2022.5.18(水)-5.19(木)
歩き人たかちです。
日に日に太陽の出ている時間が長くなる5月。ズルズルと後回しにしていた"皇海山"に突撃しました。
2019年10月12日、台風19号により群馬県側の登山口へ続く栗原川林道が崩壊。復旧は未定ということで、現在は栃木県側の"クラシックルート"が主要となっています。
2019年当時、群馬県にある「ペンション てんとう虫」という宿泊施設の皇海山送迎プランを予約していました。しかし、その一週間前に台風が到来。呆気なく皇海山への道が絶たれました。
皇海山をガイドしてくれる宿もあります。
*ペンション オウレット*
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コースタイムは平ヶ岳を抜き、一気に日本百名山日帰り最難関の山となった皇海山。コースタイムだけでなく、急登、脆い岩場、鎖、薮とバリエーション豊か。2020年の秋に一度薮が刈り払われましたが、継続的な刈り払いは行われていません。
群馬県と栃木県の夏は雷三昧。秋は日が短い。日が長く、気候もちょうどいい梅雨前の5月が狙い目です。
1日目のわたらせ渓谷鐵道の原向駅から庚申山荘まで記録。
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1日目
天気:晴れ☀︎
気温:20〜23℃
原向駅ー国民宿舎かじか荘(庚申山荘の支払い)ー一の鳥居ー百丁目ー鏡岩ー猿田彦神社跡ー庚申山荘
▲コースタイム:4時間10分
▲歩行距離:12.5km
▲標高差:約1000m
皇海山クラシックルート
皇海山のクラシックルートは修験道として存在していました。庚申山から鋸山、皇海山へと至る道は、「三山駆け」と呼ばれる山岳信仰の道です。
クラシックルートの特徴は
◾︎ 行程が長い
◾︎ 急登、岩場、鎖、梯子、痩せ尾根
◾︎ 落石多い
◾︎ 藪漕ぎ(六林班峠方面)
◾︎ 遭難、道迷いの危険性 でも、森はとっても綺麗。
【行程が長い】
皇海山のコースタイムは、庚申山荘からの往復でも短くて10時間。かじか荘からの往復となると14〜15時間。
日帰りの人も多いですが、庚申山荘を利用すれば体力的にも精神的にも安心です。
【急登、岩場、鎖、梯子、痩せ尾根】
アップダウン、急登、ともに多い道のり。庚申山〜鋸山の区間は破線ルートとなっていますが、核心部は"鋸山前後の岩場"です。
凹凸の少ない岩や、脆くて滑りやすい斜面が非常に嫌らしい。土の急斜面はボロボロと落ちていく感じで、これまた厄介。浮石も多いので、むやみに足を置いたり掴んだりはNG。痩せ尾根が続き、気の抜けない区間です。
今回、前を歩いていた人が岩場で3〜5m程滑落しました。幸い木のある斜面だったのでストップし、怪我もなく、自力で上がってこれましたが、場所が違ったらと考えると非常に恐ろしかったです。
鎖もアルプスのようながっちりしたものではなく、細い鎖とトラロープが主体。その支点も、大丈夫かな…という木や枝に取り付けられていたり。しかし、それらに頼らざるを得ない箇所も多く、常に確認しながらの利用。危険度の高い岩場だと感じました。
【落石が多い】
岩場は特に、人が通ると何かしらゴロゴロ転がっていくような脆さで、自分も他人も常に落石をしているような感じでした。全体的に落石が多いので、ヘルメットはあった方がいいです。
【藪漕ぎ】
六林班峠のコースは距離が長く、藪漕ぎと斜めに傾いた細いトラバース道が厄介とのことで利用せず、岩場の往復をしました。薮が刈られた直後は歩きやすかったようですが、再び背丈程までボーボーになっている箇所もあるようです。
クラシックルート2回目という方の話では、「トラバース道が歩きにくいからあまりおすすめはしない。巻道だから楽は楽だけど、斜めだし、笹に引っかかるし、とにかく長い」とのこと。
当日、六林班峠から下山した人に聞くと「薮はそれほど大したことはなく、トラバース道も"草が乾いていたから"滑らず大丈夫だった」とのこと。しかし、「とにかく長いから、元気があるなら往復でいいんじゃないかな」とも。
人それぞれ感想は違いますが、六林班峠方面の歩きにくさは天気や足元の状況次第のようです。この日は前日も天気が良かったので道は全体的に乾いており、長いだけで比較的歩きやすかったと。
岩場を通過したあとは、大半の人が「戻りたくない」ということで六林班峠を選んでいましたが、どっちもどっちという印象です。
【遭難・道迷い】
皇海山は遭難、道迷いの多い山でもあり、単独での入山は推奨されていません。電波が入るのも一部のみ。
クラシックルートを歩く人が多くなり、マークや踏み跡も以前よりはわかりやすくなっていると思います。庚申山経由の道に関しては見える範囲にマークやテープがあり、迷うことはありませんでした。ただ、暗闇だと庚申山荘周辺でも迷うことはあると思います。残雪期も不明瞭になりやすいかと。
六林班峠の方も、藪がまた深くなるようであれば不明瞭箇所が出てくると思います。必要以上に沢を下ってしまったりすることもあるようなので、こちらも要注意。
なんだか不安要素がいっぱいなクラシックルートですが、日が長い時期に行く、庚申山荘を利用する、単独では行かない、ガイド登山をするなど、リスクの軽減はできると思います。
危ないのは皇海山ではなく、その手前。皇海山自体が奥深い山ですが、日本の山岳環境の美しさと厳しさを味わえるのがクラシックルートの魅力であり、百名山として選ばれた理由ではないかと思います。
車道と林道。原向駅 ー 一の鳥居
*原向駅ーかじか荘ー一の鳥居:CT 3時間*
電車を乗り継ぎ、久喜駅で東部特急リバティりょうもうに乗り換え。乗り換えが7分だったので、ホームにいた駅員さんに聞いて一緒に券売機へ。ネット予約をしておけば特急券は必要なし。全席指定席なのでネット予約が断然いいですね。
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相老駅で"わたらせ渓谷鐵道"に乗り換え。一度改札を出てから切符を買い直し、再びホームへ。長閑だなあ。
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かわいいワンマン列車のご到着。
駅に温泉があったり、車両のレストランがあったり、渓谷沿いを走ったりする観光列車的な。
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原向駅で下車したのは私一人。無人駅です。公衆トイレが愉快ですね。
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ここから国民宿舎かじか荘までは6.1km。標高差は300m弱で、ゆるゆる登っていきます。タクシーも隣駅にありますが、時間があるので歩きます。
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国道を10分くらい歩くとかじか荘への看板があり、県道の庚申山公園線へ。
一本道なので気楽に。天気がよくてちょっと暑いけど、日陰と時折吹く風が気持ちのいいこと。久しぶりのすっきりした青空は初夏の雰囲気。梅雨の晴れ間とかそんな感じ。
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県道からすでにクマさん注意。
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水場がありました。カップもある。
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しばらく歩いていると「小滝の里」なる場所がありました。広場のようになっていて、大きめのいい東屋あり。休憩にちょうどいい。
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昔の写真など、歴史を見ながら歩ける県道。山が禿げてますなあ。
へぇー、ふーん、となりながら進んでいくと、"足尾温泉"と書かれた「かめむら別館」がありました。しれっとある温泉いいですね。日帰り入浴とかもやっているのかな?
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ずーっと庚申川沿いを。
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「銀山平公園キャンプ場」に着きました。芝生がすごく気持ち良さげなキャンプ場。
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そして、かじか荘に到着。思ったより車が停まっていて、庚申山荘に泊まる人もいるのではないか?期待。
中の券売機で庚申山荘の券(¥2,080)を購入し、登山届を提出。ハイシーズンの週末は管理人さんがいます。一応、庚申山荘内にも支払う箱が置いてあります。その場合はお釣りのないように。
*国民宿舎かじか荘*
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登山の格好をした人がチラホラいて、挨拶をすると今日は庚申山荘泊まりとのこと。いやー、よかったよかった。平日ど真ん中で一人だと思ってた。
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一安心して足取りが軽くなったところでスタート!
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山道が始まる"一の鳥居"までは約4kmの林道歩き。新緑がとっても綺麗です。紅葉も綺麗だろうなあ。
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またまた水場。
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一面黄緑色の世界。空気が爽やか〜
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落石が多い区間ですが、足元には落石跡がいっぱい。歩いているときもカラカラカラカラと手のひらサイズの石が落ちてきました。音ですぐに気がつき小走りで通過しましたが、お喋りに夢中だと聞こえないかもしれないので要注意。
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網に収まりきらない石たち。
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昨年はこの林道の一部に大きな落石区間があったようですが、現在は普通に通行できます。しかし、急峻で今にも崩れてきそうな斜面ばかり。異常気象やら台風が頻発する夏前にきて正解かな。
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新緑はとっても素敵ですが、道はどんどんダートに。
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爽やかで気分が良く、あっという間に"一の鳥居"に到着しました。
庚申山荘までしっとり潤った森を歩いていきます。
水の森。一の鳥居ー庚申山荘
*一の鳥居ー百丁目ー鏡岩ー猿田彦神社跡ー庚申山荘:1時間10分*
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原向駅から10km。ようやく山道です。
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この山域のマークである赤と黄色のプレート。"日光マーク"というそうです。皇海山までこれに導かれて歩きます。
林道の新緑もすごく素敵でしたが、森の中に入ると一層素敵だ。
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寄りませんでしたが滝があるらしい。
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初めの方はベンチテーブルもあり、ハイキングコースのような感じ。
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川が流れ、広葉樹林の落ち葉でふかふか。明日の岩場が想像できないほどマイナスイオンたっぷりの潤った森です。車道からそうでしたが、この辺りの自然はとてもいいですね◎
これだけでも、さすが百名山〜なんて思ってしまいますが(森好き)、明日はどんな山歩きになることやら。
↓豊かな森↓
計画していた一週間前に台風で道がさよならしたので、「クラシックルートで歩け」というお告げなのだと受け止めました。皇海山はきっと、クラシックルートに魅力があるのだと信じたい。
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クマの情報もチラチラある皇海山ですが、これだけ森が豊かだとクマさんもいるよな〜という感じ。
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今日登っている人は何人くらいいるのか。かじか荘を12時頃出発しましたが、まだすれ違いはありません。
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百丁目に到着。
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そのすぐ先に"鏡岩"。大きな岩ですね。ここにある伝承はちょっと悲しくなる物語でした。ぜひ読んでみてください。
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鏡岩からは、岩の間をえっちらおっちら登り、傾斜が少し増していきます。
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夫婦蛙岩。何が夫婦なのだろうと思いましたが、下山時に見たら夫婦でした↓
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二つの岩が重なるようになっていた。
ここで初めて下山者にお会いしましたが、皇海山ではなく、庚申山の"お山巡りコース"をぐるりと回ってきたとのことでした。
お山巡りコースには"コウシンソウ"の自生地もあるとのこと。咲くのは6月みたいですが、これだけ森が綺麗だと皇海山に登らずとも訪れる価値がありますね。関東ふれあい道の一部でもあります。
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仁王門
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笹道になると庚申山荘はもうすぐ。
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猿田彦神社跡。ここは、お山巡りコースとの分岐になっています。
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そして、庚申山荘に到着!ご立派!
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小屋前も広々していて居心地がいいです。
中に入ると荷物が一つ。しかし、どこかに行っているようで人はおらず(明日皇海山で、今日はお山巡りコースを歩いてきたとのことでした)。
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1階には和室と絨毯の部屋、そしてテーブル。
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2階は仕切りのないフリーな雑魚寝。
一応マットとシュラフを持参しましたが、敷布団を使わせていただきました。インナーシーツ持参で布団を使っている人が多かったです。
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畳と迷った挙句、2階が暖かかったので窓際に寝床をセット。
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ベランダも気持ちよい。
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水道。沢から水を引いているだけなので、一応浄水器を使いました。この日は特に濁っていませんでしたが、時期によっては濁りもあるそうです。
トイレは一つで、大・小便器があります。バイオトイレで、綺麗に管理されています。バイオトイレは維持費が結構かかると聞きますが、ここは山荘利用しなくても無料で使えるというありがたいトイレです。
この日は自分を含めて10人の宿泊者。平日にしては多い方なのかな?週初めと週末の天気がイマイチなので、ここに集中した感じか。
18時にはシュラフに潜り込みゴロゴロ。19時を過ぎてようやく夜の帳が下りました。日が長いこの時期はやっぱり好きですね。
皇海山はいったいどんな山なのか。林道が崩壊したときは絶望しましたが、とりあえずクラシックルートがあってよかったという気持ち。ようやくここまできたし、きたからには遠くて奥深い皇海山を楽しもう。ドキドキしながら就寝。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
よろしければ、応援よろしくお願い致します。
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