2022.10.11-10.15
10.20-10.21
歩き人たかちです。
信越トレイル7日目。町と山を繋ぐロード歩きが大半の昨日は、河岸段丘の地形を感じながら牛を横目に歩き、ブナのトンネルに癒されながら結東温泉の「かたくりの宿」まで。
今日は、ついに、ついに、苗場山へ!"苗場山は信越トレイルで登る"と決めてから数年、ようやくこのときが訪れました。小赤沢まで集落と山を繋ぎ歩き、麓から一気に登っていきます。
苗場山の山頂ヒュッテに泊まりたかったのでかたくりの宿から一気に歩きましたが、のんびり出発して小赤沢で1泊すると秋山郷の食と温泉をさらに楽しめます。かたくりの宿でも食事をいただかなかったため、秋山郷の食を味わうことなく終えてしまい、それをちょっと後悔しています。日本のロングトレイルは、やはり食と温泉が醍醐味。
1日目:斑尾高原ー斑尾山ー赤池
2日目:赤池ー希望湖ー桂池
3日目:桂池ー仏ヶ峰ー光ヶ原高原
4日目:光ヶ原高原ー野々海高原
5日目:野々海高原ー森宮野原駅
[ section7- section10 ]
1日目:森宮野原駅ーかたくりの宿
★2日目:かたくりの宿-苗場山
3日目:苗場山ー祓川登山口
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天気:晴れ ☀︎
気温:苗場山12時 → 11℃
風:南西2m/s → 南南西4m/s
かたくりの宿-見倉橋-見倉集落-大赤沢-小赤沢-1合目-大瀬の滝-2合目-3合目-4合目-5合目-6合目-7合目-8合目-9合目-▲苗場山-苗場山頂ヒュッテ
▲ コースタイム:11時間40分
▲ 歩行距離:18.2km
▲ 累積標高差:上り2012m
下り452m
秋山郷の色[かたくりの宿-大赤沢]
かたくりの宿-見倉橋-見倉集落-大赤沢:CT4時間
4:30起床。テント内は5℃。先週の関田山脈に比べて気温はさらに下がり、ひんやりした朝を迎えました。
テントは結露でびっしょり。ひえっひえの結露で手は一気にかじかみ、撤収作業が捗らず。なんとかしまい込んでトイレを済ませ、洗面から出るお湯で生き返りました。冷たいというかもはや痛い。谷間の秋山郷、冷え込みます。
予定より遅れて6時に出発。今日は長めの行程なので早く出ようと思っていましたが、手がやられてダメでした。
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秋山郷の名物"見倉橋"を渡り、見倉集落を抜けていきます。
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下った先にも民家がありましたが、こちらはちょっと公園のような雰囲気。
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秋山郷トレッキングコースマップ。ここで気がつきましたが、ちょっと気になっていた"結東の石垣田"はかたくりの宿からそこまで遠くはありませんでした。
鳥甲山と苗場山の溶岩が崩れた落石を積んだ石垣で、何段も組まれた棚田が美しく全国農村景観百選に選ばれています。歩いて行ける範囲ではないと勝手に思い込んでいたので、見てみたかったなあと。
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ターコイズブルーのような、暗めのミルキーな水色がちらり。
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味のある見倉橋に到着。ゆらゆら揺れる吊橋、一度に渡れるのは6〜7人が限界とのこと。控えめなミシミシユラユラを一人で味わう。
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水の色がまた変わる。大杉渓谷とか奥祖谷とか日本には美しい渓谷がたくさんありますが、すべて全く違う色や雰囲気。規模に関わらず、どれもこれも地形と色彩が豊かで個性的。朝なのでまだ日が当たっていませんが、時間帯によって色が変わる渓谷はいつまでも眺めていられる。
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ちらちらと色づいた葉っぱがいいアクセント。紅葉のピークは素敵だろうなあ。昨日、日の当たっている時間にも来ればよかった。見倉橋、思っていた以上にいい場所でした。
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小豆坂と同じような傾斜の斜面を登っていきます。こちらはスパンの短いジグザグ。見倉集落と結東集落を繋ぐ大事な道。現在も車道で行くには少し遠回りになります。対岸の集落、直線距離だとすぐなのに、山と川の日本らしい地形です。
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登り切ると見倉集落。4,5軒くらいの小さな集落。田んぼがあって、畑があって、自然の暮らしを営む小さな里山。朝の見倉集落は、煙突から煙が出ている平和な風景でした。
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苔むして、自然と人が溶け込んでいる雰囲気がとてもいい。
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どのお宅も薪を綺麗に積んでいる。
はじめは車道をそのまま上がって行くのかと思いましたが、コースは集落の中を通っています。
車道を少し上がり、ひんやりしたロードから大赤沢の案内に従い山道へ。途中に土砂崩れがあるようで、雨天時はぬかるみに注意という案内がありました。
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まだ日の当たらないブナの森を緩やかに。乾き気味の落ち葉の音がサクサク響く。
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土砂崩れあと。大中小さまざまな石や岩がドジャーっと登山道を横切って流れていました。通行には問題なし。
この先に"大栃"の案内あり。道を逸れて15分くらい登るようです。見倉の大栃は"新潟県内最大級"の栃の巨木。全国森の巨人たち100選に選ばれています。スルーしちゃいましたが。
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風穴も寒いからスルー。かたくりの宿の次に小赤沢に泊まる場合は、このあたりをゆっくり楽しめますね。
風穴のすぐ先には"小松原湿原"経由の苗場山登山口がありました。地図を見ると等高線詰まりまくりでかなりの急登のようですが、登り始めから結構急でした。でも、小松原湿原がなんかとても良さそうな気がする。
駐車場との分岐から見倉トンネルの迂回路へと歩いていきます。
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ブナ林のトラバース道。フラットでとても歩きやすい。
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ブナの個性が光る、ブナの美術館トレイル。豪雪地帯がつくる造形美はとても面白い。どんな紆余曲折を経てこの形になっているのか、ついまじまじと・・・自然環境が厳しいほど、何においても見応えがある。
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迂回が終わり車道に合流。大赤沢まで3.4kmのロード歩き。この県道はトラックが結構通るので要注意。
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学校の送迎バスなのか、子どもがたくさん乗ったバスが通りすぎていく。あの人何で歩いているんだろう?という目で一番後ろの子が私を見ていました。
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国道と合流して、大赤沢に到着。ここには「山源木工」というお店があり、地図には食事マークがついています。8:30頃到着し、1階の木工品が置いてあるところは開いていましたが、食事は10時からのようです。そのまま小赤沢へ向かいます。
山源木工
苗場山の麓[ 大赤沢-1合目 ]
大赤沢-小赤沢-1合目:CT2時間10分
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車道を少し進むと山道への案内。小赤沢まで車道から離れます。
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はじめに山の斜面を一気に上がっていく。今日一の傾斜。気温が徐々に上がり、ふくらはぎがピーンと張る粘土質の道に少し汗ばみます。
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なだらかになり気持ちよく歩いていくと、パッと開けて「甘酒村跡供養塔」がありました。天保の飢饉により全滅した村で、わずか2戸だけだったそう。そして、"牧之の道"へと繋がっていきます。
「北越雪譜」で有名な鈴木牧之。1828年に初めてこの地を訪れた鈴木牧之は、「秋山記行」に当時の秋山郷の文化や風習を記しました。出版には至らなかったものの、貴重な資料として保存されています。その鈴木牧之が歩いた新潟県津南町と長野県栄村の県境あたりから小赤沢までの区間が"牧之の道"として残され、ちょっとしたハイキングコースになっています。
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牧之の道は、信越トレイルでは珍しい杉林の道。豪雪地帯ならではの"根曲り杉"がズラリと並びます。雪の重みに耐えながらもまっすぐに伸びようとしている。そんな杉の巨木の根元はめちゃくちゃ太くて、立派で、力強い。
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植林の杉とは威圧感がまるで違う。思わず、おおー・・・と触ってしまう。
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熊野古道のような気分で歩いていると"苗場神社"に出ました。ジブリに出てきそうな雰囲気の神社で、自然との一体感がとても良かった。集落の中にポツンとある小さめの神社、結構好きです。苗場山までの無事を祈る。
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近くには「秋山郷総合センター とねんぼ」があり、ここでトイレをお借りしました。秋山郷の資料館になっており、時間があればゆっくり見たかった。木造の素敵な建物です。
ちょっと休憩して9:30出発。先はまだまだ長い。歩き出すと、小赤沢で有名な「楽養館」の案内板がありました。日帰り温泉もあるし、食事もいただけます。苗場山スタートなら、2泊3日でも楽養館で食事をしてかたくりの宿で温泉に入ってと、秋山郷をしっかり味わえるなと思いました。しかし、苗場山をラストにしたかったので今回は我慢。
楽養館について
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ドライブイン苗場の前では、カゴに野菜を入れたおばちゃんたちが楽しそうにお喋りしていました。そんな麓の風景を見ながら山へと登っていきます。
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民宿エリアを抜けていく。しかし、この時点ですでにトレイルから若干外れていました。地図にはこのあたりの拡大図が載っていますが、見ていませんでした。先で合流するので特に問題ありませんが。
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自分の足音を聞きながら無心でロードの坂を登っていく。暑い。ここが一番辛い・・・
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30〜40分くらいロード坂を登り、ああ、何か標識がある・・・と思ったら、待望の"一合目"に到着。
この標識の奥に道があったようですが、そのまま車道を登ってしまいました。そして、滝の音が聞こえてくると"大瀬の滝"が見えます。本来はトレイル上にある大瀬の滝。車道を登ってしまったがために、目の前で見るためには階段を下らねばならない。行くか、行かないか・・・行きました。
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遠くからでも十分かなと思いましたが、目の前に行ったら結構な迫力で。マイナスイオンで身体が冷えていく。滝壺の色がまた素敵で、ほんのり紅葉した背景がいい感じでした。階段を下った価値あり。
大瀬の滝
ブナと泥と岩[1合目-8合目 ]
1合目-大瀬の滝-2〜8合目:CT4時間40分
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大瀬の滝から車道をもう少し登ると、苗場山への山道が始まります。とりあえず駐車場のある3合目を目指す。この区間を車道で上がろうとすると、結構な遠回り。
歩き出すなり細い粘土質の道。先週歩いたばかりの関田山脈がすでに懐かしい記憶となっていました。
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森は美しく、歩きやすくなりました。苗場山の小赤沢ルートは3合目から登る人がほとんどで、ここは誰も歩いていない静かな苗場山。
麓どころか結東温泉、遡れば斑尾高原から苗場山への登山は始まっている。110kmの道のりで考えたら、今は9合目あたりだろうか。誰に自慢したいわけでもなく、ただただ信越トレイルで登頂したいという私の自己満足にすぎないけれど、今日はとても清々しい気持ちが身体の中を循環している。この循環が、山の喜び。
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渡渉をして、濡れた岩に濡れた草が覆い被さる滑りやすい道をゆく。
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その先に突然2合目が現れました。なんとも微妙なところにある、不意打ちの2合目。
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橋とロープのある川を渡る。3合目までこんな道が続くのかとハシゴを登ると・・・
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素敵な素敵なブナの森でした。関田山脈のときは少し早かったですが、いい感じに染まっています。
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山道は緩やかなハイキングコースのようになり、なんだここ・・・なんだここ!というほど。山頂までの間で、この2〜3合目までの区間が一番綺麗でした。人がいないから尚更。これは1合目から歩いた人の特権です。
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2〜3合目のブナ林
最終セクションのカウンターボックスを覗くと320人目。苗場山は少し多いかと思いましたが、そうでもありませんでした。
どんなに美しい場所でも、いつかは通り過ぎなければならない。それが、山歩きのちょっと寂しいところ。
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11時ちょっとすぎ、3合目の駐車場に到着。
登山口横の水場は、細くチョロチョロ出ていました(浄水必要)。チョロチョロの場合は2合目の沢で汲む方が楽ですね。4合目にも水マークがありますが、タバコを吸っている人がいて颯爽と通り過ぎたので未確認。
苗場山の山頂ヒュッテでは、水はペットボトル購入(500ml¥350)。私はよく調べずに「1L¥200くらいかな」なんて甘く考えており、途中で水を汲まずに後悔。1L¥700は結構痛いので、苗場山には十分な水を・・・
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信越トレイルからいきなり登山道になりました。1合目から登山道を歩いてはいますが、いきなり道幅が広くて歩きやすい道になると雰囲気の違いに戸惑いが。もちろん、人もたくさんいる。
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しっとりしていた森から、日当たりのいいカサッとした森へ。木の根が蔓延る道をぐいぐい上がっていく。
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見事なブナの森は先ほどの区間だけで、3合目から上は植生がいろいろ。
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4合目になると裸の木が増えていく。ちょっとした標高差でこれだけ様子が違う。上に上に移動する登山だからこそ感じる自然の変化。
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4〜5合目の間は傾斜が一番緩やかで、ぬかるみも調子を上げる。木道があったり、丸太が敷かれていたり、そんな道。
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5合目からは岩がゴツゴツと。傾斜は増して鎖も登場。岩には泥がついて滑りまふ。
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振り向くと関田山脈。いつの間にかその標高を超えていて、なんだか小さく感じる。遠くなってしまったけど、あそこから歩いてきたんだなあ、繋げてきたんだなあ、という感慨深さは大きな支え。
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手足を泥まみれにしながら6合目に到着。鎖場と泥はさらに激しくなっていきます。小赤沢ルートは思っていた以上に急なゴツゴツでした。
下山の人が「これは結構厄介だなあ」と言いながら下っていましたが、このコースは登りよりも下りの方が厄介だと感じました。乾いた岩ならまだいいですが、ねちょねちょの泥が結構滑ります。その状態でところどころ急なのがちょっと歩きづらい。ピストンなら仕方ないけど、縦走であればこちらを登りにしたいなと。雨の中無理にスルーハイクしていたら、たぶん泣いていた。
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7合目は近く、湿原に出る手前の8合目を目指す。まだまだ岩場の道。一旦帰宅したときの苗場山は雪で、北斜面にはところどころ残っていました。アイスバーンになっていなかったのが救いですが、10月になればいつ雪が降ってもおかしくない苗場山。
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暑いのか、寒いのか、自分でもよくわからずアームカバーをさげて登っていると、「半袖、寒くないですか?」と聞かれる。そういえばちょっとひんやりするような・・・油断すると滑る道に、だいぶ集中していたなあと気がつく。
今度はご夫婦に「何時頃から登りましたか?」と。信越トレイルを歩いていると話すと「うわあ!すごいね!」と。
ロングトレイルを歩いているとよく「すごい」と言われるけれど、すごいのだろうか。少なくとも私は「ただ歩いている」くらいの気持ち。日常から"歩く"という行為が離れれば離れるほど、歩き続けることが"すごいこと"になっていく。昔の人は健脚だったかもしれない。でも、当時それは"普通"だったかもしれない。
ロングトレイルは一番原始的で、単純で、誰もがやっている"歩く"ことの延長で。ロングトレイルが好きなのは、ただ自然の中を歩くことが好きだから。人と自然が繋がっているのだと感じられるから。好きなものの好きな理由は、案外単純だったりする。
人の優しさに触れて一人では生きていけないことを知り、自然の優しさと怖さを知る。必要十分、最低限の意味を知る。自分がもがいている環境の狭さに気がついて、地球というフィールドの大きさを知る。アウトドアはつまり最高で、沼だろうが何だろうが片足を思いっきり突っ込んだ自分によくやった!と言いたい。
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そんなことを考えながらひたすら岩を登っていたら8合目。「あともう少しですよ」と言われ、ラストスパートの元気が出ました。
湿原の山[ 8合目-苗場山 ]
8合目-9合目-苗場山:CT50分
頭上が明るくなり、急傾斜も終わり、湿原に出る〜という雰囲気の乾いた道を上がっていくと・・・
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ここまで歩いてきてよかった・・・
ほんわか。のほほん。なんとも優しい世界。ここまでのドロドロ急坂とは比べものにならないほどの異世界感。あー、ここが苗場山なんだ、という気持ちが溢れ出してとても幸せな気分。逆に、あの道だったからこそ幸せを感じたのかもしれない。
一気に登ってきましたが、ザックを下ろすと肩の力がガクッと抜けました。それくらい、素晴らしいところでした。
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ここからはもう木道かな〜なんてルンルンで歩いていましたが、9合目まで。この先は一旦樹林帯に入ります。
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そして、この区間もなかなかのドロドロ具合。ちょいと歩きづらい岩場。
落ち葉に隠れた泥沼に思いっきり足を突っ込み、うぎゃああああぁぁぁああ!となる。縁まで泥に浸かったものの、瞬時に引っこ抜いて靴の中に入り込むのは回避。今回は穴あきアルトラではなく、サロモンの防水ローカット。
さっきあれほど湿原に感動していたのに、ちくしょー・・・となりながら先の木道を目指す。
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そんなこんなでようやく木道。今度こそ、ヒュッテまで木道です。
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麓にあった苗場神社の奥の院が湿原の中にあります。ちょっと気になりましたが、神社よりも湿原でまったりしたいのでスルー。
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苗場山の湿原が広大であることは知っていましたが、想像以上でした。え、こんなに広いの?というのが第一の感想。奥までずーっと、ずーっと続いている。
今まで、雑誌の写真や動画を何度となく見ましたが、やはりその場の空気やスケール感というのは何もわかりません。同じ苗場山でも、その人が見ている苗場山と私が見ている苗場山は違う。ここに辿り着くまでの過程も人それぞれ。人の数だけ景色があって、気持ちの数だけ景色がある。結局、自分で歩かないとわからない。そこが、自然のいいところ。
7日かけて登った苗場山は、それはそれは愛おしい山だった。お昼頃に薄く広がっていた雲はいつの間にか消えて、念願の青空で、今、苗場山を歩いている。
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ところどころにベンチがあり、それがまたいい。最高にいい。
日帰りの人たちがほとんど帰った静かな湿原。でも、14時を過ぎても名残惜しそうにベンチに座っている人も。
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苗場山について何か一言いうなら・・・
「1泊した方がいい」
日帰りできる山にあえて1泊するのは結構好きです。なぜなら、夕方頃からパラダイスになるから。泊まる人の多い、泊まらなければならないアルプスなどとは、夕闇が迫る頃の山の雰囲気が全然違うと感じます。静けさも違うし、なんだか"泊まった人たちだけの山"という感じがすごく強い。
単純にそんな気持ちに浸るのも好きですが、苗場山は夕方の湿原がとっっっても素敵だったので(朝は残念ながらどんより)、泊まって良かったと心底思いました。
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山頂ヒュッテが見えました。一瞬も見逃したくなくて、ヒュッテに到着するまでだいぶ時間をかけて歩いていました。とりあえず、すぐそこの山頂へ。
ヒュッテ周辺ぐるり
ヒュッテから30秒ほど奥へ入り・・・
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苗場山登頂!信越トレイル踏破!
標識にはしっかりとトレイルマークがつけられています。途中からは苗場山の道標だったので、久しぶりに会った気分。
信越トレイルは、ただただ素晴らしかった。もっとたくさんの人に歩いてほしいなあと、心から思った道でした。
ずーっと同じような標高というのは飽きるので、端っことはいえドカンと苗場山が佇んでいるのはいいですね。延伸されたことで、さらに魅力溢れる信越トレイルになったのだと思います。
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さて、ヒュッテに戻ります。
苗場山で一夜を
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念願の山頂ヒュッテ。気さくな小屋番さんが受付をしてくれました。
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ヒュッテの中はとても綺麗で、寝床は3人くらい寝られるスペースを今日は1人で。予約時に「もしかしたら相部屋になるかもしれません」と言われましたが、結局1人でした。
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小さな窓に長めのテーブル。壁には山の写真が掛けられていて・・・こんな雰囲気の自分のスペースが欲しいと、高校生の頃から思っていました。社会人になったら東京を出るんだというあの頃の強い思いも虚しく、もがいたけど結局出られなかった自分がここにいる。そんな私を、幾度となく山が救ってくれました。
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昨年まではコロナの関係で布団類の提供を中止していましたが、2022年度は再開(シーツ要持参)。枕カバーも持参と記載がありますが、受付で苗場山頂ヒュッテのタオルをいただき、それを枕カバーにしてくださいとのことでした。私はシュラフを持っていたため、敷布団と枕だけ拝借。
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食堂はたくさんの写真が飾られた素敵空間。「バーナーは食堂でどうぞ」とのことで、宿泊者の夕食が始まる前に。
山頂ヒュッテのカレーはすごく美味しいと聞いて迷いましたが、結局素泊まりにしてしまいました。しかし、夕食時に「普段はおかわりなんてしないんだけど、美味しいから少しもらおうかな」とか「このカレー何使っているんですか?」という会話が聞こえて、そんなに美味しいのか・・・とちょっと後悔。
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寝床に貼ってあった湿原(山頂)の案内図。欲しければもらえるようです。
小赤沢方面から歩いてきたとき、ここは夕日がよく見えるだろうな〜と思ったスポットがありましたが、そのあたりはやはり小屋番さんもおすすめの夕日スポットでした。
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16時頃、赤湯方面の池塘スポットへ行ってみることに。「滑るから気をつけてね〜」と言われながらサンダルで飛び出しました。
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傾いた強烈な西日が湿原を照らし、オレンジがより一層強くなる。草もみじのピークはとっくに終わっているけれど、ピークかと思うほどに染め上げる。
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濃紺の池塘とオレンジの相性がいい。
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誰もいない、とんでもなく美しい苗場山。単純に「美しい」というのはなんか違うけど、その一言にすべてが詰まっている。
気がついたら16:45。やばい、日が沈む!と小走りで小屋へ戻りました。小屋から結構歩いていましたね。
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小屋に辿り着いたときはちょうど太陽が山に沈む頃で、そのまま小屋の前で見送りました。おすすめされた夕日スポットには間に合わなかったけど、ヘッドランプを持つの忘れてたし。池塘の色を刻々と変えた苗場山の夕日、とてもとても素敵でした。
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遮光カーテンをシャーっと閉めるように、一気に暗闇に包まれていく秋の夜。
苗場山はガスが多い山なので、「最後までこんなに晴れてることはあんまりないですよ、ラッキーですね」と小屋番さん。歩いてきてよかったなあ・・・と、またひとつご褒美をいただきました。
歯を磨きながら夜空を見ていると、天の川が見えました。どうやら今日から明日にかけてオリオン座流星群が見えるらしい。小屋番さんが外に出てきて「山頂は小屋の明かりが届かないからよく見えますよ」と。下界では21時頃〜ということですが、「山だからもう見えるはず」とも。
夜になると、山頂ではよくウサギがぐるぐる走り回っているそうですが、寒くなってもうほとんど出てこないとか。そこにある自然を熟知している小屋番さんたち。本には書かれていないことをたくさん知っていて、山小屋に泊まるたび、かっこいいなあと思います。テントも好きだけど、山小屋も好き。
19:00には目を瞑り、心地よい夢の中へ。シュラフだとちょっと暑いくらいでした。最終日の明日は、祓川登山口へ下山します。信越トレイルのマークはもうないけれど、帰るまでがロングトレイル。
苗場山頂ヒュッテに関して
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