2020.8.18
歩き人たかちです(@takachi_aiina)
2日目:薬師峠キャンプ場 ー 黒部五郎岳 -黒部五郎小舎
★3日目:黒部五郎小舎 ー 双六岳 ー 槍ヶ岳
4日目:槍ヶ岳 ー 大キレット ー 北穂高岳
5日目:北穂高岳 ー 奥穂高岳 ー 上高地
縦走3日目。昨日は「黒部五郎岳」に登頂し、不思議の国のような「黒部五郎カール」を抜けて黒部五郎小舎でテント泊。
\ 2日目「黒部五郎岳・黒部五郎カール」はこちら /
今日は、双六岳に登頂後「西鎌尾根」を歩いて槍ヶ岳へ。常念岳から「東鎌尾根」を歩いてくるKさんと槍ヶ岳で合流します。
黒部五郎小舎の水場で2Lのプラティパスを破損する失態をしましたが、今日も今日とていろいろ失敗。なんとか槍ヶ岳まで辿り着けました・・・
黒部五郎小舎 ー 三俣蓮華岳分岐 ー 双六岳 ー 双六小屋 ー 樅沢岳 ー 左俣乗越 ー 千丈乗越 ー 槍ヶ岳山荘 ー ▲槍ヶ岳 ー 槍ヶ岳山荘
▲ コースタイム:10時間25分
▲ 歩行距離:約12km
▲ 累積標高差:+1,690m/-955m
「黒部五郎岳〜双六岳〜西鎌尾根」コース概要
黒部五郎小舎 - 双六岳
黒部五郎小舎から稜線に出るまでは岩場の急登。稜線に上がり、さらにハイマツ帯を登っていくと、三俣蓮華岳と双六岳との分岐に到着。
双六岳までは、多少の岩場を交えながら、なだらかな稜線歩き多めで進みます。最後に斜面を登っていくと、山頂からの双六岳名物"滑走路"。槍ヶ岳に向かって一直線に伸びる道は爽快そのもの。
双六岳から双六小屋への下山は急な岩場なので、足元には要注意。
西鎌尾根
双六小屋からガレ・ザレの坂を上がり、30分ほどで「樅沢岳」。山頂からは西鎌尾根が綺麗に見えて、縦走路に気分が上がります。
アップダウンの道のりですが、前半は比較的歩きやすい道が続き、高山植物が咲き乱れています。槍ヶ岳に少しずつ近づく稜線漫歩は格別。
「左俣乗越」への下りはザレた滑りやすい斜面。「北鎌尾根」が綺麗に見えるゾーンに入り、岩場が増えていきます。
そのうち岩陵帯中心になり、鎖も登場。道幅は狭くなり、滑りやすい斜面を通過しながら「千丈乗越」へ。
「千丈乗越」まで来ると槍ヶ岳にだいぶ近づいた気分ですが、コースタイムはそこから1時間30分。小屋が近くて遠い・・・を感じながらひたすらガレ場。最後に急登を乗り越えて槍ヶ岳山荘に到着です。
西鎌尾根で「槍ヶ岳」へ!3度目の正直「双六岳」とシャリバテになった3,000mの稜線
黒部五郎小舎 ー 三俣蓮華岳分岐
黒部五郎小舎 ー 三俣蓮華岳分岐:CT2時間20分
3時半頃目を覚ますと、深夜の雨はやんでいた。風が強めで、撤収でペグを先に抜くと飛んでいくやつ。初めての北アルプステント泊は涸沢で、風船のごとく宙を舞い、谷底に落ちていくテントを見ました。
適当に撤収して、小屋を風除けにザックを整理。8月下旬にもなると、5時前でまだ薄暗い。夏が終わるなあ・・・としみじみ。

黒部五郎小舎から尾根までは樹林帯の急登。昨日のクマを思い出し、薄暗い樹林帯がちょっと不気味。足元は岩で、黙々と登っているうちに空が明るくなりました。

40分ほどで展望が開けました。朝の柔らかい光で山々がちょっと白っぽくなる感じが好き。

笠ヶ岳に背を向けて歩く

尾根に上がると、10m/s近くある風が吹きつける。5時過ぎの温度計は10度くらいでしたが、開けた場所の体感は0度近い。鼻をすすりながら進みます。

三俣蓮華岳と双六岳の分岐に向かってハイマツ帯をガサガサと。

また黒部五郎カールに来たら、沢水で珈琲を淹れてまったりする。絶対。本当に本当に、素敵でした。

谷から吹きあげてくる風が体当たりしてくる

雲ノ平方面。このあたりの山域は、地図を見ているだけでも雄大さを感じます。


鷲羽岳、水晶岳も天気が良さそう。鷲羽岳から眺める鷲羽池と槍ヶ岳の風景は絵画のようでした。



かわいい分岐に到着。三俣蓮華岳はここからさらに登ります。双六岳方面へ。
三俣蓮華岳分岐 ー 双六小屋
分岐 ー 双六岳 ー 双六小屋:CT2時間

景色がさらに爆発していく
本当は双六小屋スタートで西鎌尾根に時間を割いて堪能したかったのですが、今回は日程的に断念。黒部五郎小舎には泊まりたかったので、ゆっくり西鎌尾根はまたいつか。

双六岳までの稜線がまたいいこと
こちら側は風が弱く、快適な朝の散歩道になりました。双六岳は今回3回目。しかし、1回目は雨山行、2回目は小屋まで下りたらガスが一気に晴れるという意地悪さ。相性が良くないのかもしれませんが、3度目の正直。
今はなき「Hutte(山と溪谷社)」という雑誌で双六岳の滑走路の写真を見て、これは!と興奮して登ったのが最初。あれから随分経ちましたが、ようやくその景色が見られるか・・・


黒部五郎岳

鷲羽岳 & 水晶岳

天国だな

丸山を過ぎると、「中道ルート」の分岐があります。中道は山頂を巻くルートですが、こちらの道もなかなか良くて、ここで珈琲を淹れよう!とザックを放り出したスポットがある道。
山で、自分だけのお気に入りスポットを発見するのはひそかな楽しみ。私にとってのホームマウンテン高尾山にも何箇所か秘密の場所がありますが、規模が大きいアルプスでも、そんな"自分だけの場所"を見つけていきたい。



前後のキョロキョロが止まらないまま、双六岳に向けてラストスパート。斜面を上がると山頂です。

「双六岳」登頂!

3度目の正直。青空が嬉しすぎる・・・

槍ヶ岳に続く一本道。滑走路もばっちり!

山頂から岩場を下りて

さらに滑走路になる。この道をつくった人は、こうなるように整備したのか?あの位置に槍ヶ岳があるのが、まず奇跡だけど。

ひょっこり槍ヶ岳
点々と生えるまるっこい草が、またアートで。秋には、オレンジ色に染まります。
ちょっとした公園のような山。憧れていた景色の中で、チップスターを食べる朝の8時。最高。
ただ、双六岳は天気が良いとドローンを飛ばしている人が1人はいる気がします。この山行以降2回訪れましたが、やはりドローンが・・・あの人工的な音が苦手で、北アルプスに来てまで聞きたくないなあ、というのが正直な気持ち。

振り返る
双六岳周辺は、高山植物が咲き乱れるのでとても綺麗。豪雪の年に来たときは見事なお花畑。1回目は雨でしたが、お花畑に救われました。

双六小屋へ下山。はじめは岩場の急坂


この上にあんな天国のような場所があるなんて、想像もつかない。岩場を下り切ると、中道と小屋への分岐があります。

ハイマツ帯を下れば「双六小屋」
双六小屋で水を汲んでいると、「昨日、黒部五郎にいましたよね?」と声を掛けられました。
小屋泊の方でお話はしていませんが、今回穿いている赤いパンツが目立つようで。大キレットだし、万が一のために明るいカラーを選びましたが、実際に覚えてもらえて効果的。
双六小屋 -(西鎌尾根)- 千丈乗越
双六小屋 ー 樅沢岳 ー 左俣乗越 ー 千丈乗越:CT7時間35分

双六小屋の前に聳える「樅沢岳」への登りから、西鎌尾根スタート。

双六岳はマルっとしたフォルムがかわいい
以前、三俣山荘のテント場で「西鎌尾根は絶対に双六岳から行くべき!槍ヶ岳を見ながら!」と、おじさんに力説されました。
正直、どっちでもいいと思っていましたが、結果的に双六岳からで良かったです。「表銀座は燕岳からがいい」というのと同じですね。


双六岳から笠ヶ岳への稜線


薬師岳はどんどん遠くなる

「樅沢岳」に到着

「樅沢岳」まで登ると、槍ヶ岳まで続く西鎌尾根の全景が見えます。美しい稜線だ。

樅沢岳からは細かいアップダウン

樅沢岳を振り返る
西鎌尾根は高山植物が豊かなコース。8月下旬なので終わっている種類も多いですが、夏と秋の花が混ざりとても綺麗でした。

ミネウスユキソウ

タカネシオガマ

トウヤクリンドウ

ハクサンフウロ

ミヤマリンドウ

ミヤマダイモンジソウ
花の形が漢字の「大」になっている花。小ぶりで赤と黄色が可愛い大好きな花。

ウメバチソウ

ヤマハハコ

ミヤマダイコンソウ

イワギキョウ
他にもウサギギク、イブキジャコウソウ、イワツメクサ、名前がわからない花たち。前半はとにかく咲き乱れています(後半は岩陵帯)。
花盛りの時季は見事なことでしょう。それこそ、時間をかけて歩きたいコースです。

朝吹いていた風は、西鎌尾根では無風快晴。3,000m級の稜線は日陰もなく、エネルギーを奪われながらも気分爽快。

道幅が狭いところもありますが、前半は比較的歩きやすい。

双六岳を9時に出発して、西鎌尾根ですれ違ったのは5〜6人程度でした。やはり、双六小屋スタートの人 & 双六小屋から槍ヶ岳を目指す人が多いのでしょう。

双六岳の滑走路もいいですが、西鎌尾根にも極上の立ち止まりスポットがたくさん。人がいなくて、槍ヶ岳を独占状態なのもいいですね。


左手には赤岳と硫黄岳。奥に湯俣温泉があり、硫黄臭がほのかに漂う。

振り返る

「左俣岳」の山頂は飛騨側を巻きます。ちょっとした鎖あり。

「左俣岳」を巻いたあとは「左俣乗越」へザラ場を下る。滑りやすいゾーン。

左俣乗越を通過。「北鎌尾根」の眺望がメインになっていきます。

左俣乗越を過ぎると岩場が増えていく。さらに・・・

北鎌尾根が美しすぎる!!
圧倒的な存在感と、険しく滑らかな尾根と谷の筋。岩陵帯とグリーンのコントラストのバランスが見事。西鎌尾根で一番圧倒され、一番好きな景色でした。剱岳とはまた違う美貌。
海外の高峰は人間を寄せ付けない雰囲気を醸し出していて、それはそれできっと美しい。しかし、日本の山は、人と自然がともに生きてきた。
槍ヶ岳でさえそんな空気を纏っていて、それを感じる景観が素敵だと思います。岩と雪だけでなく、夏には"緑"を見せてくれるからかな。

惚れ惚れしている間にガスが上がってきた

口を開ければ「暑い」しか出てこない。千丈乗越が異様に遠く感じます。



ズルズル滑りやすい、いらやしい感じのザレ、ガレゾーンが続く。

小屋が見えるし、槍の穂先も目の前ですが、まだまだ。ここからが遠い。

気付かぬうちに道を間違えていました。道は斜面をトラバースしていますが、どこからか岩の方へ進んでいて、「あれ、下に道がある」と。そのまま岩場を進み、正規の道に近いところで斜面を下りました。

千丈乗越はまだか・・・右手が飛騨沢方面ですが、ガスで分岐が見えず。暑さにだいぶやられ気味。

とぼとぼ歩いて「千丈乗越」に到着。やっと着いたけど、ここからまだ1時間半。ガレ場の急登のラスボスです。

槍ヶ岳側から見た分岐。右手に細く双六方面の道が続き、左手は飛騨沢で新穂高行き。
ガスっていると、真っ直ぐ行って写真左側の岩場で迷うケースもあるようなので注意。丸太が置かれていますが、普通に歩けそうな岩場です。
槍ヶ岳から下ってきた人も顔が真っ赤。さすがに無風すぎて、暑すぎる。5分以上座り込むと立てなくなりそうなので、ストレッチをして出発。
千丈乗越 ー 槍ヶ岳山荘
千丈乗越 ー 槍ヶ岳山荘:CT1時間30分

穂先も小屋も、近くて遠い

しかし・・・

絶景なんだな・・・西鎌尾根はガスに食われそう

無風快晴で体力をかなり消耗し、行動食を結構食べてしまいました。あと2日あるし、明日も明後日も体力要るのに、行動食があまり残っていない状況に。
昨日、2Lのプラティパスを壊して500mlのペットボトルを購入し、双六小屋で1.1L補給。たんまり飲んで出発しましたが、普通に足りない。もう一本買っておくべきだった。行動食も水も、計画が甘すぎて猛省・・・

結構登ってきたつもりだけど、まだ着かない
今日は槍ヶ岳山荘のテラスでカレーを食べるんだ!と意気込んでいましたが、15時までに着くかどうか。お花畑と北鎌尾根の景色を楽しみすぎた & 予想以上のエネルギー消費でシャリバテ状態。
岩に座りこんでいると、仲間のKさんからメール。Kさんも途中トラブルがあり、まだ到着していないとのこと。

上を見ると永遠を感じるので、足元に集中して一歩一歩。最後の方は5〜10m歩いて一息、を繰り返す始末。水を飲み干して、ラストスパート!!

やっと着いた・・・!

なんとか14時半頃槍ヶ岳山荘に到着。ルンルンで歩き始めて、最後はゾンビのようでした。しかし、あんなに疲労困憊だったくせに「いやー、いい道だったなー」と、ケロッと振り返る。
槍ヶ岳山荘テント場・槍ヶ岳往復
槍ヶ岳往復:CT1時間

テントの受付を済ませ、カレーライス!と思いましたが、もうおでんしか残っていませんでした・・・仕方なくカップラーメン。お湯なし450円、お湯あり500円。沸かす気力がないのでお湯ありを注文。
ジュースを買って一気飲み。カップラーメンの塩分最高・・・ラーメンのあとまたジュースを買って一気飲み。いろいろ足りてなさすぎました。

槍ヶ岳山荘は、宿泊者以外の人は水1L200円(値上がりしている可能性あり)。テント泊用のトイレに水道はありません。
水の販売は5時~18時まで。自動販売機は500mlで400円なので、できるかぎり時間内に購入した方がいいです。
西鎌尾根で失敗したので、ペットボトルを2本追加購入。

テラスで動けずにいるとKさんの姿を捉え、無事合流。2人ともテラスと一体化しながら、ここまでのことを語りました。
行動食が全然足りない私に対し、Kさんは行動食が多すぎて困っている(重い)とのことでお裾分けをして下さいました。ありがたい!この先も小屋は続くので、足りない分は購入しながら歩きます。

16時を過ぎ、ようやく重い腰を上げてテント場へ。槍ヶ岳山荘のテント場は先着順 & 番号指定なので、受付だけ済ませておけば安心。
初めての槍ヶ岳山行では、上高地からウキウキしながらテント場を目指していました。しかし、疲れ果ててギブアップし、フラフラと殺生ヒュッテのテント場に吸い込まれました。殺生ヒュッテからの眺めも良かったですが、槍の穂先の並んで寝る、という念願が今夜叶う。
テントを設営し、小屋の夕食が始まるであろう17時頃、槍ヶ岳にアタック。

トンガリコーンジャンプ!

「槍ヶ岳」登頂!
疲れていたせいか、登りの写真がありませんでした・・・
小屋泊の人たちは夕食なので、山頂は空いていました。前回も同じ時間に登り、ガラガラ。槍ヶ岳に関わらず、夕食時は狙い目。

西鎌尾根が神々しく輝いている
辛かったことはもう過去のこと。"苦しみ"があるからこそ"喜び"がある。セットだからこそ涙が出る。ここまでの過程を思い出しながら、今この瞬間に一喜一憂できるのは幸せ。
ヘリコプターでヒョイっと穂先に置かれたら、景色には感動はするかもしれない。でも、身体の奥底から込み上げてくるものは何もない。人力は自分を、人生を変えてくれる。

影槍

明日の「大キレット」もどっしり構えている。西鎌尾根のラストスパートで疲れすぎて、「やばい、大キレット無理かも、下山かも」なんて思っていましたが、今はワクワク。人力は感情の起伏も激しい。

穂先で夕日を見送りたいところですが、テントを設営しただけで何も準備をしていないし、夕食も食べなきゃいけないので下山。

一番高度感があるのは、やはり最後の垂直な梯子だろうか。
Kさんは高所恐怖症ですが、岩陵帯好き。大キレットもKさんが誘ってくれましたが、槍の最後の梯子は怖いと言っていました。


日の入りは18時40分。オレンジに染まる槍も素敵。



山荘の脇に槍があるの知らなかった


テントの受付時に「テントはどのくらいの大きさですか?」と聞かれました。1人用なので一番小さい区画を指定されたようですが、私のモンベル「ステラリッジ」は前室が短編にあり完全には入らず。斜めに張り、後ろもギリギリまで下げて(張り綱が微妙)なんとか。

穂先と大キレットに挟まれて眠る夜
4日目の明日は、ついに「大キレット」を歩きます。"一般ルート最難関"といわれる岩陵帯に緊張とワクワクが混ざる。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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