歩き人たかちです(@takachi_aiina)
屋久島で山にハマり、学生のうちは2人以上で山を歩いていました。
「1人で山を歩く」という意識はありませんでしたが、社会人になると、毎休み誰かと山に行くのは難しい。
土日休みではないし、同期や先輩と休みを合わせられるのは、1ヶ月に1,2回。
山の経験が浅かった私は早く山を知りたくて(知識と経験が少なくて仕事が怖かった)、入社早々"ソロ(単独)登山"を意識しました。
感動の共有は楽しい。しかし、自分のペースで自由に歩ける"ソロ登山"もまた、違う魅力がある。
今回は、私が実践していた「山をソロで歩くためのトレーニング」についてご紹介します。
自分の場合、周りがみんな登山をする環境だったことは恵まれていました。
「山仲間がいない」「休みがなかなか合わない」など、ソロ登山を考える理由は人それぞれだと思います。少しでも、参考になれば幸いです。
ソロ登山の「リスク」を理解する
◾︎ すべて自己判断、自己責任
ソロは自由で楽しい反面、リスクも大きくなります。2人以上いれば、怪我をしたとき、誰かが救助に走れます。しかし、ソロだとそれが難しい。
電波があれば連絡できますが、圏外で人が少ない山域だと、誰にも気がつかれない可能性も高い。
自己判断、自己責任になるため、低山、高山に関わらず"ソロ登山のリスク"を理解し、知識と経験を蓄えることが重要です。
【ステップ①】高尾山で「自分を知る」トレーニング
私のホームマウンテンは「高尾山」。いつでも人が歩いている人気の山ですが、コースによってはとても静か。
3時間以内で往復できるコースから1日かけて歩くコース、宿泊を伴う縦走まで、バリエーション豊かに楽しめる(トレーニングができる)ところが高尾山の魅力。
自分の体力を知る
◾︎ 同じコースを何度も歩く
まずは"自分の体力"を把握するため、タイムを測りました。そして、コースタイムに対して何%くらいで歩けるのか計算。
日によって調子がかわるため(季節も)、同じコースを何度も歩き、平均タイムを把握しました。
5回くらい間をあけずに登ってタイムを測り、そのあと1ヶ月後、2ヶ月後と間をあけました(その間ほかの山には行っている)。
山の体力がついてくるとタイムが速くなるので、その変化を記録。
「筋肉」が疲れるか「息が」あがるか
登りながら意識したことは、"筋肉が疲れるのが先か、息があがるのが先か"。
◾︎ 息が先に上がる:体力不足
山の登り方を習得すれば疲れにくくなりますが、同時にやるのが難しかったので、最低限「歩幅を小さくして登る」を実践したうえで自分の身体はどうなのか、を探りました。
「登山の筋肉は登山で鍛える」といわれますが、どの筋肉が痛くなったか、疲れたか、なども確認。
\ 山の体力がついてきたとき意識したこと /
◾︎ 呼吸を意識する(しっかり吸えるように「吐く」ほうを意識)
◾︎ 股関節を使う
◾︎ ハムストリングと大殿筋を使って登る(ふくらはぎの筋肉で登らない)
一気に習得するのは難しいので、「今日は呼吸を意識しよう」「今日は筋肉に集中しよう」など、時間をかけて一つずつ身につけてました。
休憩・水分のタイミングや量を知る
「50分歩いて10分休憩」
「30~60分に一回水分補給」
登山の本を読むといろいろ書かれていますが、あくまで目安。
急登続き、緩急のある道、なだらかな道・・・山によってさまざまなので、必ず守る必要はないし、逆に、もっとこまめに摂る必要があることも。山と自分の体調に合わせて調整します。
8時間の行程で500mlしか水を飲まない人もいれば、2L飲む人もいる。必要ないから持たなくていい、というわけではありませんが、必要以上に持つと体力を消耗します。
"自分はどうか"をつねに意識していました。
自分のレイヤリングを知る
ソロ登山とは関係なく、登山のステップアップとして「温度計」を購入しました。
それまでは暖かい季節が中心だったので、レイヤリングも適当だったというか、薄手の長袖アンダーウェアとTシャツしか持っていませんでした。
◾︎ 風が強いとき、予報の気温とはどの程度違うのか
体温調節のときは必ず温度を確認し、自分のデータを蓄積していくことで、「何を着て行けばいいかわからない」を減らしていきました。
特に、春や秋の寒暖差が大きい季節のレイヤリングは難しく、無駄な荷物を担ぐことも多かったです。
「中厚手」のウールのインナーに長袖シャツを合わせて汗だくになったり、最初はさんざんでしたが、失敗しながら"自分のレイヤリング"を覚えていきました。
「地形」を把握・地図読みに取り組む
山歩きに慣れてきた頃、"地図読み"の練習を始めました。
本は、続けられそうな読みやすいものを1冊準備すればOK。読図の講習会などに参加するのもよいです。
コンパスの使い方や地形の見方を本で学んだあと、高尾山で実践登山。
コースタイムや情報が記載された「登山地図」ではなく、国土地理院の「地形図」を購入。それを片手に"尾根と谷"を把握しながら、いつものコースを歩きました。
分岐ではコンパスを使用し、定規で残りの距離と時間を予想。実際どうだったかを振り返る。
地図読みは今でも完璧とはいえませんが、ソロで歩く以上、知っておく必要があります。
今は、GPSも使用してログを取っていますが、デジタルは電池なので、アナログを身につけることは重要です。
コンパスは「SILVA」を使用。安い物は狂いやすいこともあるため、「SILVA」や「SUUNTO」など、名のあるメーカーのものが安心です。
長めの距離を歩きまくる
一通りトレーニングを積んだところで、「人が少ないコース」「奥高尾」「南高尾」「北高尾」へと足をのばしました。
あえて、マイナーコースを選んで"人がいない山"の体験を増やし、歩く距離も長くしました。
ロングトレイルが好き(歩くことが好き)だったので、興味の向くまま自由なコース設定をして、とにかく歩く。
特に、「北高尾」では打ちのめされました。高尾山域で"一番キツイ"とされるコースですが、6月の蒸し暑い季節に高尾駅~相模湖駅へ縦走。そのときは、水も体力もギリギリで・・・
序盤で会った男性に「ここはキツイよ」と忠告を受けていましたが、当時の私は高尾山にぶん殴られた気分でした。
\ 冬のトレーニングに最適な「北高尾山稜」/
遭難に関する本を読む
トレーニングと並行して、"遭難に関する本"を読み漁りました。
どんな遭難パターンがあるのか、どう行動すればいいのか、を知識としてストック。
「道迷い」などの身近な遭難は、アルプスのような高山よりも、近郊低山の方が多いです。
低山は"林業などの作業道"が多く、道迷いを起こしやすい。また、登山道を示すピンクテープと作業用のピンクテープが混在するため、それも原因になります。
周到に準備する高山よりも、ふらっと行く低山での遭難。「近場だから登山届はいいや」とか、山の名前だけ家族に伝えるなど、些細なことが重大な事故に繋がるパターンも多いです。
有名な山岳遭難から奥多摩などの身近な山域の遭難まで、いろんな本を読みました。
【ステップ②】奥多摩・丹沢・秩父エリアでソロ登山を実践
高尾山でのトレーニングを続けながら、奥多摩、丹沢、秩父エリアに範囲を広げていきました。
学生の頃から通っているエリアでしたがソロで歩いたことはなく、次のステップとして通いました。
高尾山域ではほとんど心配のない"クマ"の不安もでてきます。
「標高」と「標高差」を上げる
標高を2,000m近くまで上げつつ、"標高差1,000m"を目安にしました。
「丹沢」は体力トレーニングに最適な山域で、塔ノ岳の"バカ尾根(標高差約1,200m)"で急登続きの登山を味わうなど、高尾山域とは違う登山を。
\ こんな登山をしていました /
◾︎ 鷹ノ巣山~奥多摩駅の長距離コース
◾︎ バカ尾根経由で丹沢山ピストンのタイムを測る(蛭ヶ岳まで行けるか計算)
鷹ノ巣山〜奥多摩駅への「石尾根」は人がまったくいなくて不安と怖さがありましたが(平日)、達成感があり、自信にもなりました。
岩場のある山で「三点確保」の練習
八ヶ岳やアルプスに行きたいと思い、岩場のある山で"三点確保"の練習を。
ただ、アウトドアメーカーに就職し、入社後すぐにクライミング(ボルダリング)を外岩からロープまで教わっていたので、基本は身についていました。
それらの動作を登山で確認する形で、「日和田山」「伊豆ヶ岳」「岩殿山」などを歩きました。
【ステップ③】人気の山域から「アルプス」を知る
夏がきて、憧れのアルプス登山の計画をしました。まずは、「アルプスはどんなところか」を知るために、人が多い"北アルプス"の山へ。
初アルプスは「燕岳」(友人と)
初めてのアルプスは「燕岳」の山小屋泊。ソロではなく、大学の後輩と一緒に行きました。
平日の奥多摩よりも賑わっていて、疲れることもなく、ただひたすら楽しかった。
天気にも恵まれ、初めてコマクサを見て、アルプスの稜線を見て、槍ヶ岳を見た感動を鮮明に覚えています。
初めてのアルプスには、とても良い山でした。
立山三山縦走(ソロ)
夏のアルプス2つ目に選んだのは「立山三山縦走」。初めての"ソロアルプス"だったので、人が多い山域で考えました。
燕岳で見た「稜線」が忘れられず、雑誌でひと目惚れした「立山三山」をチョイス。「雷鳥荘」に泊まり、室堂からぐるっと一周する計画で。
早朝、人気のないハイマツ帯を登るのは少々不安でしたが(クマがでないか)、夜明けの美しさですべてを忘れ、3,000m級の稜線歩きを知り、雷鳥にも会えました。
立山三山の縦走は、つねに「室堂」が見えているため安心感があり、人も歩いているのでよい選択だったな、と今でも思います。おすすめです。
立山三山のあとは、「火打山〜妙高山」の山小屋泊縦走をしました。
涸沢で初めてのテント泊(ソロ)
すっかりアルプスに魅了され、次のステップで"ソロテント泊"を計画。やはり人が多い場所を選び、紅葉の「涸沢」へ。
荷物が一気に重くなり(まだ軽量化を知らない)、肩と腰を痛めながら涸沢へ。
ピークの少し手前だったし、「今年の紅葉は微妙」といわれた年でしたが、初めての"涸沢"に圧倒されっぱなし。
翌日は午後から雨予報でしたが深夜から降り出し、初めてのテント泊で"雨撤収"。それも、よい体験となりました。
【ステップ④】日本全国の山へ
登山の幅を広げていくと、いろんな「失敗」をします。それらを記録、反省しながら、山を深めていきました。
\「登山の失敗談」についてはこちら /
経験を積み、ソロでどこでも行くようになりましたが、山は日々勉強。
何が起こるかわからないし、不安や心配はつねにありますが、"自由なソロ登山"をマイペースに楽しんでいます。
登山のステップアップに最適な山の条件は?
◾︎ 3~5時間で往復できる山
◾︎ ある程度人が歩いている
◾︎ コースが充実している
◾︎ 短距離・長距離どちらも可能
登山のステップアップ、ソロ登山の練習には、近場の低山が向いています。
東京なら「高尾山」、関西なら「六甲山」のような、バリエーション豊かに楽しめる山は条件がとてもよい。
足繁く通える、自分の"ホームマウンテン"を見つけてください。
まとめ
ソロ登山を実現するために、どのようなステップを踏んでトレーニングをしていたか、をご紹介しました。
グループ登山でも、ツアー登山でも、何が起こるかわかりません。指示してくれる人が滑落や怪我をする可能性はゼロではない。つねに"自分で判断する"知識は、誰にでも必要です。
リスクもあるためソロ登山を勧めるわけではないですが、ソロ登山の知識や経験は、安全登山にも繋がります。
どこで何時間休憩しようが、満足するまで写真を撮ろうが、絵を描こうが、すべて自由。ソロにはソロの、魅力がたくさんあります。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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