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ニュージーランドを縦断する3000kmのロングトレイル「テ・アラロア(Te Araroa)」とは?歩き終わって思うこと

Te Araroa

歩き人たかちです。

はじめて歩いたスペインのロングトレイル「サンティアゴ巡礼路」から10年。「テ・アラロア」の存在を知ってから10年。1つ夢を叶えました。

南島 / リッチモンド山脈

2023年12月2日〜2024年4月5日の4ヶ月、3028kmの歩き旅。過酷で美しいニュージーランドのロングトレイル「テ・アラロア / Te Araroa」について、これから少しずつ発信していこうと思います。

[ これまで歩いたロングトレイル ]

◾︎ スペイン「サンティアゴ巡礼路」
◾︎ 熊野古道(伊勢路/中辺路/小辺路/大峯奥駈道←マダニ被害により持教の宿で下山)
◾︎ 北根室ランチウェイ
◾︎ 京都一周トレイル
◾︎ 四国お遍路
◾︎ 霧が峰・美ヶ原中央分水嶺トレイル
◾︎ 信越トレイル(斑尾〜苗場山)

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ロングトレイルとは

「ロングトレイル」あるいは「ロングディスタンスハイキング」とは、一定の期間をかけて自然や街を繋ぎ歩くアメリカ発祥のアウトドアです。距離や期間はさまざまですが、ピークを目的とする"垂直思考"の登山とは違い、ロングトレイルは"水平思考"。

衣食住、すべてをザックに詰め込んで歩き続ける。「食う・寝る・歩く」を繰り返す究極にシンプルな生活。いつ、どこにいるかはわからない。今日の寝床もわからない。計画も立てず、成り行きに任せて気ままに歩く。これがロングトレイルの魅力の一つであり、登山とは異なる楽しみ方。

また、自然と街を繋いで歩くロングトレイルでは"人と自然の営み・暮らし"を垣間見ることができます。里山が自然の中に入り込んだ原点である自分にとってそれは醍醐味であり、ロングトレイルを歩き続ける理由の一つ。

アメリカの3大トレイル「PCT(Pacific Crest Trail」「CDT(Continental Divide Trail)」「AT(Apparachian Trail)」をはじめ、スペインの「サンティアゴ巡礼路」やスイスの「ツールドモンブラン」、スウェーデンの「クングスレーデン」など、短いものから長いものまで世界にはたくさんのロングトレイルが存在します。

日本にはお遍路や熊野古道、東海道自然歩道など古くから続く道があり、現在はそれらもロングトレイルとして紹介されています。"ロングトレイル"としてつくられた道には「みちのく潮風トレイル」「信越トレイル」「あまとみトレイル」など。残念ながら閉鎖されたトレイルもありますが(北根室ランチウェイは整備の方々の高齢化により閉鎖)、現在「Japan Trail」という1万kmに及ぶ壮大なロングトレイル構想が進んでいます。

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Japan Trailに関して

JAPAN TRAIL
JAPAN TRAIL(ジャパン トレイル)構想とは、日本を沖縄から北海道までひとつにつなげる約10,000キロのトレイル ルートを創設することです。みんなでこの道を利用することで、日本を元気にしたいと考えています。

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LONG DISTANCE HIKING | TRAILS STORE(トレイルズ ストア)
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。

ロングトレイルのバイブルとして多くのハイカーに支持される「LONG DISTANCE HIKING」。この一冊の中にロングトレイルの世界が詰まっています!

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「テ・アラロア / Te Araroa 」とは

「テ・アラロア / Te Araroa 」とは、ニュージーランドを南北に縦断する全長3000kmのロングトレイル。マオリ語で「 Te = 長い 」「 Araroa = 小道 」を意味し、北島のCape Reingaから南島のBluffを繋いでいます。

4ヶ月、3000kmの全記録。若干のコースアレンジあり

「Te Araroa」は「 TA(ティー・エー) 」と略され、TAを歩くハイカーのことを「 TA Walker 」「 TA Hiker 」と呼びます。現地では「 TA Walker 」が一般的でした。また、ロングトレイルのことも「Long pathway」と言う方が多かったです。

ちなみに、英語で発音するときは「ティ・アラロア」。「テ」ではなく「ティ」で発音します。

テ・アラロアは2011年12月に開通した比較的新しいロングトレイル。例えば、アメリカの「PCT」は90年以上の歴史があります。まだ10年ちょっとの道で、私有地問題による大幅なコース変更や自然災害による迂回などで毎年距離が変わります。今シーズンは3028kmでした。

「土地所有者からコース変更を要求されているため、代わりの道を検討中」とトレイルノート(TA公式アプリ)に記載されている区間もあり、道が完全に定まるのはまだ先になりそうです。

今シーズンは北島1715km、南島1313km。地図を見た感じは南島の方が長そうですが、実際は北島の方が400kmほど長い。北島はロード、牧場、街が多く、南島は国立公園のセクションも多い山岳地帯。海、山、森、川、泥沼、湿地帯、藪漕ぎ、火山帯、牧場、ロード、街・・・大自然はもちろん、ニュージーランドという一国をを味わい尽くせます。

テ・アラロアの詳しい情報は公式サイトをご覧ください。ガイドブックは一応ありますが、正直不要かと。そもそも手に入れ難い、というか高いです(Amazonで8,000円弱)。

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なぜ「テ・アラロア」を選んだか

日本と同じように四季がある国の大自然を見たかった

日本と同じような国土、同じように四季があるニュージーランドに興味を抱き、学生の頃一度訪れました。北から南へ約2週間のバス旅。トンガリロクロッシングやマウントクックのトレッキングをしながら、ウェリントンやネルソン、クライストチャーチ、テカポ、クイーンズタウンなどの主要都市を繋いだ旅でした。

一本の道で繋いだらどうなるのだろう

スペインの「サンティアゴ巡礼路」を歩いたあと「テ・アラロア」の存在を知りましたが、そのときは開通してまだ2年ほど。情報が全然なく、わかるのは"ニュージーランドを縦断する3000kmの道"ということだけ。

とりあえずニュージーランドに行ってみたいという思いで一度訪れて、日本とは違う、スペインともまた違う壮大な自然を体感しました。「この風景の中を歩くのかなあ」そんな思いでバスに揺られ、いつか必ず…と心に決めました。

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「テ・アラロア」の心構え

「テ・アラロア」の率直な感想は・・・

思っていた以上にハードだった

アップダウン、渡渉、ドロドロ、整備があまりされていない・・・歩く前からわかっていたことですが、実際に歩いてみるとそれはなかなか過酷な道のりでした。日本との違いを実感した日々。テ・アラロアは至るところがはちゃめちゃだった。

◾︎ 「道がない」「迷子」は日常茶飯事
◾︎ ガレ・ザレ場では浮石・落石だらけ(ロープや鎖はない)
◾︎ 無理矢理すぎ!という急坂いっぱい
◾︎ 雨が降ると増水して歩けなくなる
◾︎ 泥は友達
◾︎ 足は基本的に濡れている
◾︎ 藪漕ぎ・その他で常に傷だらけ

◾︎ サンドフライで休めないし(主に南島)とにかく痒い
◾︎ ネズミがテントに訪問してくるから寝られない(落ち着かない)

北島 / タラルア山脈

できる限り自然のまま、ありのままの状態が残されているニュージーランドのトレイルでは、大変なこともたくさんありました。歩き慣れていないこともあり、日本の登山とは違う筋肉が疲労したり。嫌になって途中で帰ってしまうハイカーもいます。

「もう整備してないよ」の看板…なぜ?

コースになっているにも関わらず「このトラックはもうDOC(ニュージーランドの環境保全省)によって整備されていません」という看板が置かれ、藪漕ぎになっていたり。なんで!?とツッコミたくなりますが、それがニュージーランド。GPSがないとすぐ迷子になります。

こんちくしょー!と文句を垂れたり悪態をついたこともたくさんありました。でも、ありのままの自然に分け入るとはそういうこと。日本ではできないような経験をたくさんして、振り返ればとても楽しかった。
南島 / リッチモンド山脈

過酷なトレイルですが、過酷さを忘れさせてくれるほどの大自然がありました。ニュージーランドの人たちは本当に温かくて、何度も心を救われました。テ・アラロアは、過酷で美しい最高にワイルドなロングトレイルです。

PCTやCDTを歩いたハイカーも多くいて、どちらがハードか聞くと「TAの方がキツい」「TAはなんか違う」との答え。感じ方は人それぞれですが、PCTは特に道が綺麗とのことで、はちゃめちゃな道や無理矢理な急坂が多いTAの方がハードだと感じるようです。

ハイカーズデポの土屋さんとお話したとき「旅好き(バックパッカー好き)はPCT、山好きはTAの傾向がある」と仰っていました。自分は山好きで、ニュージーランドの山にワクワクしていました。しかし、山だなんだ考える以上にとっても刺激的です。

はちゃめちゃこそテ・アラロアである

TAハイカーは文句を垂れながらも「これぞTAだ!」と、はちゃめちゃ具合を楽しんでいます。泣きたくなるなるかもしれない、叫びたくなるかもしれない、帰りたくなるかもしれない。そんな感情も全部楽しむ心構えで!

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グレート・ウォーク(Grate Walk)とは別世界

ニュージーランドの中でも特に美しいとされる山域や海域にある"グレート・ウォーク / Grate Walk"。Hutやテントサイトはすべて予約制で、一番有名で人気のある「ミルフォードトラック」は人数制限もされています。世界中から人が訪れるグレート・ウォークは整備が隅々まで行き届き、とてつもなく歩きやすい。グレート・ウォークのイメージでテ・アラロアに挑むと、こてんぱにやられます。全く別世界です。

南島 / アーサーズパス国立公園

グレート・ウォーク以外にも人気のトラック、多くの人が歩くトラック、地元の人たちが日常的に歩くトラックはたくさんあります。そのようなトラックは基本的に歩きやすかったです。

それ以外のTAハイカー以外歩かないだろ…というようなトラック、TAのためにつくられた繋ぎの道、交通量の多いハイウェイを避けるための道などが特にはちゃめちゃ。特に北島。南島は国立公園のセクションも多いため、北島の整備されていない道よりはマシでした。ただ、サインが乏しい場所は多いので迷子にはよくなっていました。

いずれにせよ、学生の頃に見たニュージーランドとは違う、新しいニュージーランドを知りました。

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テ・アラロアを終えて思うこと

テ・アラロアに関してあれこれ記す前に、歩き終えた直後の気持ちを残しておこうと思います。

4ヶ月の歳月をかけてニュージーランドという国を知った3000kmの経験は、間違いなく人生の宝物になりました。学生の頃のように「ニュージーランドは美しい」だけで終わらなかったところがよかった。それはきっと"ありのままの自然に触れた"ということだから。自然は暑くて、寒くて、痛くて、痒くて、臭い。そして、美しい。

南島 / 究極の泥山 LONGWOOD FOREST

ニュージーランドは泥山こそ美しい

私の3000kmの結論はこれでした。泥の山は水分が多いので、瑞々しくて鮮やかな苔が本当に美しかったです。屋久島のようだけど、屋久島とはまた少し違う。でも、膝あるいはそれ以上埋まるような泥・泥沼が20kmくらい続くトレイルはなかなかの歩きが堪え…

テ・アラロアは過酷で美しいトレイルでした。ニュージーランドの自然、壮大でとても素敵でした。それと同時に思ったことは・・・

自分は日本の自然が好きだ

歩きながら、自分がこれまで口にしていた「自然が好き」という言葉に疑問を持ちました。その一文の前には"日本の"という言葉が隠れているのではないかと。

テ・アラロアがつまらなかったわけではありません。めちゃくちゃ楽しかったし、ニュージーランド大好きです。でも、期待していた以上に稜線歩きや山頂に登る機会が少なかった。川沿いを歩いて山を抜ける(山を見て歩く)パターンに途中で飽きてしまい、自分の中の空気の入れ替えが必要だと感じたのも事実。そのため、一度大きくコースを逸れました。

山は見て歩くのではなく登りたい

以前、登山家の方に「日本のように、稜線を歩いてピークをいくつも繋げられる山は世界的に珍しい」とお聞きしました。山が多いニュージーランドでも、日本のような稜線歩きができる山、登頂できる山は確かに少ない。山頂に寄り道できるなら…と地図を見ても、道がある山がなかなかない。

ニュージーランドではトレッキングのことを「Tramping(トランピング)」といいます。日本の登山のように登頂を目指すのではなく、自然の中をゆっくり歩くことを楽しむのがニュージーランド流。

それはそれでとても楽しいです。鳥が多く、森歩きはとても素敵でした。しかし、全部それだとモヤモヤする。なぜなら、山頂で浴びる風の気持ちよさを知っているから。山頂から眺める山並みの美しさを知っているから。稜線歩きの爽快さを知っているから・・・登山文化が強い日本人ならではの感覚かもしれません。

そして、自分は日本の自然が好きすぎるのだと思います。花の多さは言うまでもなく日本の宝。広葉樹の新緑に圧巻の紅葉。植生の豊かさが「二十四節気七十二候」という、日本の繊細な四季の移ろいをつくりだしていることに納得しました。日本は、地球のとてつもなく絶妙な位置にある国なのだと実感。そして、食が本当に豊かです。47都道府県、それぞれに味があるのは奇跡なのかもしれない。温泉然り、お祭りなどの伝統文化然り…

世界を見るのは面白い。歩きたい世界のロングトレイルは他にもありますが、それ以上に日本をじっくり見たい、感じたい、歩きたいと改めて思いました。世界を知って日本を知る。10年間日本の自然を見てきた今だからこそ、心からそう思ったのかもしれません。

たくさんのハイカー、トレイルエンジェル、ニュージーランドの人々に出逢い、人生の宝物がまた一つ増えた同時に、自分の原点を振り返ることもできました。自分にとって大切なもの、自分が大事にしたいと思うこと。それにより目を向けて、寄り添っていけたらと思います。

テ・アラロア、ニュージーランド、最高!

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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コメント

  1. おかえりなさい!お疲れ様でした!

    名前は聞いたことありましたが、そんなにワイルドなところだったのですね。
    ニュージーランドは長い期間では難しいにしてもセクションで行けたらなぁと思います。

    • プッチ様

      ありがとうございます!あと少しだけニュージーランドに滞在しますが、晴れの日がほとんどなくなって日本の春が恋しいです…

      そうですね、なかなかハードで体力があるうちにスルーハイクしてよかったと思いました。南島は特にセクションハイクのハイカーも多かったです!個人的なおすすめセクションやワーホリで滞在中の方に聞いたおすすめトラックなどについてもご紹介できればと思っているので、ぜひ参考にしてください!

  2. たかちさんおかえりなさい!
    お疲れ様でした。
    今日は18日なので今頃飛行機ですかね。
    インスタのストーリーで時々拝見しておりましたがご帰国を待ち侘びておりました。
    今回は一体どんなお話がきけるのか
    いまからとても楽しみです。
    次ページはまだ読んでおりません。
    美味しいコーヒーを淹れてゆっくりじっくり読ませていただきます。

    • るルル様

      コメントありがとうございます!
      無事に帰国致しました^^

      とても嬉しいお言葉ありがとうございます!
      テ・アラロアの記録は少し先になるかもしれませんが、いろいろなことがあった海外トレイルを珈琲とともにお楽しみください(面白いかはわかりません!笑)。

      今後ともよろしくお願い致します!

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