歩き人たかちです(@takachi_aiina)
2024年7月31日から2泊3日で、トムラウシ縦走をしました。トムラウシ短縮登山口スタートで、層雲峡へ下山。
飛行機利用で、2泊3日の短い山行。クマスプレー、迷いませんか?
私は結局、クマスプレーを持たず、熊鈴2個と音が大きいSOS用の笛。
縦走では、"ヒサゴ沼"でヒグマの親子を目撃(棲みついている個体)。
縦走中にお会いした、狩猟をするガイドさんや、黒岳石室の小屋番(兼ガイド)さんにヒグマのことを伺いました。
大雪山や北海道の山を歩く方の参考になれば幸いです。
\ この記事の内容はこちら /
◾︎ 熊鈴・笛・ラジオ、結局どれが効果的?
◾︎ 内陸と海側でヒグマの生態が異なる
◾︎ トムラウシ縦走のヒグマ情報
北海道の山でクマスプレーは必要か?持つなら【ヒグマ対応】モデルを
山域やコースにより意見が分かれますが、基本的には"持った方がいい"が多数。
気性が荒いヒグマや、人間の味を覚えてしまったヒグマに出会う可能性は、0ではない。お守り代わりに持つだけでも、安心感が桁違いです。
しかし、距離や風の向き、周囲の状況を瞬時に判断して、クマスプレーを正しく使うことはとても難しい。
*クマスプレーの使い方は、モンベルHP「詳細情報」をご覧ください
クマスプレーは使わないことが前提で、"命にかかわる最終兵器"として使うもの。無闇に使うと、自分や周囲の人に被害が生じます。
新幹線やロープウェイで、"誤噴射"の事故もありました。使い方を理解することに加え、持ち運びや保管にも十分ご注意を。
クマスプレーには、「ツキノワグマ用」と「ツキノワグマ・ヒグマ用」の2種類があります。ツキノワグマ用はヒグマには効かないので、購入の際は要確認!
\ こちらはツキノワグマ用 /
北海道で、コンパクトな「POLICE MAGNUM」や「TW-1000」を常備している人もいますが、ヒグマには対応していません。
\ ヒグマ対応はこちら /
熊鈴・笛・ラジオ結局どれが効果的?大事なポイントは【音で知らせる】こと
「何でもいいから音を出して存在を知らせること。変な出会い頭にならなければ大丈夫」
鈴よりラジオがいい、音は高い方が響く、クマには低い音がいい・・・いろいろな意見がありますが、クマに詳しい方には「何でもいいから、音を出して存在を知らせるのが大事」と言われます。
熊鈴、笛、ラジオ、手を叩く、声を出す。クマに届けば、どれも正解。クマと向き合っている人ほど、"どれが・何が"ということは気にしていない印象。
鉢合わせの可能性が高く、事故も多い山菜取りなどでよく使われる"南部熊鈴"。音色が違う鈴が2つ(ものによって3つ)連なり、よく響きます。高価ですが、伝統的な鈴です。
「熊鈴は効果がない」と言われることもありますが、狩猟をしているガイドさんも「大雪山のクマは、鈴の音なんて別に気にしていない」と仰っていました。
「だからといって、人を襲うような個体もいない。人間の存在を知らせてあげて、変な出会い頭にならなければ大丈夫」と。
音や人間の匂いに反応して逃げるクマもいれば、人のことなんて気にもせず、のんびり餌を食べ続けるクマもいる。
クマの性格もそれぞれで、どんなクマに出会うかは運。
ソロで歩かない、鈴と笛のダブル使い、音の大きいアイテムを使うなど、できるかぎりの対策を講じるしかありません。
ちなみに、クマスプレーを使うとき、人間はクマの"風上"にいることが前提ですが、人間の匂いで存在を知らせる場合も、やはり風上が有利(そんな都合よく風は吹きませんが…)
\ モンベルではこんなアイテムも /
北海道の内陸と海側のヒグマで生態(気性)が違う!
内陸のヒグマは穏やか、海側のヒグマは気性が荒い
ツキノワグマとの比較で、"ヒグマは肉食"と言われますが、北海道の内陸と海側で、生態が多少異なります。
「日高のヒグマはやばい」と聞くこともありますが、これに関しても、北の内陸よりも南の海側の方が注意が必要とのことでした。
クマの性格もそれぞれなので、一概には言えません。上記を念頭に、"内陸か海側か"を意識すると、クマの見方が変わるかもしれません。
小屋番(兼ガイド)さんも、「この前トムラウシの方に行って会ったクマは、ちょっとイライラしてたね〜。たぶん、食事の邪魔されて嫌だったんだろうね」なんて、話していました。
そこまで見る力は、私にはありませんが、ヒグマの生態を理解することが大切だと思います。
トムラウシ縦走の「ヒグマ情報」クマスプレーを持たずに歩いてどうだったか?
トムラウシ縦走のヒグマ情報
\ みなさんから聞いたヒグマ情報 /
◾︎ ヒサゴ沼への登山道周辺(旭岳側)に、親子のヒグマが棲みついている
◾︎ 三笠新道(利用禁止)付近(高根ヶ原)はヒグマ出没ポイント。斜面を眺めると見られる確率が高い
◾︎ 白雲岳避難小屋周辺の雪溪にはよく出没する
トムラウシ温泉からの日帰りコース
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今回、東大雪荘からの「トムラウシ温泉コース」をスタートする予定でしたが、車に乗せていただき、短縮登山口から。
前日に「トムラウシ温泉コース」の登山者名簿を見ましたが、天気がいい予報の土曜日で4〜5人ほど。利用する人は少なく、薄暗い時間帯や、天気が悪い日は不気味な雰囲気だそうです。ササに覆われた樹林帯でした。
東大雪荘のスタッフさん情報では、山頂直下の「南沼キャンプ場」から離れた(数百メートル)雪溪での目撃以外、日帰りコースでの情報は、今期はまだないとのこと(2024.7.31時点)。
大雪山のヒグマは、主に高山植物の新芽を食べているため、雪溪付近の出没が多くなります(雪溪が溶けた場所から花が咲くため)。
縦走路は全体的に高山植物の宝庫であり、旭岳周辺やトムラウシ単体に比べて人がぐっと減るため、目撃情報も多くなります。お花の咲き始めの時期は特に、ご注意ください。
ヒサゴ沼避難小屋付近
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トムラウシ縦走でヒグマを目撃したのは"ヒサゴ沼"。避難小屋に泊まっていたガイドさんが教えてくれました。時間は18時頃。避難小屋からは200m以上離れていました。
ただ、ヒサゴ沼への登山道(旭岳側)近くだったので「朝、出会い頭にならないように気をつけてね」と。
昨年生まれた子グマを連れた親子で(今年親離れ)、ヒサゴ沼周辺に棲みついているとのこと。ガイドさんが2週間前に来たときも、姿を現した個体だそうです。
三笠新道周辺(高根ヶ原)
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高原沼を眺められる高根ヶ原は、ヒグマの出没頻度が高い場所。斜面を観察すると、高い確率でヒグマを見ることができると、地元の方も仰っていました。
高原沼へ続く「三笠新道」は、ほとんど閉鎖されています。
縦走路は、ハイマツの中を通ったり、一面ひらけた大地だったり。見通しの悪い場所もあるため、音を出しながら。
白雲岳避難小屋付近
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ヒグマの出没により、テント場が利用禁止になることもある白雲岳避難小屋。
周辺は、遅くまで雪溪が残るため、出没率が高いです。情報は、白雲岳避難小屋のHPにも出るため、利用前に要確認。私が訪れたときは、いませんでした。
クマスプレーを持たずに歩いた結果
一般登山道でのクマスプレーの要・不要は、正解がないと思います。使用する可能性が極めて低いことから、コスパや運搬・処分の手間を優先に考えてしまいます。
しかし、ヒグマにもあらゆる個体がいることや、万一の鉢合わせを考えると、保険として持つ方が安心。
北海道100名山、私は、結局一度もクマスプレーを持ちませんでした。メジャーコースなら、平日でもある程度登山者がいます(天気次第)。
しかし、100名山でもマイナーコースや、天気が優れない場合は登山者がぐっと減る。やはり、不安はつきまといます。
\ クマスプレーを持った方がいい場合 /
◾︎ 山菜取りや釣りなど、鉢合わせの可能性が高い
◾︎ 北海道の山に行く頻度が高い
◾︎ 人身事故のある(異常個体のいる)山域に入る
トムラウシ縦走は、水・木・金の平日。初日のトムラウシは晴れ予報だったため、平日でも15〜20台ほどの車がありました。定期的に人に会い、前後から熊鈴の音が聞こえるような状況。トムラウシ山頂までは、恐怖心もなく歩けました(コマドリ沢までご一緒した方がいた)。
トムラウシ山頂から先は人が一気に減り、旭岳方面への縦走者は自分1人。大きな低気圧後だったため、トムラウシ方面への縦走者も少なかったです。それでも、100名山を繋ぐ縦走路なので、少ないながら登山者にはお会いしました。
ハイマツやササで視界が遮られる箇所もそれなりにあるため、出会い頭には要注意。見通しの悪いところでは定期的に笛を吹き、周囲の音や気配にも気を配りました。
トムラウシ方面に歩く人が圧倒的に多いので、逆方向だったことも、登山者にお会いできた理由の一つ。すれ違う人たちとクマ情報を交換しながら歩けました。
ヒグマ頻出ポイントである"高根ヶ原"や"白雲岳避難小屋"でも、気配もなく通過。今年は、お花の時期が例年より1週間〜10日ほど早く、登山道周辺は秋の花が咲きはじめていました。それもあってか、登山道では糞さえ見なかったです(見たという人もいた)。
以前、ヒグマに遭遇したのは「幌尻岳」。チロロ林道からのピストン。「ヌカビラ岳」への樹林帯通過中、ドスドスドスドス!と、一目散に逃げていきました。姿は見ませんでしたが、樹林帯はやはり怖いですね。
クマスプレーの運搬方法!飛行機なら「宅急便」や「レンタル」をうまく活用
\ クマスプレーの運搬方法 /
◾︎ Amazonでのコンビニ受け取り
◾︎ 現地レンタル
佐川急便の「陸送」で郵送
クマスプレーは飛行機NGなので、宅急便の場合は「陸送」になります。航空便よりも時間がかかるため、最低1週間くらいは余裕をもって。
*ヤマト急便・日本郵便はスプレー缶の郵送NGのため、「佐川急便」一択です
\ 郵送先はこちら /
◾︎ 佐川急便の営業所(営業所止め)
◾︎ レンタカーの店舗(要相談)
宿やホテルに前泊する場合、予約の時点で問い合わせれば、大抵は受け取ってもらえます。
前泊をしない場合(車中泊など)、佐川急便の"営業所止め"の利用が可能(利用方法はこちら)。新千歳空港や千歳空港内の営業所に送ることも可能ですが、場所がわかりづらい、身分証(写真付き)や入場許可証が必要など、通常の営業所よりも面倒なようです。
レンタカーを予約する場合、レンタカーの店舗に郵送できる可能性もあるため、予約時に問い合わせてみるといいです。
Amazonの「コンビニ」受け取り
Amazonのコンビニ受け取りも、方法のひとつ。コンビニ天国の日本では、とても便利です。
1週間程度、保管期間があるため、余裕をもって注文すればスムーズ。佐川急便の営業所に比べ、受け取れる場所が断然多いため、車を利用しない方にはおすすめ。
Amazon利用のメリットは、好きな商品を購入できること。アウトドアショップやホームセンターで現地調達する場合、希望の商品がない、あるいは、売り切れていることも多いです(ホームセンターにはないことも)。お盆の頃は特に、クマスプレーが品薄になると聞きました。
モンベルでは"取り置き(取り寄せ)注文"もできます。取り置き期間は2週間で、悪天候で中止になっても、商品のキャンセルが可能。Amazonよりも融通が効き、確実です(Amazonは、たまに配送不可によるキャンセルなどがあるため)。
帰宅時は廃棄、譲渡、郵送のいずれかになります。北海道の山に登る頻度が低い、本州では持ち歩かないなどの場合は、"レンタル"がおすすめ。
日数・頻度が少ない人は「レンタル」がおすすめ
日程が短い、北海道の山の頻度が低いなら"レンタル"がおすすめ。
レンタル場所が少ない、車でないと行けない、縦走の場合の返却場所がない、などのデメリットもありますが、年々、レンタル場所は増えています。
\ クマスプレーの「レンタル」取り扱い /
◾︎ 川湯ビジターセンター(阿寒摩周国立公園)
◾︎ JRニセコ駅観光案内所
◾︎ 日高山脈山岳センター
◾︎ 知床自然センター
◾︎ 知床羅臼ビジターセンター
◾︎ ルサフィールドハウス(知床)
◾︎ 木下小屋(羅臼岳の麓)
◾︎ アサヒカワライド
◾︎ Transit東川
◾︎ 層雲峡ホステル
◾︎ 山日和(郵送対応可能)
◾︎ kumasup(郵送対応可能)
◾︎ PATH TO THE MOUNTAIN(郵送対応)
*上記以外でレンタル可能な場合もあるため、ご希望の地域・山域を要確認
ヒグマの出没率が高い山域、登山者が多い有名山域では、レンタルも盛んです。ビジターセンターだけでなく、アウトドアショップや宿など、幅も広がっています。
大雪山では、旭岳周辺の宿やアウトドアショップが提携し、返却場所を変えることも可能。
しかし、トムラウシまでは対応していません。トムラウシ側の「東大雪荘」も提携していたら、今回の縦走でレンタルしたと思います。車なしのソロ縦走者には、厳しいですね。
そんな中、受け取り・返却ともに、郵送可能なレンタルサービスもあります。指定の場所で受け取ることができ、返却も郵送で完結するため、車を使わない登山者にはありがたいシステム。
ただ、1〜2週間前の注文になるため、日程が決まっていることが前提。私の場合、北海道でも直前の天気を見て決めるため、郵送対応のレンタルは利用できませんでした。
今後、縦走登山者、車を使わない登山者も利用できるような仕組みが増えると嬉しいですね。
まとめ
◾︎ 何でもいいから音出して「出会い頭」を避けることが大事
◾︎ 内陸の草食系ヒグマは穏やか、海側の肉食系ヒグマは気性が荒め。生態を理解しよう!
◾︎ 頻度が少なければ、クマスプレーはレンタルで
クマスプレーは保険と同じく、お金で「安心・安全」を買います。瞬時に判断して、正しく使うことは容易ではありませんが、万一に備え、携行することをおすすめします。
しかし、まずは"出会わない努力"を。熊鈴の数を増やす、笛を併用するなど、いつも以上に音を出して、存在を知らせることが大切です。
野生動物の棲み家にお邪魔させてもらうので、北海道にかぎらず"クマがいる"という意識で、音や気配に敏感になること。
猟師やガイドさんがヒグマに気がつくのは、"ヒグマがいることを前提に見ている"から。
クマスプレーを携行していても、100%助かるわけではありません。野生動物がつねに、生死と闘っているように、人間も意識を変えなければならない。そして、相手のことを知る。つまり、クマの生態を理解することが大切だと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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