歩き人たかちです(@takachi_aiina)
一般の宿やホテルとは違う"山小屋"。寝床も、更衣室も、トイレも、洗面も、すべてが共有スペース。
山小屋に泊まったことがある人は、何かしら「迷惑だなー」「やめてほしいなー」と、思った経験があるのではないでしょうか。
今回は、抑えておくべき山小屋のマナーと心得について。山小屋で働いた経験と、自身が"迷惑"だと感じた体験を含めてご紹介します。
山小屋初心者の方の参考に、また、よく利用している方の気づきになると幸いです。
山小屋は「ホテルではない」ことを理解しよう
山小屋の利用は、"山の中で、風雨を凌げる暖かい部屋で寝られることがありがたい"という気持ちで。
現在は、隅々まで綺麗であったり、食事が美味しかったり、コーヒーやケーキもいただけたり・・・素晴らしいサービスが充実している山小屋が多いです。
だからこそ、勘違いをしてはいけない。物資や資源が限られている中で、それだけのサービスが受けられるのはすごいこと。"サービスは当たり前"ではありません。
山小屋のマナーと心得
\ 山小屋利用の基本マナー /
◾︎ キャンセルの場合は必ず連絡をする
◾︎ 早出早着の計画を立てる
◾︎ 熊鈴は小屋に入る前に消音にする
◾︎ 靴紐とストックは外で解く・しまう
◾︎ 館内の利用方法に従う
◾︎ 食事の時間を守る
◾︎ すべてが「共有」の意識を忘れない
【予約・問い合わせ】忙しい時間帯の電話は避ける
山小屋の一番壮絶な時間は、"食事(準備・片付け含む)"の時間。予約などの電話は、朝夕を避けた、10〜15時頃がベストです。
少ない人数で何十人、何百人の対応をしているので、忙しい時間帯は電話に出る余裕がありません。
朝は、食事の片付けからそのまま清掃に入る小屋が多く、10時頃までは忙しなく動いています。
夕食の準備は15時半〜16時頃にははじまり、17時頃から提供開始。人数によっては、3回前後入れ替えを行い、片付けを含め20〜21時頃まで続きます。
【キャンセル】予定変更なら必ず連絡を!
山は天候に左右されるため、キャンセル料を設定していない山小屋が多いです。
だからといって、「キャンセルしなくていいや、来なかったらわかるでしょ?」は絶対NG!
キャンセルの連絡がないと、「〇〇さんまだ来ないけど、大丈夫かな。遭難とか怪我とかしてないといいけど・・・」と、本来しなくていい心配を山小屋の人たちはしています。
キャンセルをしないことで、泊まりたくても泊まれない人も出るし、山小屋にとっても損失。「行かない」と判断したら、すぐにキャンセルの連絡を。
*最近は、キャンセル料を設定している山小屋も増えています。事前に確認しましょう
【早出早着】16時までの到着を目指した計画を
山は、"早出早着"が基本。日没を迎えると遭難のリスクが高まるので、16時頃には到着する計画を立てましょう。
予約時に「〇〇時までに到着してください」と言われることもあります。17時以降の到着は、問答無用に叱咤されることも。
特に、秋冬は日没が早いので、樹林帯は15時を過ぎると瞬く間に暗くなります。夏は夏で、雷のリスクがある。季節や天候によって、適切な計画を。
遭難・事故現場には山小屋の人たちも駆けつけるので、余裕のある安全登山を心掛けましょう。
【熊鈴】小屋に入る前に音を消す
音が響く熊鈴は、小屋に入る前に音を消しましょう(消音機能がなければはずす)。
一人ひとりがつけている熊鈴は、"騒音"になりがち。小屋によっては貼り紙があったり、受付で「音を消してください」と指示されます。
【玄関】靴紐とストックは外で解く・しまう
玄関が混雑しないように、靴紐は外で解き、ストックは短く収納しておきましょう。
山小屋の玄関は混みがち。座り込んで靴紐を解いていると、詰まってしまいます。
また、受付後はスタッフさんの案内に従うことも多いため、スムーズに行動できるよう、受付前に上がる準備を。
グループ登山の場合は特に、玄関を占領しないよう気をつけましょう。
【寝床】基本は「雑魚寝」個室は稀
山小屋の寝床は、基本的に男女関係ない"雑魚寝"。
コロナの影響で仕切りやカーテンがつけられたり、個室利用にしている山小屋も増えましたが、それが当たり前ではありません。
予約制になり、以前のようにギュウギュウに詰める(1枚の布団に2〜3人)ことはしませんが、人気の山小屋や富士山では、隣の人と近くなりがち。
大雑把に男女でわけるケースが多いですが、必ずしもそうとは限りません。
個室で予約しても、その日の人数によっては相部屋に変わることもあります。
マナーとしては、荷物を布団の上に置かないこと(汚れているので)。着替えがあると、布団を汚さずに済みます。
洗濯や天候の関係で、山小屋のシーツは毎日変えられません。余裕があるなら(気になる人は)「インナーシーツ」の持参がおすすめ。布団を汚さないメリットにもなります。
【トイレ】汲み取り式・バイオ式が基本!トイレットペーパーはゴミ箱に
山小屋のトイレは、"汲み取り式・バイオ式"が多数。水洗トイレは稀で、トイレットペーパーの処理方法に注意しましょう。
一番気をつけるべきは、日常的な癖で"トイレットペーパーを落とさない(流さない)"こと。
多くの山小屋は、使用済みのトイレットペーパーをゴミとして下界に運びます。流したり、落としたりすると、詰まりや故障の原因に。
落として(流して)OKな山小屋もありますが、小屋によって異なるので、扉や壁に貼られている処理方法に従います。
絶対に落としてはいけないものは、"生理用品"や"ウェットシート(汗拭き・おしり拭き)"。
これらは、トイレが一発で詰まる(故障する)原因にもなります。そして、処理がとにかく大変とのこと。
"排泄物以外はすべてゴミ箱(あるいは持ち帰り)"という意識で。
【お風呂】山小屋にお風呂はない(例外あり)!
山小屋にお風呂はありません。ドライヤーもないし、持参しても使えません。
尾瀬のように水が豊富な山域や、温泉が名物の山では、お風呂がある山小屋もあります。
しかし、"石鹸の使用はNG"。汗を流してお湯に入るだけなので、注意しましょう。
*上高地のような観光地では「徳澤園は使えるけど、横尾山荘は使えない」など、場所(小屋)によって違う場合があります。
山小屋では電気も貴重。燃料を必要とする発電機を利用している小屋も多いため、ドライヤーはNG。
山小屋で働いていたとき、ドライヤーを持参して使っている方がいました。食事の片付けなど、電気が必要な時間と被った場合、電気が落ちる可能性があります。
山小屋のコンセントは、無断で使わないようにしましょう。宿泊者が使える電気はまったくないか、有料か、充電のみ利用可になります。
【洗面】歯みがき粉や石鹸はNG前提
歯みがき粉や石鹸類の使用は、山小屋のルールに従いましょう(NG前提で準備)。
石鹸は、山小屋の洗面に置いてあれば使用可能です。
浄化できる量が少なく、宿泊者の分まで浄化できないことも多いので、石鹸類は使わなくて済む工夫を。
歯みがき粉も、自然由来の"飲み込めるタイプ"が便利です。
【ゴミ】ゴミはすべてお持ち帰り!生理用品に注意
山小屋にゴミ箱はありません。持ち込んだものは、すべてお持ち帰り。
女性は"生理用品"に注意!
最近は、サニタリーボックスを置いてくださっている山小屋も増えましたが、お持ち帰りの山小屋もあります。
念のため、防臭袋やジップロックを持って行くと安心です。
【水】山の水は貴重!必ずしももらえるわけではない
山小屋で水をわけてもらえるか、購入かは事前に確認を。
稜線など、水源がない(乏しい)山小屋では天水(雨水)や雪溪を利用しています。あるいは、何百メートルも下の水源から引っ張っているか。
そのような山小屋は自然に大きく左右され、雨、雪が少ない年は水不足。
「通常は水を補給できるけど、今年は厳しい」
「1人500mlまでしか販売できない」
などの事態になることもあるので、要注意。その年の気象情報や天候、山小屋の最新情報の確認を。
【食事】時間を守り食べられる量を
山小屋の食事は、人数が多いと30〜40分の入れ替え性になります。次の回に支障がないよう、食事の時間は守りましょう。
また、体調が優れず食欲がない、もともと少食という場合は、食べる前に減らしてもらいましょう。
アレルギーがあるなど、食べられないものがある場合は手をつける前に。
好き嫌いせずに完食することが望ましいですが、残飯になってしまうなら、苦手なものも返しましょう。
【くつろぎ】おしゃべりの声は控えめに
山小屋での過ごし方は自由ですが、"すべてが共有スペース"であることを忘れずに。
寝ている方もいるし、本や雑誌を読んだり、静かに自然に浸る人も。
グループや、他の登山者と仲良くなって話が盛り上がると、周りが見えなくなりがち。
おしゃべりの声は控えめにして、お互い気持ちよく過ごせるように。
気をつけよう!迷惑だった山小屋泊の体験談
山小屋に泊まったとき、「それはちょっと・・・」と思った体験談。
誰しもが気持ちよく過ごしたいので、お互いの気づきになればいいな、と思います。
深夜2時の大パッキング大会
南アルプスの山小屋に泊まったとき、深夜2時に、隣のご夫婦が盛大にパッキングをはじめました。強烈なヘッドランプの灯りで目が覚めて・・・
◾︎ 早朝出発のパッキングは食堂や玄関で
枕元でパッキングをしていたので、顔にヘッドランプの強い光ががっつり当たり、超迷惑でした。
山小屋では、人の顔に当たってしまうことも考えて、目に優しい"赤色"や、弱めの"温暖色"を使った方がいいです(そのような色があるヘッドランプを選ぶといい)。
そして、"早朝出発の場合、パッキングはできるかぎり部屋の外(食堂や玄関先)"で行いましょう。
半数以上起きていて、食堂や玄関もいっぱいなら仕方ないですが、寝ている人もいるので配慮を。
起床後速やかに移動するためには、"寝床に荷物を広げない"こと。
ヘッドランプや水、貴重品など、最低限のものだけ枕元に置き(エコバッグなどにまとめておくといい)、他の荷物はザックにしまっておけば、すぐに移動できます。
「山小屋だからいいでしょ?」ではなく、他の登山者への影響を最低限に。
就寝前のビニールのガサガサ音
消灯まで共有スペースでおしゃべりをしていたグループの人たちが寝床にきたあと、荷物の整理をはじめて、あちこちでガサガサガサガサガサガサ・・・
◾︎ 音の柔らかいビニールやスタッフバッグを使う
静まり返った空間でのビニール音は、本当に目立ちます。
夕食後すぐ就寝する人も多いため、寝床・荷物の整理は夕食前に済ませておきましょう。
スペインの巡礼路を歩いたとき、就寝前にビニールをガサガサしていて、「うるさい!!」と、怒られました。アウトドアをはじめたばかりで何も知らず、配慮もできなかった。
更衣室が香水臭い!!
更衣室がある山小屋もありますが、1つか2つを順番に使います。個室のこともあれば、カーテンのみのことも。
あるとき、個室の更衣室がめちゃくちゃ香水くさかった。
更衣室では、"汗を拭く・着替える"にとどめ、すみやかに次の方へ。香り系のものは、外の人がいない(離れた)場所で。
自分もそうですが、香水が苦手な方もいます。体調が優れない方は、そのような香りによってさらに悪化することも。
汗拭きシートの香りは仕方ないですが、振りかける香水系はやめましょう。
外だからって許されない!消灯後に響く笑い声
消灯時間になったとき、外に移動して飲み続ける人たちがいました。
しっぽり飲むならいいですが、小屋の中まで聞こえる甲高い笑い声・・・
山の朝は早い。山小屋の方も寝ています。消灯後は、中でも外でもお静かに。
飲み過ぎによる「トイレの故障」
トイレに「故障中」の看板が下げられていることがあります。本当に故障していることもあれば、登山者による迷惑行為が原因のことも。
私が遭遇した"故障中"は、「飲み過ぎた登山者がリバースして、汚された上にトイレが詰まってしまった」と。
しかも、それを山小屋に報告せず去って行った・・・
山小屋のトイレは下界と違います。水洗だとしても、些細なことで詰まります。報告しないのもありえない。
標高が高い分、酔いが回るのが早いので、いつものペースで飲まないように気をつけましょう。量も控えめに。
山小屋がないと歩けない「感謝」の気持ちを忘れずに
山小屋のマナーと、これまで経験した迷惑行為をまとめました。
山小屋のおかげで、多くの登山者が安全に山を歩けます。美しい日本の自然を楽しめます。
以前、縦走中に登山者の方と話していたとき、「〇〇山荘のお弁当、すっごくまずいよ」と言われ、悲しくなりました。
3,000mでお弁当を提供していただける、自分で担がなくてもごはんを食べられる、それが当たり前だと思っているのだろうか?
「山小屋がなければ歩けない、経験できない」という感謝の気持ちを忘れずに、お互い思いやりを持って利用しましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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よろしければ、応援よろしくお願い致します。
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