歩き人たかちです(@takachi_aiina)
レインウェアは、使ったら洗おう!
レインウェアは、洗濯機で洗えるけど普通の洗濯より手間がかかるし、気を遣う。だから、少しだけ知らんぷり。大丈夫、そこまで汚れてないし・・・
と、放置していませんか?
「レインウェアって、洗えるの?」という疑問をもつ人も多いと思いますが、レインウェアは洗濯をすることで機能を最大限発揮できます。
逆に、メンテナンスを怠って、汚れまくりのレインウェアは"濡れと不快"の原因に。
\ レインウェアの「洗濯」の疑問を解決 /
◾︎ 頻度はどのくらい?
◾︎ 汚れたらどうなるの?
◾︎ 洗剤は何を使えばいい?
◾︎ やってはいけないことは?
◾︎ 正しい手順は?
◾︎ 撥水加工の効果の戻した方は?
また、現在は、撥水加工や防水透湿性の生地(メンブレン)の製造過程で使われる一部の「有機フッ素化合物(PFC)」が、人体や環境に悪影響を及ぶすとされ、欧米を中心に使用禁止の法規制が整備されつつあります。
それを受けて、メーカー各社は数年前より「環境配慮型」への切り替えの動きが強くなっていました。
「環境配慮型」のレインウェアで何が変わるのか。性能や洗濯の頻度にも関係するため、合わせてご紹介します。
レインウェアのメンテナンス不足は最高に不快!
レインウェアのメンテナンスを怠ると、蒸れを逃す「透湿性」の機能の低下に加え、それが原因の"濡れ"のリスクが生じます。
\ メンテナンス不足の悪循環 /
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透湿のための「孔(あな)」が塞がれる
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水蒸気が逃げられない
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身体が濡れる
透湿性が低下すると、「防水のレインウェアを着ているのに、なぜか濡れている」現象が起こります。
下記記事の【「レインウェアを着ているのに濡れる」とは?】の項で、メカニズムを詳しく解説しています。
レインウェアの洗濯頻度は高めに!「環境配慮型」素材で何が変わる?
人体や環境への悪影響が懸念される「有機フッ素化合物(PFC)」に関しては数年前(コロナ以前)より話題になっており、アウトドア界では「撥水剤」の成分から徐々に切り替えがはじまりました(後述)。
それに加え現在は、製造過程で「PFC」を一切使わない、"表地・裏地・メンブレン・撥水加工のすべてにおいて完全な「PFCフリー」"のレインウェアが登場。
メーカー各社、"環境配慮型の独自の防水透湿素材"の開発に力を入れています。
出典:モンベル
「モンベル」からも新しく、環境配慮型の「スーパードライテック ピークシェル ジャケット」が登場し、スペックの高さとともに注目を浴びています。
PFCフリーの難点は「撥水性の弱さ」使う側に求められることは?
「撥油性」低く、汚れがつきやすい
「PFCフリー」の撥水加工は"撥油性"が低く、皮脂などの汚れがつきやすいことが難点。
汚れが付着して撥水性や透湿性の低下を招くと、厳しい山岳環境ではリスクに繋がる恐れがあるため、開発側は"「PFCフリー」と「撥水性の維持」の両立"が課題となっています。
使う側の課題としては、"こまめに洗濯をして汚れを落とす"こと。従来よりも、洗濯の頻度を多くする必要があります。
PCFを使用した、"雨水がコロコロ転がる"ほどの撥水性を有していた以前のレインウェアに比べると、PFCフリーは"撥水性が少し落ちたレインウェア"というイメージ(現段階では)。
はじめは同程度の撥水効果を得られても、落ちるのが早いです。
今後、どこまで研究・開発が進むかわかりませんが、従来ほどの撥水性を求めるのは厳しい時代なのかな、と思います。
撥水剤もPFCフリーに!洗濯と熱処理はセットでやろう!
撥水加工の成分は以前、主に「C8」というフッ素化合物が使用されていました。
しかし2000年頃、「C8」系のフッ素を生産する際に環境や人体に悪影響を及ぼす可能性のある物質が排出されている、ということからより安全な「C6」や「C4」、あるいは「非フッ素」への切り替えがスタート。
そして現在は、「非フッ素」が主流になりつつあります。
非フッ素の撥水剤は"発油性"が低いことに加え、撥水加工の効果(耐久性)も劣ります。
洗濯で汚れを落とすだけでなく、今まで以上に、アイロンや乾燥機による"熱処理"で撥水性を維持することも重要です(方法は後述)。
成分に注意!レインウェアに使える洗剤
アウトドアウェアには基本的に"中性洗剤"を使用。できれば、余計な成分が入っていない専用の洗剤がよいです。
市販の中性洗剤も使えますが、成分は要注意!
柔軟剤、漂白剤、香料、染料、蛍光剤などは生地にダメージを与え、機能を損なう可能性があるためNGです。
特に「柔軟剤」は、生地の繊維をコーティングして"吸水性能"を損ねるため、Tシャツなどのアウトドアウェア全般でNG!
日用品でも同じですが、たとえば、コットンのタオルを柔軟剤で洗い続けると吸水効果がなくなり、ツルツル繊維のタオルになります。
\ 市販の中性洗剤との成分比較 /
モンベル ベースクリーナー |
◾︎ 界面活性剤20% ◾︎ ポリオキシアルキレンアルキルエーテル ◾︎ ポリオキシアルキレンアルキルアミン |
SUPER NANOX |
◾︎ 界面活性剤54% (ポリオキシエチレン脂肪酸メチルエステル、 アルキルエーテル硫酸エステル塩、 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、 ポリオキシエチレンアルキルエーテル) ◾︎ 安定化剤 ◾︎ 再汚染防止剤 ◾︎ pH調整剤 ◾︎ 酵素 |
同じ中性洗剤でも、家庭用とアウトドア用では成分がこれだけ違います(安定化剤が気になるけど、どうなんだろう?)。どちらにせよ、成分はシンプルであることが一番。
アウトドア専用の洗剤は水に溶けやすいので、生地に洗剤が残りにくいつくり。
粉洗剤は特に残りやすいので使用しないのがベストですが、使う場合はあらかじめ水に溶かしたり、すすぎを多めに。
成分は、"非イオン系界面活性剤のみ"である「グランジャーズ パフォーマンスウォッシュ」。
ニクワックスの「テックウォッシュ」は、合成界面活性剤を一切使用していない"非合成系洗剤"。アイロンや乾燥機を使用せずに、自然乾燥で撥水効果を回復できるという洗剤です。
レインウェアの「メンテナンス」手順
レインウェアのメンテナンスは、できるかぎり「洗濯」と「熱処理」をセットで行います。
洗濯で汚れを落とし、熱処理で撥水加工を復活。「PFCフリー」のレインウェアや撥水剤に切り替わり、以前に増してメンテナンスが重要になっています。
\ 洗濯から熱処理までの一連の流れ /
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ジッパーを閉める、コード類を伸ばす
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ネットに入れる
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「弱流水」で洗う
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すすぎ多め( 重要!)
↓
"脱水はしないで"陰干し
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熱処理
汚れを落とす「洗濯」の手順
\「洗濯」の注意点 /
◾︎ 洗濯機が壊れる可能性があるため"脱水NG"!行程は「すすぎ」までに設定
画像出典:消費者庁
① "洗濯表示(タグ)"の確認
洗濯機や乾燥機が使えるか、チェックします。
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② ジッパーは閉め、ドローコードは伸ばして洗濯ネットに入れ、「弱流水」でスタート
パーツの破損や、生地が傷つかないようにジッパーは閉めて、ドローコードは伸ばした状態にします。ほかの洗濯物とは分けて、ネットに入れて「弱流水」で洗濯開始。
界面活性剤などの成分が残っていると保水しやすくなり、また、生地が劣化するので、「すすぎ」は多めに(+2〜3回)。
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③「脱水」はNG!風通しのよい場所で"陰干し"
防水素材は生地が水を通さないため、脱水時に水風船のような状態になり、洗濯機がガッコンガッコン揺れて故障する恐れがあります。
そもそも、保水の少ない生地なので脱水は不要。すすぎが終了したら取り出し、"風通しのよい場所で陰干し"をします。
紫外線は生地を劣化させるので、直射日光には当てないのがベスト。自分はいつも、夜に洗濯をしてベランダに干しています。風通しがよければ、お風呂場でOK。
撥水加工を戻す「熱処理」の方法
汚れを落としただけで撥水性は戻らないので、「熱処理」はとても重要。
画像提供:モンベル/制作:筆者
熱処理をすると、倒れている「はっ水基」をピンッ!と起き上がり、撥水効果が復活します。
*シームテープの接着剤などの関係で、乾燥機やアイロンがNGの製品もあります。アイテムごとに乾燥機やアイロンの"温度"なども異なるため、必ず洗濯表示をご確認ください
熱処理の方法は、「タンブル乾燥」「アイロン」「ドライヤー」。
自宅の洗濯機で「タンブル乾燥」ができない場合は、コインランドリーで。
*温度設定ができないコインランドリーもあるので注意。比較的新しい機械があるところがよい。60度まで、80度までなど、タグや公式サイトに記載があることがあるので確認を
アイロンで熱処理をする場合は、必ず"当て布"を。
「止水ファスナーやプリント部分には当てないでください」というような注意書きもあるので、洗濯表示とともに確認します。
ドライヤーでの熱処理は効果が薄そうなので(イメージ)やったことはありませんが、10cmほど離して熱くなりすぎないよう、満遍なく風を当てます。
「撥水剤」は熱処理で撥水性が戻らなくなったら使う
撥水剤は購入当初から使うのではなく、熱処理をしても撥水効果が得られなくなった(もともとの撥水加工が落ちた)ときに使用します。
撥水加工が十分ある状態で撥水剤を使うと、もともとの撥水成分を邪魔して効果を損ねる可能性があります。
新品の状態から使ってしまうと、撥水剤を使わないと撥水効果が戻らない、という状態になりかねないので、はじめは「熱処理」で
ちなみに、生地が薄いものは、厚いものに比べて撥水加工が落ちやすい傾向(薄い生地は加工しづらい)。軽量モデルほど、撥水効果の低下が早いです。
撥水剤は「スプレー」「つけおき」「リキッド」どれがおすすめ?
出典:モンベル
撥水剤には、「スプレー」「つけおき」「リキッドスプレー」の3種類があります。それぞれメリット・デメリットがあるので、合ったものを使いましょう。
今回は、自分も使用している「モンベル」製品で解説します。
◎ メリット | ✖️ デメリット | |
スプレー | ◾︎ 手軽で簡単 ◾︎ 傘や靴にも使える ◾︎ 部分的に使用ができる |
◾︎ ムラになりやすい ◾︎ 素材によっては生地が白くなる |
つけおき | ◾︎ ムラなく加工できる ◾︎ 一度に複数枚加工ができる |
◾︎ 裏地が"吸収素材"の場合は使用不可 ◾︎ 中綿入りの製品には使用不可 |
リキッドスプレー *中身は「つけおき」と同じ |
◾︎「つけおき」より手軽 ◾︎「スプレー」のように散布に気を遣わない ◾︎ 裏地が"吸水素材"でも使える |
◾︎ 「つけおき」よりムラにやりやすい |
「スプレー」タイプ
「スプレー」タイプは、撥水剤の中では最もお手軽。"ムラになりやすい"ですが、靴や傘などのギアにも使えて汎用性が高いです。
「スプレー」タイプは、レインウェアが"乾いた状態"で使用します。濡れた状態で噴射しないように注意。
また、"素材によっては生地が白くなる"ことがあります。特に、アウトドア製品ではないものへの使用には要注意。
メーカー側も、目立たない場所で一度試すことを推奨している場合が多いです。
「バッグにスプレーしたら真っ白になった」
という、大きなクレームを受けたことがあります。アウトドア製品ではない、10万円近くする高級バッグで激怒(記憶が乏しいですが、革だったかと)。
バッグのブランドの店員さんに「かけても大丈夫」と言われてスプレーしたそうですが、なぜかこちらにクレームがくるという・・・ね。
「つけおき」タイプ
「つけおき」タイプは、"ムラなく加工できる"ことがメリット。
しかし、「裏地が吸水素材のウェア」と、「中綿入りのウェア」には使用できません(吸水性能を損ねる恐れがあるため)。
各ブランド、規定の使用量とつけおき時間があるので、必ず守りましょう!
撥水成分が重なりすぎると、成分の向きが綺麗に揃わず十分な撥水効果を得られなくなる可能性があります。
「リキッドスプレー」タイプ
「リキッドスプレー」の中身は、「つけおき」タイプと同じ。裏地が"吸水素材"のものにも使えます。
個人的には「リキッドスプレー」なら普通の「スプレー」でいいかな、と思いますが、屋外など気にせず、洗濯後にそのままお風呂場でできるのはラクだと思います。
レインウェアの保管方法と長持ちの秘訣
保管方法
保管方法のポイントは、"スタッフバッグに入れない"こと。
スタッフバッグに入れっぱなしにすると、生地や止水ファスナーが痛みます。面倒でも、帰宅後はハンガーに吊るしましょう。
風通しのよい場所での保管がベストですが、クローゼットの場合、湿気を取る"除湿剤"などに当たらないように。
長持ちの秘訣
メンテナンスをしっかり行う、以外の長持ちの秘訣は、"たたみ方"に注目。
携行時、毎回同じたたみ方をすると"折れ目の癖"がつき、その部分が傷みやすくなります(止水ファスナーは特に)。
私は、もはやスタッフバッグを使っていませんが、"たたまない"くらいの気持ちの方が、結果的に傷みにくいです。
まとめ
現在のレインウェア周りの状況と、メンテナンス方法に関してご紹介しました。
「環境配慮型」のモデルはこれから増えていくと思いますが、それに合わせたメンテナンスが求められます。
レインウェアは、メンテナンスを怠ると"濡れによる低体温"などのリスクが高まるため、命にかかわることを常に意識したいウェア。
メンテナンスや保管方法さえしっかりすれば、10年以上持つものも少なくありません。長く使うことこそ、環境保護の一環。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
\ 記事がお役に立ちましたら /
よろしければ、応援よろしくお願いいたします。
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