歩き人たかちです。
#2では、山小屋での仕事や休暇などについて記しました。
最後は、働いてみた感想と尾瀬の移り変わりを写真で。
山小屋で働いてみて
山小屋バイトはずっと気になっていましたが、とても良い経験となりました。
ひとつの山域の自然を毎日見て感じることは、やはり醍醐味であり癒しでした。春夏秋冬で区切るのではなく、40日間という短期でも"連続してそこにいた"ということが自分の中ではとても大切なものとなりました。
春から夏へ、1日単位でみるみる姿を変えていく季節。宝物を探すように尾瀬ヶ原を歩いて、毎日新しい何かを知る喜び。成長を見守っていた花が一晩で鹿に荒らされたり、小屋の方に尾瀬の自然を教えてもらったり、そこに居続けなければわからない繋がりを感じることができました。自然の風を浴びるのが好きで、ひんやりした風から温かみのある風、そして、夏の爽やかな風へ。目に見えない、そんな移り変わりもとても美しかったです。
山小屋を利用する側から利用してもらう側へ。逆の立場で動くと、自分たち登山者の行動がどうあるべきかということがよく見えます。山小屋なので、泊まる人にもある程度節度があると思っていました。しかし、実際に働いてみると「えー・・・」ということがたくさんある。
限られた食材や資源の中でさまざまな事態に対応していると、自分たち登山者がもっと節度ある行動と理解をしなければならないと。「大変ですね、ゆっくりでいいですよ」というようなお言葉をいただくと、心が救われる思いでした。何でもあるわけではないからこそ、お互いの"思いやり"がとても大事だと改めて。
山小屋がなければ山は歩けない。
大半の人はそうだと思います。もちろん、私も。山を守り、道を整備し、水場を整備してくれる。そして、ときには救助まで。そのような方々のおかげで、日本の素晴らしい自然を歩くことができる。そんな意識を、一人ひとりが大切にできればいいなと感じました。
夜明けとともに働いて、日が沈んだ数時間後に眠る。自然のサイクルに合わせて働く(生活する)ことは、肉体的にも精神的にもとても健康でした。満員電車に揉まれることもなく、帰宅が深夜近くになることもなく、身体がだるいなんてこともない。化粧もしないし、着るものも考えない。拘束時間は長くプライベートも少ないけれど、体内はスッキリしていて限りなく自然体。動物として生きている感覚がとても心地よかった。
いろいろな人生を歩んでいる人がいるけれど、共通しているのはみんな"自然が好き"ということ。それは山であったり、花であったり、太陽であったり。アウトドアメーカーで働くのとはまた違う面白さがありました。
自分の好きなものは何か。それはやはり、子どもの頃に好きだったもの。自然に寄り添うことが私の人生だと再確認した40日間でした。
尾瀬ギャラリー
尾瀬の自然がどのように移り変わっていくのか。40日間、定点カメラのように毎日同じ場所で撮影していました。
5分でも10分でも、少しでも時間があればカメラを持って外へ。瑞々しい空気を身体に取り入れ、心地のいい爽やかな風を浴び、時にはしとしと降る雨の中を。そんな尾瀬の日々のほんの一部をご覧ください。
入山日。雪の多かった年で5月下旬でもたっぷりと雪が残っていましたが、日差しは温かく、春の気配を感じます。
雪解けが進み、地面が現れる前に発生する"アカシボ(赤渋)"という現象。その正体や発生のメカニズムははっきりと解明されていないようですが、赤褐色の藻類がアカシボの正体と推測されています。
雪解けの場所にはミズバショウが続々と。水の中に咲く花にはなんだか惹かれます。
尾瀬ヶ原をいち早く彩るリュウキンカ
ワタスゲの果穂。
ある日の至仏山。雨上がりの木道に座ってみました。立ち止まることも大事だけど、座ることも大事だなと思った時間。
ショウジョウバカマの蕾。茶色の湿原に緑が続々と出始めました。
トガクシショウマ。絶滅危惧種に指定されている花。「トガクシショウマが咲いてるよ〜」というお客さんからの情報で見に行きました。鹿に食べられないように、数日後にはネットが張られました。
水の中に咲くリュウキンカ
カエルが卵を産んでいました。無事に孵っただろうか。
今年は霜が降りた日が少なく、美人なミズバショウが多かったようです。
綺麗な姿で折られたミズバショウは鹿が遊んだあと。食べるわけでもなく、ポキポキ折って遊ぶだけとのこと。
燧ヶ岳は上の方まで樹林帯なのでわかりづらいですが、まだまだ雪が残っています。
湿原にピンクが加わりました。
尾瀬といえば朝靄。いつも勤務開始の30分前に起きていましたが、そのうち5〜10分くらいは朝靄を見に行っていました。朝食の準備が少し早く終わり、10分くらいお茶にしようというときも外へ。山の朝は素敵です。
雨に濡れるとガラスのように透明になるサンカヨウ。雨が降るたびに観察へ。
晴れの日のサンカヨウ
気品溢れるキヌガサソウ。せっかく咲いたのに、数日後には鹿に食べられてしまいました。鹿に食べられると株がどんどん小さくなり、そのうち姿を消してしまうとのこと。鹿の被害が深刻ということを頭でわかっていても、実際目の当たりにするとやるせない思いでした。燧ヶ岳には大きな大きなキヌガサソウが咲くそうですが、それも食べられていたと聞きました。
緑が目立ってきた湿原
ミズバショウも終わりに近づく。花が終わり実が伸びてくる6月下旬頃からは、熊が湿原に姿を現しはじめます。ミズバショウの実は大好物です。
三条の滝は思っていたよりも迫力があり、見応え抜群でした。
裏燧林道にはブナの巨木も多くあります。新緑が美しい。
ワタスゲの果穂にふわふわ出現。
尾瀬は空気が綺麗で乱反射する塵が少ないため、夕焼けが赤くなることはあまりないそうです。空が真っ赤に燃えると、小屋の人でも興奮するとか。
大好きな白砂田代。目立たない小さな湿原ですが、静かで落ち着きます。
ヒメシャクナゲ。花はちっちゃいけど、葉っぱは立派にシャクナゲなのがとても可愛らしい。
イワカガミ。何ともいえないくねり具合。
野鳥の鳴き声に呼応しながら鳩待峠へ帰る歩荷さん。ミズバショウの葉はオバケになりつつある。
森の中でショウキランが芽を出していました。
1週間ほどでようやく蕾が開花。
新しい蕾も。これからニョキニョキ伸びるのかな〜とわくわくしていると・・・
木道脇だったので、どうやら蹴られてしまったようす。花と蕾がポキっと・・・足元を見て歩かないとなあとしみじみ思いました。
ズミ。木道にほんのり甘い香りが漂う。
ヒツジクサが水面にぷかぷか浮き始めました。
夜風が気持ちよくなってきた初夏。
燧ヶ岳から朝日が昇る。
今年は6月下旬の早い梅雨明け。空も雲も湿原もすっかり夏になり、一週間ほど好天が続きました。
お気に入りの休憩スポットで珈琲タイム。梅雨明け十日の日差しが暑くて、風が心地よい。ワタスゲは梅雨時期なので青空の下ふわふわしている風景は例年少ないですが、今年はたっぷり見られました。
7月1日、開山日の至仏山へ。
カキツバタとアヤメが咲き始めると、湿原は上品な色合いに。
緑と青は元気の源。
水を纏ったワタスゲも美しき。
水が豊かな日本。水が豊かな尾瀬。水のある自然は表情がとても豊か。
トキソウ。薄いピンクが上品で、好きなお花。サワランとともに咲いています。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。Instagramでは、できる限りリアルタイムで投稿していました。写真がいつ頃のものなのか、ご興味ある方はそちらをご覧ください。
また、1日休みに尾瀬を歩いた記録は下記をご覧ください。
よろしければ、応援よろしくお願い致します。
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