歩き人たかちです(@takachi_aiina)
ニュージーランド3000kmのロングトレイル「テ・アラロア」の装備に関して、大まかに衣食住に分けてご紹介します。今回は「住」編。
どのようにギアを選んだか、実際に使い続けてどうだったか。振り返りながらまとめました。
テ・アラロアのギアリスト
日本のようにAmazonでポチってコンビニ受け取りができるわけでもないし、靴以外のものは"買わない・買い足さない"前提で持って行きました。「南島は寒くなるから買い足す」ということはしていません。すべて最初から担ぎました。
そして、重視したのは"耐久性"と"快適性"。ワイルドなトレイルであり、天気もコロコロ変わるニュージーランド。4ヶ月毎日歩くためには"睡眠"が大事であり、少し重くてもしっかり寝られる、歩けるギア・ウェアを選びました。
私がカリカリのULハイカーになれないのは"快適性を極端に失いたくない・嗜好品を諦めたくない"から。ULの楽しみ方は人それぞれですが、自分が気をつけていることは"軽量化を一番の目的にしない"こと。数字を減らすことを楽しみに山へ行くのではない。山の風を浴びて、自然にどっぷり溶け込んで、美味しい珈琲を飲む。快適性や嗜好品を手放してまでカリカリにしたいとは思っていません。少し軽くなった結果、より心地よく自然を楽しむことができれば一石二鳥くらいの気持ち。軽量化によって身体への負担が減り、足取りも気分も軽いのは確かですが、山で過ごす一番好きな時間は忘れないようにしようと。
そんなことで、テ・アラロアではコーヒーミルを持ち歩きました。他のハイカーから「Real coffee ! Amazing !!」とよく言われていました。
ニュージーランドの気候と環境を考えたギア選び
雨にも負けず風にも負けず
テ・アラロアの装備で特に考慮したことは"濡れ"。乾燥地帯ではないため、そのあたりを一番に考えました。
◾︎ 寒暖差が大きい(夏でも寒い)
◾︎ 渡渉と泥で足は常に濡れている
◾︎ 風が強い場所が多い
ニュージーランドは"夏に雨が少なく冬に多い"国で、その点は日本と逆。そのため、夏の方が湿度は低く比較的カラッとしています。年間降水量は日本より少ないですが、天気はコロコロ変わるし雨も降る。また、異常気象で雨ばかり…という年もあります。ちなみに、2023〜2024年のシーズンは"夏が短かった"ようです。現地の人たちが口を揃えて「暑くなったと思ったらすぐ涼しくなった」と言っていました。
そして、ニュージーランドは寒暖差が大きい。夏でも朝晩の気温が一桁ということも珍しくありません。真夏の1月に標高400mのキャンプ場で「今日はひんやりしてるな〜」と思ったら5度でした。15〜20度くらいの気温差は割と普通。朝の気温が20度以上になる日はなく、一番暑いときで15〜18度ほど。日陰に入れば涼しいし、日本の夏に比べたらだいぶ快適です。
雨以外の濡れは"渡渉と泥"があります。むしろ、こっちがメイン。北島は泥が多く、南島ではひたすら渡渉。足が1日乾いている日があればラッキーというほど毎日どこかで濡れます。
最後に、ニュージーランドは風が強い場所も多いです。北半球のように大陸が多くない南半球の海にポツンと浮かぶニュージーランドは、風の影響を受けやすい島国。特に首都のウェリントンは"世界一風の強い街"と言われており、実際常に風が吹いています。強風の中を歩く、テントを張る、さらにそこに雨が加わったら…一番辛いシチュエーションですが、それが少なからずある前提で考えました。
実際に使用してどうだったか
3000kmをともにしたギアの使い心地は実際どうだったのか。他のハイカーはどんなギアを使っていたかも交えながら振り返ります。
[ ザック・テント類 ]
◾︎ パックライナー
◾︎ テント
◾︎ インナーシート
◾︎ シュラフ
◾︎ インナーシーツ
◾︎ スリーピングマット
◾︎ スタッフバッグ
バックパック
一番悩み、時間をかけたバックパック選び。最終的にヤダパックス「Backpack45(*リニューアルで45Lは廃盤)」に決めました。低身長・腰荷重・耐荷重など、自分の悩みを解決してくれた唯一のザックです。
詳しいレビューに関しては下記記事をご覧ください。テ・アラロアでのレビューも加えています。
◾︎ 腰荷重で背負えるもの
◾︎ 10日分くらいの食料が入る容量
ザックの条件は上記を挙げました。テ・アラロアでは最大7〜10日ほどの食料を担ぎます。南島の"リッチモンド山脈"が一番長い縦走セクションで山脈は120km、街から街まで160km。早いハイカーは5〜6日で抜けますが、平均7〜9日。あとは天気次第です。
私は8日かけて歩きました。7日目と8日目を午前中だけのハーフデイにして街に早く下山。予備食を含めて9〜10日分の食料を持ち、ザックの重さは約18kg(水2L含む)。このセクションは15〜20kg程度担いでいるハイカーが多かったです。
北島は街を通ることが多いため、5日以上の食料を担ぐのは最後のタラルア山脈くらい(トンガリロ国立公園でコース外のサイドトリップするならそこも)。対して、南島はセクションごとに5日前後山に入るため13〜15kgくらいはコンスタントに担いでいたと思います。
バックパックの容量はみんな40〜50Lあたり。ULハイカーは思っていたよりも少なく、従来の雨蓋式のザックも多かったです。ULはアメリカのハイカーやPCT、CDTなど他のロングトレイル経験者が中心でした。ドイツもULが多かった印象(というか、ドイツのハイカーがとても多かったです。流行っているのか?)。ULハイカーは「ハイパーライトマウンテンギア」や「Zpacks」を使用していました。
ある程度荷物を担がなければいけないトレイルにおいて、ヤマダパックスの"従来のザックとULザックの中間"がちょうどよかったです。腰荷重なのでしっかり背負えて肩を痛めることはほとんどない。耐荷重は〜15kgですが、それ以上になっても安心感があり耐久性も抜群。シンプルな構造で汚れても洗いやすいし、背負い心地も使い勝手も、自分にとっては最高の相棒でした◎
パックライナー
パックライナーははじめ「70L・0.08mm・極厚(縦90cm × 横80cm)」のゴミ袋を使用していました。
北島の2ヶ月使いましたが、穴あきもなく耐久性は良かったです。しかし、南島に向けて買い替え。理由は"横幅が広すぎ・もう少し高さが必要"だったから。
ゴミ袋なので縦長ではなく正方形に近い形で、大きくなるほど横幅も大きくなります。しかし、ザックは縦長なので横幅が邪魔でした。日本では薄手のゴミ袋を使っていたため嵩張りが気になりませんでしたが、今回初めて極厚を使いもっとザックに合うものがいいなと。
さらに、北島最後の縦走"タラルア山脈"で7〜8日分の食料を積んだとき、縦の長さが不十分でした。南島では食糧を積むことが多いため、余裕のあるものに変更。
ニュージーランドで販売しているパックライナー($7)。カットしてしまったので正確な大きさはわかりませんが「縦140〜150cm × 横64cm」のワンサイズ。70Lくらいのザックにも対応しているためものすごく大きい。
一番食糧を積んだときに合わせて約120cmで使用していまた。
ビニールは極厚のゴミ袋よりしっかりしており、耐久性は申し分ない。横幅もそれなりにありますが、ゴミ袋に比べたらスマート。重量はカットして150gとパックライナーにしては重いですが、渡渉と雨が多い気候の中"荷物が濡れる"不安はなかったです。
テント
まず初めに、テ・アラロアでフロアレステント・タープ類を使うことはお勧めしません。サンドフライ地獄です。雨も多いためびしょ濡れ必須。
自分が会ったハイカーでフロアレステントを使っている人はいませんでした。ツェルトは0ではないですが、非常に少ない。基本的にはインナーテントありのモデルがほとんどで、ダブルウォールが一番多かったです。
テントはZEROGRAM「Thru Hiker 1p」を選択。詳しいレビューは下記記事をご覧ください。
4ヶ月使用した結果、大満足のテントでした。日本では現在、モンベル「U.L. モノシェルター1型」のシングルウォールをメインで使用していますが、ダブルウォールの快適さを改めて実感。これだけ設営・撤収が楽ならダブルウォールでいいなと。
[ テ・アラロアでの感想・状態 ]
◾︎ ニュージーランドの結露でも快適
◾︎ 10m/s前後の風でも不安なし
◾︎ 半自立式でペグの刺さりが弱いところでは不安定
◾︎ ペグの強度は問題なし
◾︎ インナーのモノフィラメントは細かい砂を通す
◾︎ フライが長めで風雨でも濡れない
◾︎ フロアのバスタブ部分に小さな穴が空いた
◾︎ スタッフバッグは裂けまくり(外付け)
設営・撤収・結露に関しては日本で使用した感想と同じ。ニュージーランドの結露は日本と同じような感じで、特別酷いとは思いませんでした(シングルウォールは不明)。森の中に張れば結露はほとんどなく、湖や川沿いの水の側、周りがひらけた場所ではそれなりの結露。
ニュージーランドは風が強い場所も多く、特に丘のような木のないトラックは吹き曝し。日本のように稜線上にテント場があることは少ないので強風の中テントを張る機会は少なかったですが、何度か風の強い場所で張りました。
自立式ではないためペグがしっかり刺さらないと弱々しく石で抑えても不安定ですが、ペグが刺されば耐風性抜群で安心感があります。地面の状態に関しては有料アプリ「Far Out」に結構コメントされていたため、それを参考にしていました。
ペグはY字で"ZEROBORN"というオリジナルのジュラルミン素材。エマージェンシーポールは付属していなかったため、モンベルのものを持っていきました。
もともと一つひとつにアクセサリーコードが付属していましたが(抜くとき引っ張る用)、不要なのでそれは外しました。コードありで8g、コードなしで7g。軽すぎ・細すぎのペグは耐久性が心配ですが、ゼログラムのペグはバランスがいいと感じています。
砂利多め、硬めの地面では刺さるところまで踏みつけて押し込んでいましたが、曲がることもなく耐久性は問題なし。Y字なので土はつきやすいですが、毎日使うので別に気になりませんでした。適当にパッパと払っておけば大丈夫。
メッシュ系のインナーはほとんどだと思いますが、モノフィラメントメッシュも細かい砂を通します。トンガリロ国立公園のノーザンサーキットにあるOturere Hutのテント場に張ったとき、テント内が砂っぽくなりました。火山帯で細かい粒子の砂のテントサイトで、また、風もある山域なので前室を開けていたら中がザラザラに。テント自体砂だらけになり、下山したホリデーパークで拭き取るとウェットティッシュがドス黒くなりました。
フライは地面ギリギリまであるため、風雨が強くても吹き込みはありませんでした。ゴッサマーギアやニーモのテントを使っているハイカーも多かったですが、軽量なテントはフライが短めなことも。ニュージーランドは夜中に雨が降ることも多く、風雨が強いときはシュラフやマットがびしょ濡れになっているハイカーもいました。あと、雨漏りに悩まされているハイカーも(UL系テントでシーム処理が不十分だったよう)。どんな天候でも快眠を得るために、今回しっかりめのダブルウォールにして正解だったと思っています。
3000km使用した状態は"フロアのバスタブ部分に小さな穴が空いた"だけ。地面と接していない部分に穴が空いたので、地面との擦れは関係ないと思います(何かに引っかけたのか?)。フロアの生地は15Dですが、強度も問題なかったです。
スタッフバッグはシルナイロンのようなツルツル素材ですが、外付けしていた結果裂けまくり。特に底部の縫製箇所がパックリ。大きく裂けた部分だけダクトテープを貼って本体に支障がないようにしていましたが、棘植物地帯を歩くことも多いので外付けの場合強度が高めのスタッフバッグの方がいいかもしれません。
インナーシート
テントのグランドシートは使わない派で、その代わりSOL「エマージェンシーブランケット」をインナーシートに。寒いときや緊急時にも使えるので多用途。グランドシートを使っているハイカーはほとんどいませんでした。フロアの保護にはなりますが、持ち運ぶ重量を考えたら不要だと思います。
あらゆるところが裂けて、ダクトテープを貼りながら最後まで使用。アウトドアショップで同じものを購入できるので買い替えは可能です。
さすがに薄くなりました。軽くて嫌な音もしないので、今後も愛用します。
シュラフ・インナーシーツ
シュラフは、日本の山でメイン使用しているモンベル「ダウンハガー ハーフレングス#3(旧モデル)」を持って行きました。詳しくは下記記事をご覧ください。
モンベルの3シーズン用(#3)は「他メーカーの3シーズン用に比べて寒い」と言われています。そのため、3シーズン用として#2を選ぶ人もいますが、私は普段インナーシーツと組み合わせて調節しています。
迷った挙句持って行ったモンベル「シルクシーツ(*廃盤)」。インナーシーツを持っているハイカーは少なかったですが、このインナーシーツが結構役立ちました。
シュラフが汚れないというのもそうですが、北島のはじめの方やHutは暑いことも多く、インナーシーツだけで寝ることもありました。モンベルのハーフレングスはジッパーがなくて掛け布団のようにできないことがデメリット。
夏も朝晩が涼しいニュージーランドですが、Hutなどで暑いときはインナーシーツに入りシュラフをお腹にかける→ 深夜〜朝方寒くなったらシュラフに潜るという感じで。一番気温の低いテント泊で-1〜3℃ + 風でしたが、インナーシーツのおかげで#3でも寒さを感じず快適に寝ていました。
洗濯機で洗えることもポイント。寝るときはシュラフで身体が温まるせいか、サンドフライに刺された箇所がものすごく痒くなります。知らず知らずかいていて、気がついたらインナーシーツの足元は赤い水玉模様になっていました…
出典:moonlightgear
もし、シュラフを新調するなら…と密かに狙っているのはENLIGHTENED EPUIPMENT「Revelation 850 30°F Down Ver」です。
結局キルト型が一番使いやすい(寝やすい)のではないか?と思っています。暑ければ適当にかけて、寒ければ好きなようにくるまることができる。私の場合、レディースモデルでないと(レディースモデルでも)縦の長さが余りまくり。それもあってハーフレングを愛用していますが、キルト型であれば自由自在。
お値段がそれなりなのと、人気で在庫が常にないのでシュラフは我慢。しかし、すごく気になっているモデルです。
moonlightgear
スタッフバッグ
ヤマダパックスを試着注文したとき、パッキング方法として"空気を極限まで抜いて硬くしたスタッフバッグを底に入れて形を決める"と教わりました(底部を安定させる)。普段スタッフバッグは使わず底に押し込んでいるため、ヤマダパックスを使うために購入。
底部に通気性のあるSEA TO SUMMIT「Evac ドライサック13L」を購入。しかし、1週間もしないうち使うのをやめていつも通り底に押し込んでいました。パッキングがいまいちしっくりこなかったのと、朝の片付けが面倒だったので。空気は確かに抜けますが完全な真空にはなりません。いくらギュウギュウに押し潰してロールをしても、割とすぐ空気が入ってしまって…(不良品?)
南アルプスの縦走でザックを試したときは底に押し込んでいたため、そのままのスタイルで良かったなと。
79gでスタッフバッグにしては重量があったため手放そうか迷いましたが、ネズミ対策の食糧入れとして使いました(逆に食糧を入れるスタッフバッグを持参していなかった)。
シュラフだけなら8Lで十分ですが、化繊ジャケットなども一緒に入れようと13Lを選びました。食糧は8Lでは入らないので結果オーライ。一番食糧が多いときはこれでも足りなかったですが。食糧用のスタッフバッグは15〜20Lくらいを持っている人が多かったです。
まとめ
テ・アラロアの装備「住」編をご紹介しました。ロングトレイルの装備といっても気候や環境で一括りにはできません。テ・アラロアにはテ・アラロアのPCTにはPCTのギア選びが必要です。
次回は「衣」編。少しでもお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
よろしければ、応援よろしくお願い致します。
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