歩き人たかちです(@takachi_aiina)
雪山には登らない。冬は低山しか行かない。でも、「雪が降ったあとの高尾山とかちょっと楽しそう・・・」
着脱が簡単で、アイゼンのように歩き方を習得する必要もない。初心者でも扱いやすいチェーンスパイクは、冬の楽しみ方を広げてくれます。
しかし、安物にはご注意を!「全体重 + ザックの重さ」を支える"滑り止め"なので、それなりの耐久性や剛性が必要です。
今回は、軽アイゼンの中でも気軽に使える"チェーンスパイク"に焦点を当てて、選ぶときの注意点とともにご紹介します。
\ こんな疑問を解決 /
◾︎ チェーンスパイクはどういう場面で使うもの?
◾︎ メリット・デメリットが知りたい
◾︎ チェーンスパイクの選び方は?
◾︎ 安いものってどうなの?
◾︎ ネットで買っても大丈夫?
◾︎ モンベルのチェーンスパイクはどう?
「チェーンスパイク」と「アイゼン」の違い
「チェーンスパイク」と「アイゼン」の一番の違いは、"爪の大きさ"。
チェーンスパイクの爪は小ぶりで、深い積雪には対応しません。
雪山用のアイゼンと比較すると、一目瞭然。コンパクトな軽アイゼンと比べても、だいぶ小さいです。
\ 爪の数による呼び名の違い /
◾︎ 10本以上:(本格)アイゼン
一般的に、10本以上のものが「(本格)アイゼン」、それ以下のものは「軽アイゼン」と呼ばれます。
チェーンスパイクは爪の数が10〜14本程度(メーカーによる)ですが、爪の大きさが小さく、積雪には対応しないため「軽アイゼン」に分類されます。
「チェーンスパイク」はどんな場面で使う?「アイゼン」との比較!
\ それぞれの使用環境 /
チェーンスパイク | 軽アイゼン | |
凍結した道(緩め) | ◎ | ◯ |
傾斜が緩い道 | ◎ | ◯ |
雪がない道が混在 | ◎ | △ |
岩陵帯がある | ◯ | △ |
部分的な急傾斜 | △ | ◯ |
全体的に傾斜がある | ✖️ | ◎ |
積雪量が多い | ✖️ | ⚠︎ 積雪量による *場合によっては「本格アイゼン (10本以上)」が必要 |
チェーンスパイクが得意とする環境は、「凍結した道(緩め) / 傾斜が緩い道 / 雪があったりなかったりする道」です。
雪が降りはじめる積雪の少ない時期は、「積雪 → 溶ける → 凍結」を繰り返します。
傾斜が緩い道でも、"凍結"には要注意。雪面は硬いため、打ちどころが悪いと怪我をします。
凍結していると爪がささりにくいため、ある程度爪の長さがある軽アイゼンよりも、爪が短いチェーンスパイクの方が歩きやすいです。
爪が長いと、傾斜の緩い道は歩きづらいため、緩急を繰り返す(「緩」多め)少し積雪のある道にも、チェーンスパイクがおすすめ。傾斜がある程度ある道が長く続く場合は、軽アイゼンを。
雪があるところ、ないところが混在するような道には、着脱がスムーズなチェーンスパイクが有効です。
爪が短いため、岩場の歩行もほかの軽アイゼンより得意。次の雪面までつけたまま歩くこともできます。
チェーンスパイクは、爪が短いため急傾斜には向いていません。
上記写真のような急傾斜では、最低6本爪がある軽アイゼンが安全です。
このときは、残雪がここだけだったためチェーンスパイクを利用しましたが、朝一で凍結していたり、他の登山者の踏み跡がなければ厳しいです。
朝一ではなく、他の登山者の踏み跡がたくさんあったので、滑らず通過。しかし、ゆっくり。6本爪の軽アイゼンの友人は、サクサク下山。
夏の残雪は、チェーンスパイクと軽アイゼンを使い分けます。
上記写真の「剱沢雪溪」では、傾斜がさほどなく(傾斜があるところは一部)、スプーンカット状になっており比較的歩きやすいと判断してチェーンスパイクを。
年により残雪の状況は異なるため、最新の情報を要確認。
冬の低山に「チェーンスパイク」をおすすめする理由
\「チェーンスパイク」のおすすめ点 /
◾︎ 軽量コンパクト
◾︎「いったん外す→また装着する」が面倒ではない
◾︎ 普段の歩行ができる
◾︎ 雪面以外も歩きやすい(オールシーズン使用可能)
◾︎ 幅広い靴に装着できる
着脱が簡単でスムーズ
チェーンスパイクは靴下のように履くだけ(脱ぐだけ)なので、着脱がスムーズ(履き方は後述)。
アイゼンのように、バンドの長さを合わせる作業がないため、誰でも簡単に使用できます。
軽量コンパクト
お守り程度の軽アイゼン(200g台)を除き、軽量コンパクト(300g前後)。
積雪のある低山などで使う軽アイゼンでも、平均500g前後(メーカーによる)あるので、やはり軽い。
*すべて両足ペアの重量
「いったん外す→また装着する」が面倒ではない
チェーンスパイクを使う場面では、凍結した登山道 → 雪・凍結のない岩場 → 凍結した登山道・・・のように、雪のないエリアを挟みながら歩くことも多いです。
土や、短い岩場ならそのまま通過しても問題ないですが、岩場が長く続く場合はいったん外して、カラビナでまとめてザックに吊るしたり。
「いったん外す → また装着する」が、ほかのアイゼンほど面倒ではありません。
普段の歩行ができる
チェーンスパイクの最大のメリットといってもいい、"普段の歩行ができる"利点。
出典:モンベル
アイゼンの場合、歩き方を習得する必要があります。
軽アイゼンでも、チェーンスパイクより爪が長く、爪がソールの中心に集まるため、雪面に爪がささるように歩かなければならない。多少の慣れが必要です。
チェーンスパイクは爪が短い上、全面に配置されているため歩行が安定。また、チェーン部分も滑り止めの役割を果たし、普段の歩き方でOK。
雪面以外でも歩きやすい(オールシーズン使用可能)
チェーンスパイクは爪が短く、ちょっとした岩場でも、あまり気にすることなく歩けます。
また、"雪や凍結以外の滑り止め"としても使用可能。
◾︎ 急傾斜
◾︎ 落ち葉で滑りやすい坂
◾︎ 苔で滑りやすい渡渉
幅広い靴に装着できる
チェーンスパイクは、トレランシューズのような柔らかい靴に装着することも可能。そのほか長靴など、幅広いシューズに対応します。
画像提供:モンベル / 制作:筆者
アイゼンの多くは、「スノープレート(写真オレンジのプレート)」という硬いプレートをソールに合わせます。
しかし、ソールが柔らかい靴の場合、"柔らかいソール(曲がりたい) + 硬いプレート(曲がりたくない)"の組み合わせになり、相性がよくない。歩きづらいし、無理に使用するとプレートが破損します。
チェーンスパイクのデメリット
◾︎ 深い雪は使用不可
◾︎ 雪が湿っているとダマになりやすい
◾︎ 破損時の応急処置が難しい
「固定力」が弱点
靴に被せるだけのチェーンスパイクは、"固定力"が弱点。
バンドで締めるアイゼンは微調整ができますが、チェーンスパイクはS・M・Lなどのおおまかなサイズ分け。
ズレが起こらない、完全密着まではできず、アイゼンほど踏ん張りも効きません。
深い雪は使用不可
爪が短いため、深い雪には使えません。冬は、"初冠雪〜少し積雪するまで"の短い期間に限られます。
凍結している林道歩き(登山口へのアプローチ)では使えるけど、登山口から先は使えない。積雪後は脇役になります。
冬の間、数回しか雪が降らない高尾山のような低山では大活躍です(ドカ雪になったら状況判断)。
雪が湿気ているとダマになりやすい
水分を多く含んだ雪は、めちゃくちゃダマになります。
アイゼンでもなりますが、チェーンスパイクの場合、チェーンの隙間という隙間に雪がつきます。
ストックで叩き落としながら歩くしかありませんが、靴がかなり重くなります(凍結、サラサラ雪は問題なし)。
破損時の応急処置が難しい
チェーンスパイクは、バンドが切れてしまうと修復が困難。
応急処置は難しく、肉抜きの部分やチェーンをどうにかして繋げるくらいしか、やりようがありません。
使用前にバンドが劣化していないか、ちぎれ・破れがないか、ご確認を。
チェーンスパイクの選び方!
◾︎ 着脱のスムーズさ(素材の伸び具合)
◾︎ 耐久性
◾︎ チェーンの太さ・接続部分
◾︎ 重量
◾︎ 靴との相性
爪の数
チェーンスパイクの爪の数は、10〜14本程度。爪が多いほど、滑り止めの効果が高いです。爪が小さいので、10本以上が望ましい。
出典:楽山荘 / 制作:筆者
中には、靴のソールから飛び出している"前爪"があるチェーンスパイクも存在します。
小ぶりですが、雪面への刺さりがよくなるため、少し傾斜のある場所では歩きやすくなります。
前爪がある分、重量は増しがち。
着脱のスムーズさ(素材の伸び具合)
チェーンスパイクのバンドは、ゴムのような素材。モンベルの場合、「エマストラー」という弾性のある素材を使用。
バンドが柔らかすぎると、ちぎれや不安定感が心配ですが、硬すぎても着脱に苦労します。
耐久性
耐久性は主に、バンドが破れないかどうか。安物の中には、"1回使ったらバンドが切れた"という口コミが見受けられます。
また、チェーンが通してある穴ですが、できればプラスチックパーツなどで補強してあるものがおすすめです。
力が加わるため、ちぎれやすい部分。モンベル(旧モデル)はパーツはないですが、厚みを持たせることで補強。
出典:モンベル
現在のモデルは、プラスチックパーツで補強されています。
チェーンの太さ・接続部分
チェーンが細いと、破損や接続が外れる恐れがあります。
平均値は特にありませんが、モンベル(旧モデル)の場合、直径2mm(多少の誤差あり)。ある程度の太さがあるものを。
また、輪っかの閉じが甘くないか、などもチェックするといいです。
重量
チェーンスパイクの平均重量はペアで250〜350gほど(サイズで大きく異なる)。軽量なタイプは200〜250g程度。
重すぎると疲れますが、軽すぎると上記で述べた"バンドの切れやチェーンの破損"などのリスクがあります(軽量化は耐久性を犠牲にしているため)。耐久性を考慮した上で、納得できる重量を。
以前、モンベルで販売されていた「L.W. チェーンスパイク」は現在生産終了(アウトレット在庫のみ)。
モデルチェンジした通常の「チェーンスパイク」が軽量になったことが理由かもしれませんが(30g程度の違い)、冬に数回だけ・・・という軽めの山歩きにはいいと思います。
購入前に「靴との相性・サイズ」を要チェック!
チェーンスパイクやアイゼンは、靴との相性(サイズ・フィット感)が重要です!
チェーンスパイクはどの靴にも合わせやすいですが、サイズが合わなければ意味がありません。
よくあるのは、「対象サイズを購入したのに、靴に入らなかった(小さい)」ということ。
◾︎ 化繊 or レザー
◾︎ ソールの形状(幅や厚み)
◾︎ 幅が狭いモデル or 幅広のモデル
ミドルカット以上は"小さくて入らない"ことも多いため、装着予定の靴を店頭に持ち込み、実際にフィッティングすることをおすすめします。
実際、自分のミドルカットは22.5cmですが、対象サイズは入らずワンサイズ大きいものを使用しています。レザーの登山靴で、厚みがあるため入りません。
登山の前日に購入するのはリスクがあるため、余裕を持った準備を!
高尾山などの低山が雪予報になると一気に売れるため、直前だと品切れになることも多々あります。
モンベル「チェーンスパイク」概要
出典:モンベル
サイズ | S:20.5〜23.5cm M:23.0〜26.0cm L:25.5〜28.5cm XL:28.0〜31.0cm |
重量 | S:242g M:263g L:287g XL:316g |
素材 | チェーン:ステンレス鋼 バンド:エラストマー |
*2024.10時点のモデル情報
素材・形状・重量
爪の数は10個、爪の長さは約1.2cm
爪の本数や、バンドと爪の素材は現モデルと同じ。ステンレス鋼の爪で、錆びにくいです。
重量は、旧モデルのSサイズが326gなので、約80g軽量化されています。バンドの幅や、肉抜きの大きさがだいぶ変わりました。
チェーンスパイクの履き方
チェーンスパイクの履き方は、靴下を履くように靴に被せます。
① つま先にガバッとかける
「mont-bell」と書かれている方が前。かかとには「BACK」の表記があります。
② かかとの方持ち、ぐいっと引っかける
写真を撮るために片手ですが、ある程度バンドの硬さがあるため、両手の方が早くて簡単です。
③ つま先とかかとを微調整しながらフィットさせる
つま先とかかとのバランスを整え、チェーンに緩みがないかチェックします。チェーンが動くようなら、もう少し上に引っ張ります。
かかとの方が上まであがっていなかったり、チェーンが緩い状態はNG✖️
しっかりフィットした状態
ソール側
どんな靴でも履き方は同じ。実際に使用するときは手袋をしている可能性があるため、自宅で慣れておくとスムーズです。
付属のスタッフバッグ
スタッフバッグの内側は、摩耗・引き裂き強度に優れた生地を使用。「PVCコーティング」により少し硬め。
チェーンスパイクの刃は鋭くないですが、傷ついた部分からひび割れなどが起こります。
スタッフバッグは、現行モデルも同じ。重量は26g。
使用8年目のモンベル「チェーンスパイク」
8年ほど、毎シーズン使用していますが、ゴムの劣化や伸び、硬化などは特になし(雪・凍結以外ではほとんど使いません)。
滑り止めとしての感覚も問題なく、歩行中のトラブルは、今のところありません。
チェーンスパイクはらくですが、装着するとやはり重さを感じます。というか、外したときの足の軽さがすごい。
旧モデルで326g(ペア)あるので、もう少し軽くてもいいかな、と思っています。
メーカーによっては1万円前後するので、アウトドアブランドとしてはコスパがいい。
どこのメーカーだかわからないようなものは、安物買いの銭失いになる可能性が高いのでご注意を。
まとめ
冬の低山ハイク、初冬の山におすすめの「チェーンスパイク」をご紹介しました。
◾︎ 普段と同じ歩行ができる
◾︎ どんな靴にも合わせやすい
◾︎ サイズが合わないと使えない!購入前に要フィッティングを!
◾︎ ものによって破損のリスクがあるため安物には注意!
メリット・デメリットを理解した上で、私はあえて「チェーンスパイク」を選んでいます。
雪が降れば、いつもの低山がまったく違う山になる。毎年、高尾山に雪が降るのを待っています。冬の間、2,3回だけのお楽しみ。
少し積雪した低山、雪が降りはじめた初冬の山にチャレンジしたい方にはおすすめです。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
\ 記事がお役に立ちましたら /
よろしければ、応援よろしくお願いいたします。
コメント