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山小屋バイトの休息日。開山日に登る花盛りの至仏山

関 東 • 甲 信 越

2022.7.1(金)
天気:朝靄→晴れ☀︎
気温:15℃前後
風:北西 5〜6m/s

歩き人たかちです。

山小屋生活最後のお休みは至仏山へ。7月1日は至仏山の開山日であり、休みの被った他の小屋の人と一緒に登りました。花の百名山としても人気の至仏山はまさに花盛り。早い梅雨明けの山日和、彩り豊かな至仏山を見晴からぐるりと一周。

  行程
ーーーーーー
見晴ー竜宮ー牛首ー山の鼻ー高天原ー▲至仏山ー▲小至仏山ーオヤマ沢田代ー鳩待峠ー山の鼻ー牛首ーヨッピ吊橋ー東電小屋ー見晴

▲コースタイム:10時間35分
▲歩行距離:21.7km
▲累積標高差:登り下り約960m
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気がつけば、白い虹。見晴ー山の鼻

*見晴ー竜宮ー牛首ー山の鼻:CT1時間50分*

4時30分出発。梅雨が明け、どんより感のないすっきりとした朝靄が続いていましたが、今朝の至仏山方面は真っ白。燧ヶ岳は晴れていましたが、自分たちが徐々に朝靄の中に入り込み、やがて見えなくなりました。天気予報の晴れマークを信じて木道を歩く。

空には薄いブルーが見えたり消えたり。朝靄のミストを浴び、肌を少し濡らしながら。アームカバーを下ろしていると少し肌寒い。

梅雨明けの暑さは尾瀬でも例外ではなく、日陰のない木道歩きは溶けてしまいそう。涼しいうちに至仏山の急登に取りかかろうと出発しました。

山の鼻までに晴れるだろうか・・・若干の不安と、大丈夫だという自信を織り交ぜながら。

竜宮を過ぎ牛首へ。至仏山が見えた!

時計をチラチラ見ながら歩いていると、牛首の少し手前で、背後からポワーッと柔らかい光が靄の中に。

晴れる☀︎晴れる☀︎と喜んでいると・・・

「え?あれって白い虹・・・?」とSさん。

近すぎてスマホのカメラで半分しか収まらなかったけど、靄の中を太陽の光がズバーッと抜け、前方には大きな大きな白い虹。

「白い虹を見るなら竜宮まで行かないと難しい」と言われ、時間的にも休みじゃないと見に行くことはできなかったため、声を上げて驚きと喜び。

木道から落ちないように見上げながら歩いていると、いつの間にか虹の下をくぐっていました。

最後の最後に見ることができた。「七色の方が綺麗だよ」と言われたけど、シンプルな白一色も素敵です。

また少し景色を変えた湿原は帰りにゆっくり見るとして、満足気に山の鼻へ。6時前に到着して朝ごはんタイム。

至仏山は、山の鼻から山頂までの道は一方通行になっており、登り利用のみ。蛇紋岩に咲き乱れるお花畑を見るために、鳩待峠から一周する人が多いです。

6時頃の山の鼻は、前泊組と鳩待峠を朝一に出発した人たちがちらほら。至仏山荘ではちょうど朝食の時間でした。

「今日は混むよ〜渋滞するかもよ〜」と言われましたが、この時点ではそうでもなさそう。昨日握った大きめのおにぎりを頬張り、6時半、いざ、花の百名山へ。

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夏、花、真っ盛り。山の鼻ー至仏山

*山の鼻ー高天ヶ原ー至仏山:CT3時間*

山の鼻から尾瀬植物研究見本園の中へ。吸い込まれるように至仏山の樹林帯へ歩いていきます。

土と木道を経て、だんだん石やら岩の道へ。クマザサの中をぐんぐん登る。風のない樹林帯は蒸し暑く、7時前から容赦なく汗が噴き出す。

道はやがて蛇紋岩中心に。この岩がツルツル滑る。乾いていてもスベスベしていて滑りやすいですが、雨に濡れると特にツルッツル。

至仏山の森林限界は低く、1,700mあたり。視界が広がるのも割と早く、振り返ると尾瀬ヶ原の姿が大きくなっていく。なんだかぼや〜っとした空気感で、尾瀬ヶ原は薄いベールに包まれているようでした。

滑りやすいところには鎖も。

大文字草。花が「大」の形をしていて、赤と黄色がかわいいお花。結構いろいろなところに咲いていて、槍ヶ岳の西鎌尾根など、険しい環境にも咲いていました。湿気った岩上を好む花。

ハクサンコザクラ。他の山に比べるとちょっと小ぶりで、ハクサンコザクラではない?と思いましたが、ハクサンコザクラとのこと。生育環境によって大きさや色味が微妙に異なりますが、至仏山のはミニマムでより愛らしい。蛇紋岩ロードに群生しています。

至仏山までの道のりは割と急登続き。ひたすら登っていく中に、ベンチは2箇所あります。

山頂がグレーの雲に覆われはじめた。太陽が遮られ涼しいものの、もしかして予報程晴れない・・・?と、ちょっと不安に。

休憩していたら日光澤温泉から入り、燧ヶ岳と至仏山を経て鳩待峠まで、という70歳のご夫婦にお会いしました。2泊3日、テントを担いで。とても明るいお二人で、「いや~もう、疲れちゃって」と言っていましたが、しっかりした足取り。こんな風に歳を取りたいな~と思う人が、山にはたくさんいます。

昨日は山の鼻のテント場に泊まったとのことでしたが、「もう、アブとブヨがすっごくて、ゆっくりなんてできやしない!テントはもう寝るだけ!」と。私自身も刺されまくっていますが、まだトンボもちょろちょろ出だしたくらいで、この時期のテント泊はどこも痒い虫と格闘。刺さなければ放っておくのになあ。

蛇紋岩から階段へ。はじめはちょっとガタガタ。

チングルマ。見頃がまだあった。

クモイイカリソウ

ハクサンシャクナゲ。燧ヶ岳をバックに…と思いましたが、肉眼でもうすーい感じで写らない。

 

ホソバヒナウスユキソウ、いわゆる"エーデルワイス"。高天原周辺からわんさか咲いています。

ムラサキタカネアオヤギソウ

階段は徐々に綺麗に、歩きやすくなります。天空の散歩道。下りたいけど下れない。

2箇所目の休憩テラスを通過。

最後にちょっとだけ雪渓歩き。

そして、山頂に到着◎

到着時はまだグレーの雲に覆われ、新潟側の景色が見えませんでした。時間はたっぷりあるので、のんびりと晴れ待ち。

その間にどんどん人が登ってくる。反対側からの人は意外に少なかったです。花を見るなら周回が楽しいし、森林限界からの登りはとてもいい。

 

 

30分くらいすると、厚めの雲は消えて青空に。開山日にふさわしい山日和。残雪の山並みが素敵だなあ。

尾瀬ヶ原側のベールもなくなり、燧ヶ岳もくっきりしました。

↓至仏山より↓

1時間程各々好きなように過ごし、小至仏山へ。

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尾瀬草を探して。至仏山-鳩待峠

*至仏山-小至仏山-オヤマ沢田代-鳩待峠:CT2時間5分*

人も多くなってきて、そろそろいきますか~と腰を上げる。

至仏山から小至仏山までは稜線歩きとなりますが、この稜線、とっても好き。

ハイマツの花。この赤いのは実だと思っていたのですが、花だということを今更知りました。見た目だけで判断できないな~と、自然の奥深さを知る。

ベニサラサドウダン

「ドウダン」の漢字は「満天星」。なんと素敵な!と思いました。サラサドウダンがブワーっと咲いていたり、地面に散らばっている様子は、星が散りばめられているような美しさがあります。そんな意味ではないのですが、漢字がしっくりくるなあと。

この稜線にもエーデルワイスが咲き乱れています。ウスユキソウを見つけるとつい触ってしまうのですが、エーデルワイスはウスユキソウの中でも特にふわっふわっ。フェルトをもう少し柔らかくしたような触り心地で癖になる。

歩くのが、もう、楽しい!

至仏山方面。

小至仏山に到着。秋のオレンジ色に染まった尾瀬ヶ原もよかったですが、初夏のグリーンもやっぱりいい。

30ほどのんびり休憩しつつ、鳩待峠から見晴へ戻らなければならないので、ぼちぼち小至仏山ともお別れ。

木道の階段を下って行きます。この間にもお花はたくさん。

青空に喜ぶハクサンイチゲ。

尾瀬草はどこにあるのかな~と探しながら歩く。「地味な花だからよく見て歩きな〜」と言われました。

すると、前を歩く人が一生懸命写真を撮っていて、それが、まさに尾瀬草でした。「あ!尾瀬草ですか!?」と、すかさず。

確かに見逃してしまいそうな、草のような見た目で、白い小さな小さな花が咲いています。

尾瀬草は"氷河期の生き残り"と言われ、至仏山と谷川岳にしか咲いていない貴重な花。人知を超えた何月を生き抜くには、シンプルな姿が一番なのだろうと思う。

自分で見つけたわけではないけど、無事に尾瀬草を見ることができて悔いはない。下りにもちょっとだけ雪渓。

オヤマ沢田代。この先樹林帯に突入していきます。

こちら側の道は緩やかな傾斜で、単調な道。この日、土は乾いており、ドロドロも全くない。

気温が上がっていく。

昼寝したい大きめの岩。最後の展望ポイント。

暑い!暑い!と言いながら鳩待峠に到着しました。

鳩待山荘でお決まりの花豆ソフトを食べ、1時間程日陰で休憩。ここから私は尾瀬ヶ原へ、一緒に登ったS さんはアヤメ平経由で見晴へ戻ります。

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ちょっと寄り道。鳩待峠-見晴

*鳩待峠-牛首分岐-ヨッピ吊橋-東電小屋-見晴:CT3時間30分*

Sさんと別れ、山の鼻まで一気に下る。

一週間前にアヤメ平で通ったときは、まだワタスゲがちょろちょろでしたが、結構増えていました。ワタスゲの白にカキツバタの紫が混ざり、この時期はとても上品な湿原になります。

見晴周辺では遠くに咲いていましたが、山の鼻の方では木道脇にたくさん。

小屋の奥さんは「この時期が一番綺麗でいいんだよ~」と言っていましたが、私もこの時期が一番好き。秋もすっごくいいけど、真夏まではいかない、成長途中の緑が愛おしくて、優しい初夏の尾瀬。閑散期なのが不思議なんだよなあ。

ヒツジグサも増えてきた。

逆さ燧は今日も見られず。

牛首分岐からは真っ直ぐ帰らず、ヨッピ吊橋の方へ。東電小屋の方は散歩でよく歩きますが、時間的にヨッピ吊橋から竜宮へ向かってしまうので、この区間は山小屋生活中初めて歩きました。

ニッコウキスゲが出番待ち。この辺りは防鹿柵で囲われているので、蕾がたっぷり。2年前に歩きに来ましたが、ここと大江湿原はとても綺麗です。

また、牛首からヨッピ吊橋の間にある池塘が好きなのです。

夏だあ・・・

こちらでプチ逆さ燧。

東電小屋の方もワタスゲが増えた増えた。

東電小屋もポツンとしていて、いいですね。

トキソウもたくさん咲き始めています。ラン科の花で、上品なお嬢さんのようで素敵です。薄いピンクの花びらに、濃い目のピンクの筋がスッと入っていて、フォルムも綺麗。サワランも混ざって咲いています。

正面から。東電分岐の辺りもたくさん咲いていました。

いつもの散歩道を戻り、見晴に帰ってきました。今日は本当に最高の山日和。燧ヶ岳と悩みましたが、至仏山で花を見るなら開山日とともに登る勢いがいい。何もかも見頃でした。

尾瀬の生活も残り2日。せっかくなので、尾瀬小屋で夕飯をいただきました。アイスクリームは2回食べましたが、ごはんメニューは休みの日でないと食べられないので。ずーっと気になっていた。

ポルチーニ茸とトリュフ風味のボロネーゼパスタ

鹿肉を使用したジビエパスタ。麺はモチモチ、ソースは濃厚。程よくかかっているチーズがこれまた美味い。パンも付いて、めちゃくちゃ美味しかったです◎

他の山小屋のアルバイトさんも、ちょこちょこ食べに行っていました。こんなレストランメニューがあったら食べたくなりますね。

仕事の日は滅多に見られない夕焼けを。今日は雲が一段と芸術的。

木道に出ると、小さな虫が顔の周りを飛びまくり。うっかりしていると写真にまで写り込んできて非常に厄介ですが、移りゆく美しい瞬間を見逃すまいと、手をブンブン振り回しながらの鑑賞。足もたぶん、また刺されてる。

虫が邪魔過ぎて、諦めて小屋へ帰る人もいましたが、今日も最後まで見届けました。

ここにいるからこその景色。いい一日だった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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コメント

  1. 幻想的な尾瀬ヶ原の風景、堪能させて頂きました。
     私も40年ほど昔の学生時代、春に1度、夏にテントで1度、秋に2度、延べ2週間ほど尾瀬を歩き回りました。至仏は夏と秋にいずれも鳩待から登って山の鼻に降りるコースです。当時から蛇紋岩のコースの下りの転倒や登山道の荒廃が指摘されていましたが、閉鎖を経て登り専用となっているのですね。春スキーヤーが塩を撒くのが問題にもなりましたね。蛇紋岩は普通、暗緑色で、至仏の下りもそうした色だった記憶なのですが、こんなに赤い色に酸化・風化されたのでしょうか? 記憶もすっかり風化しているのかも。これだけ荒廃・侵食が進むと、一時の閉鎖も頷けますね。秋の山頂から眺める代赭色の湿原と、取り囲むブナ林の茶色が溜息が出るほど綺麗でしたし、夏は超塩基性岩特有の高山植物群落が登る者を魅了して止まないですね。
     夏は山ノ鼻にテント、それから原を横断、燧にヒーヒー言いながら登って、長蔵小屋でテント。
     秋は富士見峠からアヤメ平経由で鳩待峠泊、至仏から原を横断、長蔵小屋泊。
     春の殺人的混雑に驚き、夏の湿原の花々の美しさに感激、秋の静謐な燧裏林道や人気のない沼から富士見峠・アヤメ平への道、今はなき富士見峠小屋で食べた尾瀬リンゴ。尾瀬は良い思い出でいっぱいです。台風一過の秋の下田代で、和服姿の女性が何の荷物もなしにスタスタと歩き去ったり、大清水から某大学教授の車で渋川まで送ってもらったり、三平峠下で平野長靖さんの奥さんにお会いしたり、色んな事がありました。
     沢山の美しい写真を見て思うのは、そう言えば十字路に泊まった事なかったなぁ。尾瀬ヶ原に入るルートが、富士見下から鳩待峠に取って替わられたせいでしょうね。
     私も沢山の写真を撮りましたが、フィルムの時代ゆえ、こんなにこまめに写すことなど叶いません。もっともっと鹿害のないニッコウキスゲ咲き乱れる、かつての原の様を見てみたいものです。

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