じる→ section 5,6
◾︎ 里山歩き→ section8,9
◾︎ 個人的に好きな場所→ 希望湖,関田峠,天水山周辺,秋山郷
セクションごとに雰囲気や空気感は異なり、「山・森・里」を隈なく楽しめました。日本のロングトレイルは長くなればなるほどロード歩きが多くなる印象ですが、信越トレイルは山に籠る縦走要素もあり、山と里のバランスがとても良いと感じました。宿の協力により送迎もしてくれるので、縦走といえど誰でも歩きやすいように整備されているところが◎
延伸区間により、テント泊の場合も里の恵みを味わうことができます(関田山脈をすべてテント泊の場合は途中麓に下りないので)。雪国特有のぬかるんだ山道に潤いのある森。植生が豊かで、美味しい食と癒しの温泉。「これぞ日本」というようなロングトレイルであり、各セクションそれぞれに魅力があります。
歩く季節
信越トレイルの推奨時期は、雪解け・新緑の6月中・下旬と紅葉の10月中・下旬。残雪期はアイゼンとルートファインディングが必須。
また、テント場の営業期間は6月中旬〜10月下旬まで。苗場山は7月上旬まで残雪の可能性があり、10月に入るといつ雪が降ってもおかしくありません。関田山脈と苗場山は1,000mの標高差があるため、新緑の時期と秋で季節を変えて歩くのもいいなと感じました。
しかし、今回は万人からおすすめされた秋の信越トレイルを歩きました。基本的にブナ林のため、紅葉がとても美しいです。とはいえ、ピークは10月下旬頃なので一歩手前の時期に歩きました。
各テントサイトの営業期間と苗場山の時期を考慮して10月中旬頃に。苗場山の山頂の紅葉はすでに終わっている時期ですが、関田山脈の気温(暑さ)も考慮して。
1,000m前後の関田山脈の夏は非常に暑く、水場の少ないセクションもあるため推奨はされていません。歩いた日程の中で1日だけ20℃近くまで気温が上がりましたが、それでも暑かったです。アブ・ブヨ・蚊など痒い系の虫も夏は多いため、秋は人気の季節となっています。
テントサイト
今回は、無理なく歩ける推奨日程の4泊5日で歩きました。テント泊で繋ぐ場合はテントサイトの関係上4泊5日がいいと感じましたが、斑尾高原に前泊する場合は3泊4日でも(飯山駅からの朝発だとスタートは9:30頃)。日数は人それぞれですが、斑尾高原周辺には素敵な寄り道トレイルもあるので、ゆっくり自然を楽しむのがおすすめです。
テントサイトは予約制で、信越トレイルのWEBストアから予約と支払いが可能。後払いも可能なようですが、小さいサイトもあるため混雑期は特に事前予約がいいと思います(サイトで予約の残数は確認できます)。
予約はキャンセルしても返金されないシステムですが、年内に限り日程を変更することが可能。翌年に繰り越すことはできないため、秋などは要注意。歩いている途中でテントサイトの場所を変更する場合は、事務局に連絡するれば対応してくれるそうです。
思っていたよりも長く歩けるかもしれないし、急に調子が悪くなるかもしれない。天気のこともある。自然に合わせて動くアウトドアで「予約」は正直あまり好きではないですが、5〜10張程度の小さめのテントサイトもあるため致し方ないのかなと。
[ 利用したテントサイト・宿 ]
テントサイト・宿 | 料金・予約 | 営業期間 | 水場 |
赤池テントサイト (10張) |
原則協会金 ¥1,000 信越トレイルWEBストア |
6月下旬〜10月下旬 | あり(浄水必須) |
桂池テントサイト (5張) |
¥1,000 信越トレイルWEBストア |
6月下旬〜10月下旬 | サイトから5分程の場所に 「太郎清水」の湧水あり |
光ヶ丘高原キャン場 (20張) |
¥2,000 利用料利用料¥1,000 テント1張り¥1,000 |
6月下旬〜10月下旬 (2022年度は6月25〜10月23日。 営業終了が一番早かったです) |
炊事棟の水道 (一応浄水しました) |
野々海高原キャンプ場 (20張) |
¥1,000 信越トレイルWEBストア |
7月下旬〜10月下旬 | 炊事棟の水は沢水の貯水。 近くの沢でも汲めます。 *ともに浄水必須 |
かたくりの宿 (テント泊) |
¥1,000 事前予約・当日支払い |
6月〜10月 | 水道水 (そのまま飲用可) |
苗場山頂ヒュッテ | 素泊まり:¥7,000 1泊1食:¥9,000 1泊2食:¥11,000 お弁当:¥1,000(おにぎり2個¥800) |
6月〜10月下旬 (2022年度は6月1日〜10月25日) |
なし 宿でペットボトル購入 (コースによって沢水) *ペットボトルは500ml¥350 |
[ その他テントサイト・宿 ]
◾︎ 越後妻有大厳寺高原キャンプ場
◾︎ 菱ヶ岳キャンプ場
◾︎ なべくら高原・森の家
◾︎ 吉楽旅館(森宮野原駅近く)
◾︎ 小赤沢周辺の宿(苗場山の麓)
なべくら高原は信越トレイルクラブの事務所であるので泊まってみたかった気持ちもあります。スルーハイクの場合は、森宮野原駅近くに1軒宿あり。食料の補給ポイントにもなる場所で、駅の近くにはヤマザキYショップ朝日屋、道の駅さかえ、もう少し歩けばファミリーマートがあります。
赤池テントサイト(セクション1)
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赤池の駐車場から200mの位置にある10張程度のテントサイト。
トイレは水洗で綺麗です。建物の外に蛇口があり、「飲用不可」となっていますが浄水すれば飲用可。
建物は林業の事務所となっており中には入れませんが、2階のテラスは使用可能。赤池を見ながら休むことができます。雨の日の休憩スポットとしてありがたい場所。
桂池テントサイト(セクション3)
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桂池から一段高い場所にあるテントサイト。小屋の中にはテーブルとイスがあり、雨の日は小屋の中にテントを張ることも可能。1人用のテントを詰めて3張くらい張れそうな広さでした。
近くには湧水の"太郎清水"がありますが、雨の少ない時期は涸れている可能性もあるためトレイルエンジェルの方による水が置かれています(補充が間に合わない場合もありますし、周辺の水場利用を優先)
トイレは汲み取り式でしたが、臭いもほとんどせず綺麗に清掃されていました。トイレットペーパーの予備も十分。
光ヶ原高原キャンプ場(セクション4)
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宿泊施設の光原荘は2021年で営業終了。素泊まり¥2,350だったので泊まろうと思っていましたが、まさか営業終了だとは・・・残念。シャワーの施設なども使えません。
フリーサイトはA,B,Cの3箇所。バンガローもあるキャンプ場だったので、広々していて気持ちがいいです。
トイレは綺麗な水洗。水は炊事棟で確保できますが、そのまま飲用できるかは不明。念の為、浄水して利用しました。
トレイル上のテントサイトで一番景色の良かった場所。駐車場からも見えますが、展望台からの火打山・妙高山が抜群です◎
ブナ林に囲まれた場所であり、キャンプ場内にもブナの実がたくさん落ちています。そのため、クマの出没には要注意。
翌朝、夜明け前にサイト横のブナ林でガサガサと大きな動物が動く音が・・・おそらくクマだと思います。関田峠周辺には綺麗なブナ林があるので、キャンプ場に出てきてもおかしくないなという環境です(トレイル上でクマに遭遇。関田山脈には糞もたくさんありました)。
野々海高原キャンプ場(セクション6)
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深坂峠の分岐からアプローチトレイルで10〜15分。静かな湿原横にあるキャンプ場です。炊事棟と簡易トイレが一つ。
サイトは斜面に区画されています。
炊事棟の水は沢水をタンクに貯めたもの。煮沸・浄水で利用可能ですが、周辺には沢があるので新鮮な沢水を汲みました。
水場
赤池テントサイト(セクション1)
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赤池の駐車場にあるトレイ脇の水道。塩素処理がされていないため、浄水必須。
沼ノ原湿原のトイレ(セクション2)
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こちらも同じく浄水必須。
涌井の湧水(セクション2)
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毛無山と涌井集落の間にある林道脇の湧水。水量豊富で涸れることはない安心の水場。冷たくて美味しいです。
信越トレイルマークとピンクテープがありますが、気が付かずに通り過ぎてしまう人も多いようで。水の音はしっかり聞こえます。
太郎清水(セクション3)
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桂池テントサイトから300mほど車道を歩いたことろ(ルート上)。水量は細めで渇水期は涸れることがあるため要事前確認。溜まった水を利用する場合は浄水必須。テントサイトから仏ヶ峰方面に少し歩けば沢もあります。最終手段は桂池の水。
桂池〜仏ヶ峰登山口の沢(セクション3)
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桂池テントサイト〜仏ヶ峰登山口までの間には3箇所くらい沢があります。天水山方面からの場合は途中の沢で汲んだ方が効率的。
とん平サイト周辺(セクション3)
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仏ヶ峰登山口から15〜20程下った場所にあるスキー場の施設。施設脇に「おさよの滝」付近から引いている湧水「おさよの涙」があります。
管理期間を過ぎてスキーシーズンの準備に入る頃に水場は撤去されるようですが、スキー場施設のトイレの水道は使用可能。テントサイトから小沢峠に向かうアプローチトレイルにも水量の多い沢あり。
茶屋池ハウス(セクション4)
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関田峠から光ヶ丘高原とは反対方向に下った場所にある休憩所のトイレ。「飲用不可」となっていますが、沢水なので浄水すれば可能。関田峠手前からアプローチトレイルで寄ることができ、関田峠までは県道を歩きます。
光ヶ丘高原キャンプ場(セクション4)
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炊事棟の水道。そのまま飲用できるかは不明なので、念の為浄水しました。
牧ノ小池(セクション5)
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浄水必須。緊急時に。
牧峠近くの道路脇の湧水(セクション5)
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牧峠から長野県側に15分程下った場所にある湧水。関田峠〜野々海峠間の貴重な水場で、「トレイル沿線上で一番美味しい」という噂です。
宇津ノ俣峠(セクション5)
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長野県側にアプローチトレイルを10分程下った場所に沢があります。このセクションの貴重な水場。
幻の池(セクション5)
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緊急時。浄水必須。池には近づけますが、周辺はぬかるんでいます。
野々海高原キャンプ場周辺の沢(セクション6)
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野々海峠からキャンプ場へ向かう舗装道脇の沢。水量が一定で汲みやすい。
深坂峠からアプローチトレイルでキャンプ場へ向かう途中にも、湿原手前に沢があります。私はここで汲みました。この沢は非常に浅く、渇水時は給水困難。シェラカップなど汲むものがあった方がいいです。キャンプ場の水道からも水は出ますが、沢水を貯めたもののようなので沢で汲むほうが新鮮です。
*太郎清水や野々海池周辺は特に、6月上旬頃までは水場が雪に埋もれている可能性があります。残雪も利用可。また、どの時期も里に近いエリアでは上流に田畑があると農薬混入の恐れもあるので要注意。
使用した装備
信越トレイルでの必須アイテムは"浄水器"。テント泊なら絶対必要になります。浄水なしで利用できる水場は少なく、テント泊ではなくても給水が多くなる夏場は特に持参した方がいいです。
使用しているソーヤーミニ。「スクイーズ」に比べると浄水スピードは劣りますが、コンパクトさが気に入っています。
ソフトボトル型では、"浄水スピードが早い"で人気の「KATADYN BeFree」がいいと思います。0.6Lと1Lがあり、サイドやショルダーポケット、パッキング状況で選択可能。
斑尾高原から離れるほどトレイが少なくなるので、心配な場合は携帯トイレを。特に、関田峠〜野々海高原キャンプ場の間はトイレがないので要注意(コースタイムは8〜9時間)。
個人的に「あったらいいな」と思ったのは、トレッキングポール。信越トレイルは豪雪地帯特有の粘土質で、特別急坂ではなくても非常に滑りやすいです。雨、雨上がりはもちろんですが、秋は落ち葉も滑る要因になります。
トレイル中、転ばない程度のズルっというのは何度も、盛大に尻餅をついたのは3回ほど。打ちどころが悪い(尾骶骨など)、膝を変な方向に曲げて痛めてしまう、手をついた衝撃で手首を痛めてしまう…などの可能性あり。
[ 身につけていたもの ]
◾︎ 化繊タンクトップアンダー
◾︎ DWパンツ(山と道)
◾︎ ウールソックス(ハイカートラッシュ)
◾︎ ローカットシューズ(アルトラ)
気温は終始10〜15℃くらいで、個人的には登りやアップダウンではまだまだ汗ばむ気候。2日目は気温が下がり7〜9℃、3日目は北風が3〜4mあり体感温度はさらに下がりましたが、動いていれば半袖とアームカバーでちょうどよく歩いていました。ただ、晴れていなければ休憩時は肌寒い。4日目は気温が高く18℃。途中雨が降りましたが、蒸し暑かったです。
◾︎ 防寒着(ウィンドシェル,化繊ジャケット,ウール腹巻き,薄手ウールタイツ)
◾︎ レインウェア上下
◾︎ 傘
◾︎ シュラフ(3シーズン)
◾︎ インナーシーツ(ちょい足し防寒)
◾︎ テント(シングルウォール)
◾︎ マット
◾︎ 食料・行動食4泊5日分
◾︎ クッカー・火器類(テントサイトは基本芝生のためガスバーナー使用)
◾︎ 日用品
◾︎ エマージェンシー
◾︎ 浄水器(ソーヤーミニ)
朝晩の気温は5〜8℃、テント内は7〜10℃、一番暖かくて14℃ほど。気温差はありましたが、化繊ジャケットはほぼ使わず。寝るときはウールの腹巻きとタイツで事足りました。
シュラフは3シーズン用で、こちらもちょい足し防寒としてモンベルの「シルクインナーシーツ」を使用。薄手のインナーシーツですが、もしかしたら寒いかも…というときに重宝します。
夏のような滝汗にはならないので、行動時の着替えは持ちませんでした。ウールの長袖は就寝用(予備でもあり、帰宅時の着替えにも)。靴下は予備で1足持ち、行動時と就寝時で使い分けていました。
ぬかるみが多いので、靴は防水だと便利です。破れにより防水性を失ったアルトラはよく浸水しました。秋は濡れたものが渇きにくいし、日本海側の山脈なので天気が難しい。
ショーツも予備で1枚。おりものシートを使い、それを毎日替えて使用。ウール素材なら化繊のような痒みもなく、履き続けても気になりません。
まとめ
信越トレイルの公式HPには、トレイルに関することがとても詳細に紹介されています。準備はHPだけでも十分だと思いますが、飯山や秋山郷に関する歴史や文化の本などを読むと、より楽しめると思います。
関田山脈の4泊5日、そして延伸区間の2泊3日について、これから少しずつ紹介させていただきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
よろしければ、応援よろしくお願い致します。
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